ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。
決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。



(全19幕)
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1.
 緋色の厚布を広げた台座の上に仰向けにされたエステル姫は
一糸まとわぬ姿で膝を胸に引き寄せ、自身の手で腿を掴んで
左右に広げる姿態を求められ、男たちの眼に晒されていた。

 征服者の得るところとなった城砦の一隅は、兵士たちで満たされて、どこもかしこも
埃くさく、男くさく、荒々しい音に満ちていた。
そのうちの一室に連れて行かれたエステル姫は、まずは存分に衣の上から
男たちに触れられ、狭い輪の中で、次から次へと受け渡された。
俯いて眼を閉じていたエステルにはよく分らなかったが、そこに集ったのは
選ばれた将ばかりで、下方の兵はいないようであった。
若い者も老齢の者もいた。
異民族の男たちの、女を扱う手は手馴れており、衣の上からエステルをさぐる時も、女の細腰や
小ぶりの胸を撫でさする際も、その効果を十分に知り尽くした者の、性急で、隠微な動きをみせていた。
ふらふらになったところで、エステルは台座の上に横たえられて、衣を脱がされた。

 エステルを貫いているのは、男のものではなく、なめるようなその視線だった。
膝裏に手を入れて、もっと腿を大きく広げるようにと命じられた。
「隠さずに、その部分を我々によく見せるのです、姫」
目もくらむような羞恥に耐え、台座の上に横たわるエステルは言われるままにそうした。
舌に絡んだ声でエステルにそう求めた男たちは、存分に視姦はしても、
敗国の姫の肌に触れることは、この場では許されてはいなかった。
それは国に帰ってから後のお愉しみなのだ。

 女の繊細な器官を、その匂いまで嗅げるような間近から
検分する男たちの顔は、たぎるような情欲でぬれていた。
白い肌と、少し栗色がかった金の髪をした姫君。
エステル姫が略奪の中止と民の助命を求めて彼らの前に歩いてきたあの時のことを、
征服者たちは忘れてはいなかった。
自国の民を救おうとしていたエステル姫は、かがやくように清く、美しかった。
敗国の姫として、乙女は彼らの前に膝をついたのだ。

 獲物が高貴であればあるほど、蹂躙する者たちの嗜虐欲はいや増してたかまる。
強制された羞しい格好で横たわるエステル姫に覆い被さらんばかりにして、男たちは
台座に据えられたエステル姫の裸体を取り囲み、瞼を閉ざしている精緻なその顔が
羞恥の極みに昇りつめ、また諦念の中に暗く沈むのを、そのわずかな変化のふるえをも
見逃すまいと、間近から眺めた。
 誰ひとり触れていなくとも、エステル姫はその姿勢が恥しく、辛いのか、かすかに喘ぎ、
そして唇をかみ締めていた。
姫の唇と胸の先、そして股の間の繊細な溝は、みずみずしい色で男たちを煽った。
あられもない様を強いられて天井を向いている女の秘所の、あるかなきかの、
そこの汗の湿りと匂いを、男たちは、すぐ近くから確かめることができた。
そして仰向けになっている姫君の、青みがかって見えるほどに白い肌を
惹き立てているのは、その細首に嵌められた鉄の首輪だった。

 首輪の両側には輪がついており、そこからさらに鎖が伸びて、その両端は
晒し台の左右に立つ異国の奴隷がそれぞれに握って立っていた。
彼らは、少しでもエステルが膝を閉じようとすると、乱暴に引っ張ることで
姫を懲らしめることになっており、そうされると姫は痛々しい声を上げて、また脚を開くのだった。
 -----そんな惨いことをなされなくても抗ったりはいたしません
 最初にみせたエステルのうろたえは、彼女の衣を剥ぎ取り、首輪を嵌める男たちに無視された。
今から行われるのは戦地で得た女奴隷の通過儀礼であり、首輪はそのしるしなのだ。
巫女姫として過ごしてきたために、金銀や宝石すらまつらわせたことのないエステル姫の
ほっそりとした白い首に、その輪は残酷な重みで、冷たく絞まった。
首輪が確かに嵌ったかどうか、男たちは引っ張ることで確かめた。
そのどさくさにまぎれて、むきだしとなった姫の胸を何人かの男の手が握るようにもんだ。

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2.

 -----わたくしの命と引き換えに、わたくしの民をお救い下さい。

 攻め寄せてきた国の勝者の前に膝をついて懇願したあの時に、エステル姫は
これからどのような扱いを受けたとしても、もう自分のことは考えないと、そう決めたはずだった。
王族の中から選ばれて、巫女となっていたエステルは二十四歳の今日まで、清いままであった。
異教徒に下ることは奴隷女と同じ扱いを受けることであり、その身を男たちに捧げ、二度と
もとのからだにも、故郷にも戻れないことも、おおよそは知っていた。
宗教上の理由からも、その国は侵略した国の王族の女を蹂躙することで征服を完了し、
そして国に連れて帰った女に奉仕させることにより、その支配は永続化するのだと
考えられていたからだ。

 王族の女を差し出せば、彼らの略奪は止まる。
それなのに、衣を奪い取られ、台座の上に追いやられ、そこで仰向けになって
自ら足首をとって股を拡げて見せよと異教徒に命じられた時、エステル姫はかつて覚えのない
深い動揺と、羞恥に呑みこまれた。
男を迎えたこともないエステルには、これはあまりにも過酷な、そして惨たらしい、晒し刑であった。

 異教徒とはいえ、互いの言語は解する。
卑猥な言葉が肌の上に行きかうのを、エステル姫には耳を塞ぐすべもなく、聴いているしかなかった。
じかに触れることは禁じられていても、男の中には、処女らしく、きれいな色のままを保っている
姫の女の部分に息を吹きかけて、何か意味の分らぬ卑猥な言葉で嗤う者もいた。
そうされると、エステル姫は尻をふるわせてびくりとし、頭のどこかが恐怖で痺れたように熱くなった。
順ぐりに脚の間を覗いて確かめる男たちの視線に堪えきれず、エステルの目じりからは、涙がこぼれた。
きつい体勢ではだかのままでいるせいなのか、それとも、あまりの仕打ちに身も心も凍ったのか、
頑なに眼を閉じているエステル姫は、真っ暗なところに一人でいるような気がした。
その真っ暗なところに時折ひらめく灼熱の赤こそ、これからのことの怖れであった。
 しかしそれは、まだ始まったばかりなのであった。
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3.
 台座の上に据えられたエステル姫が突如、ほそい悲鳴を洩らした。
姫はつま先をそらし、足首を支えていた両手を投げ出して、その華奢な背をのけぞらした。
エステル姫を拘束する首輪の鎖が音を立て、左右の奴隷がいそいで鎖を引いて姫を引き戻した。
女の花弁をむしるようにして押しひらき、いきなり男の太い指が、エステル姫の溝をえぐったのだ。
挿し込まれたそれは、膣の入り口を練るようになぶり、中に少し指を入れてきた。
男を知らぬエステルには、それはまるで何かの虫か小蛇を体内に入れられたように感じられた。
エステルは手脚を闇雲に振り回して、それを押しのけようとした。
首輪がまた絞まった。上体を後ろに引っ張られ、奴隷の手で台の上に抑えこまれたが、
姫は怖ろしくて抗った。
エステル姫は小さなかかとを打ちつけて暴れ、鎖を引っ張られるたびに、はかない声で呻き、わなないた。
髪を乱し、その四肢をもがいている姫の様子は、蜘蛛の巣に捕われた蝶がもがく様に似ていた。
男の指がおかれただけで、そこまで怯えた反応をみせる女の様子に、男たちはますます
身を乗り出し、姫を取り囲んだ。

 誰かが、「やめろ」と小さく命じた。

 指はたちまちに引き抜かれたが、エステルはその残留感に鳥肌を立てた。
奴隷の手で抑えこまれた高貴な姫君の、まだ男を知らぬかたちのいい胸や尻が今度こそ
おそれ、おののくのを、ついにその繊細な顔が泣き顔となり、奴隷の手でその細腰が
持ち上げられて、もう一度無残にも脚を大きく広げられるその様を、
女の必死で抵抗する様とともに、男たちは女の足許から眺めて愉しんだ。

「王族の方々に先んじて味見はいけませぬな、将軍」
「左様、抜け駆けですぞ」
「まあまあ、そのうち我らにもこの姫を思う存分、かわいがって差し上げる日がくるのですから」
「その頃には姫もよく仕込まれて、従順に、お行儀よくして下さることでしょうからな」

 打ちひしがれて、エステル姫はすすり泣いた。
嗚咽するたびに、首の鎖が、絶望の音を立てた。
あたりは静かだった。
髪を乱し、霧のような汗を浮かべていた姫の額に、誰かが手をおいた。
目隠しされたように眼の前が暗くなり、エステルは声もなく怯えて喘いだ。
静かなのは、他の男たちが出て行ったからだとしれた。首輪の鎖はだらりと床に垂れて、
それを握っていた奴隷たちも、いつの間にか室からさげられていた。
耳のすぐ傍で男の声がした。先刻「やめよ」と言ってくれたその人だった。
 終わったぞ。
それは、まだ若い男の声だった。
男は、目じりから伝い落ちるエステルの涙を、指先ですくった。
何の抑揚もない、冷淡なその声音は、泣いているエステルに続けて告げた。

「これからお前は、戦利品として国に連れて行かれる。
そして征服のしるしに王族の男たちに犯される。彼らが飽きたら、
戦功のあった者から優先に、臣下に下げ渡される。
今までも何人もの異国の貴女がそうなった。そしてそれを避けるすべはない。
ここでお前を見ていた男たちは今晩お前のことを考えながら、調達した奴隷女を天幕で抱くだろう。
もちろんわたしもそうする。そして戦勝祝いの宴の席では、幾つもの結び目の
こぶをつくった綱を、お前の、このほそい脚の間に通し、綱の両端を奴隷にかかげさせる。
つま先立ちでその上を往復させられるお前の姿を、酒に濁った男たちの眼が追うだろう。
歩みがとまれば、お前の上に鞭が下される。
すりきれて赤く膨らんだ蕾には褒美の酒がすりこまれ、誰かがそれを舌ですするだろう。
お前は、はだかのまま酌をさせられ、求めに応じて、いつでもこの清いからだをこうして晒し、
男たちに賞味させるのだ。女奴隷は誰であろうとそうなる。お前たちこそ戦神への奉げものなのだ。
この次にお前と会うのは、王宮の広間だ」

 そして男は、さきほど誰かの指がさまぐったエステル姫の膣の中に、いきなり指をさし入れてきた。
挿入時にこそ、エステルは嘆きと痛みの声を放ったが、あとは眉を寄せて、きつく唇をかみ、息をとめていた。
男の指は、湿った薄紙を丁寧にほどくようにして、エステルの中を浅く泳いだ。
エステルを慰撫し、先刻の気味の悪さを拭い去るようであった。
それは何かを煽るでも、探るでもない仕草であり、まるで果実の皮を内側から
丁寧に清め、傷つけぬように拭うようだった。
下腹のどこかに何かが無理やりにこじ入れられて、それが男の意志において
エステルの身をふるわせるのを、エステルは眼に涙を浮かべて、耐えていた。
 エステル姫の、隷属と受動に徹することで何かから心を護ろうとする、その態度が分ったのだろうか。
奇妙な沈黙があり、そして男はふたたび辱めを加えた。
男のもう一方の手が、自慰を知らぬエステルの、自身にもそんな鋭敏なところがあったとはこの時まで
知らないままであった小さな芽を、皮を上に引っ張るようにしてむき出しにして、指で軽くいじり、
爪で挟むようにして柔らかく揉みこんだ。
雷に打たれたような強い感覚が襲い、エステルは声をあげ、身をよじった。
男はすぐにそれを止めた。
その時こそ、エステルは自身が敗国の姫であり、惨めな奴隷に成り下がったことを
覚えたことはなかった。彼女は幾多の男たちに扱われるものとして、民の命と引き換えに、遠い異国で
これから、このようにして、この身を捧げるのだ。
男は、短い間に隅々まで指で軽く触れると、指をひいた。
指についたわずかな体液を、男はエステルの白い胸にこすりつけ、乳首をいじることで拭った。
それから、男はエステルの首を締め付けていた首輪を外した。床に落ちた首輪の鎖が鳴った。
「可哀想に」
 男は出て行った。
冷然と行われた辱めと、最後のひと言の落差が、冷たい水と温湯のように、
いつまでもエステルをかき乱した。
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4.

 空は青く、あまりにも濃く、雲ひとつない空は黒ずんで見えるほどであった。
エステル姫は庭を歩いていた。
異郷の植物は色鮮やかで、名を知らないものがたくさんあった。
みどりは濃く、日差しはきつく、凶暴なほどの陽光が木漏れ日となって降り注ぎ、
日盛りの太陽がこの国に与えるその明暗に、庭に出たエステルは散々に打たれるままになっていた。
甘くすずしい花々の香りも、庭を流れる水のせせらぎも、エステルを慰めはしなかった。

 一本道をたどって、庭の片隅の、水盤のところまで来た。
腰の高さの盤には平らな鏡のように水が湛えられて、水色に澄んだ水面には、花びらが落ちていた。
水に浮かぶ花びらは、小さな舟のように風にゆれていた。
花びらを手ですくおうとして、身をかがめたエステルは、そのまま膝から崩れおちた。
下腹を襲う鈍い痛みは、そのまま姫を立たせなかった。
咄嗟に水盤の縁にかけた片手が、水の中に漬かり、溢れてこぼれた水がエステルを濡らした。
濡れた髪の先を、陽の光が鋭く縁取った。
点々と膝に水のしずくが落ちた。エステルを包む薄い衣は、水に濡れたところから肌に貼り付いた。
エステルは水盤から手を引かなかった。冷たい水が、手首の傷に気持ちいい。

 昨夜は、三番目の王子がエステルを抱く番であった。
世継の第一王子は敗国の姫を抱くのに慣れており、いたわりと言ってもいいほどのやり方で
エステルの処女を摘んでいった。彼は姫に何かの薬を呑ませたので、エステルにとって、ほとんどの
ことは苦しい夢の中で行われたような気すらした。
第一王子のお召しは、しきたりどおり、三夜続いた。
第一王子の宮から戻されたエステルは発熱しており、しばしそこで静養をとった。
医師の見立てでは、環境が変わったことの変化による熱とのことだった。
 熱がようやく下がると、すぐに第二王子の宮に呼び出された。
第二王子は、兄のお下がりである女には情けをかけぬと決めているかのように
終始不機嫌で、しかし兄の第一王子と同じく、エステルの清らかな美しさには感嘆を隠せずに、
はだかにさせたエステルをまずは存分に愛でた後、一度ならず姫の身を深く曲げさせて
真上から奥を突き、まだ交わりに対して心得もできていないエステルを苦しめ、泣きじゃくらせた。

 第一王子にひらかれたとはいっても、エステルのそこはまだ狭く、姫自身にも
男の迎え入れ方が分ってはいなかった。
そのことは、よりいっそう、第二王子の征服欲をたきつけた。
文官のような第一王子とは違い、大柄で逞しい第二王子はすぐに、姫の傷つきやすい、
白い肌に夢中になった。病により、もともとほっそりとしていたところがさらに華奢になっていた
エステル姫は、ほとんど嵐にもまれる花のようにして、第二王子の寝台の上で、王子の好きにされた。
 むれるような熱がふたたび姫を覆った。
姫自身の膝にはさまれるようになった姫の顔が苦痛にゆがみ、その紅い唇が呻き声を紡ぎ、
断続的な喘ぎ声の中に、「おゆるし下さい…」といったあえかな哀願が入り混じる時、第二王子の昂奮は
身震いするほどにたかまった。
異物の挿入により引き裂かれてゆく女の子宮がもつ熱さと、抗いが、かつてなく第二王子を昂ぶらせ、
その昂ぶりを教えるように、エステルの口にわがものを含ませた第二王子は、その間、
姫の顔を灯りに晒し、存分に愉しんだ。
性戯の技巧などもとより知らぬエステル姫は何度も咳き込み、咳き込みながらも口内を
男のものでいっぱいにさせられ、それを教え込まれた。
王子は姫に精液を嚥下させ、そして間をおいてから、ふたたび姫のからだにのしかかった。
 寝所から響いてくるかよわげな、そして苦しげな女の声に、第二王子の従者たちは
王子がエステル姫を殺しているのではないかと、本気で危ぶんだほどであった。

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5.
 第二王子の呼び出しはしきたりにより、三夜続いた。
第一王子は三十歳、第二王子は二十七歳であった。
異国からはこばれてきたエステル姫は、彼らにとって宗教上の理由から征服するものであり、
決していつくしむものではなかったが、姫の美しさと、おかしがたい気品をひそめた
その物腰は、犯す側の彼らを実に満足させた。

 美しい愛玩物を手に入れた男なら誰でも覚える充足で、第二王子はエステルを
寝所から解放せず、その耳に淫らなことを囁いては、姫を羞恥の底に沈めた。
第二王子の逞しい腕は姫を沈め、また引き起し、その白いからだを前からも後ろからも犯した。
獣じみた男の汗や体臭に包まれて、エステル姫はわが身を嘆くばかりであった。
 王子は姫のみずみずしくはりつめた白い胸を飽くことなく揉みしだきながら、息も絶え絶えになっている
姫に注意を与えた。
「弟の第三王子は頭がおかしい。惨いことをされるかもしれない。そうならぬよう
わたしから少し注意をしておこう。このすべらかな肌にあまり酷い痕が残らぬように。
できるだけ抗わずに、されるがままになっているのだぞ。いいな」
 これ以上ひどいことがあるのだろうか。
痛む全身をわななかせてエステル姫はそう思った。
 脚の間にぬるぬるとした何かの濁った液体があった。それは腿を伝った。
それは郷里で受けた最初の辱しめの際の、虫か蛇を挿入されたかのような、あの感触を思い出させた。
朝焼けの青のなか、エステル姫はうなされるように、尻をふるわせた。
第二王子は何も知らぬ姫の怯えように苦笑し、そのうちお前のここはお前のもので
濡れぼそるのだ、男を悦ぶ恥ずかしいからだになるのだと囁きながら、姫の脚をもう一度、開かせた。

 その国の王に、王子は三人いた。
十七歳になる第三王子は、確かに、狂人であった。
数年前、落馬により男性機能に不具合を生じた王子は、生きたまま昆虫を裂いたりする
もともとからの残虐性をより強め、女を抱く際にも、徹底して苛むことを悦んだ。

 第三王子は固太りに太っていて、背が低く、
呼び出しに応じて現れたエステルを視るその細い目は、何の表情も浮かべていなかった。
そこにはただ、王子の性癖だけが石のように凝り固まって、彼を満足させるに足る獲物を待っていた。
 腹の下に枕で抱くようなかたちで、エステル姫は、寝台の柱にうつぶせにされて手足を縛られた。
第三王子はたおやかな美しい姫の四肢を柱に縛り終えると、後ろに回り、
ほっそりとした姫の腿の間の、その秘所を細い眼で検分した。
それは、兄王子たちをすでに通したとはいえ、朝焼けの花びらのように薄い色をしたまま
花弁と花芯を途中まで閉ざしたかたちになって男を誘い、嬲られるのを待っていた。
第三王子への生理的嫌悪感と、うつ伏せにされて縛られたことによる恐怖で
縮こまっていたエステル姫の尻に、何かの硬い物体があてがわれた。

 数秒の後、エステル姫は、寝台の四隅の柱に縛られた両手両脚を、極限までもがいていた。

 枕を抱くようにして持ち上げられていた女の尻に、さらに強い力がかけられて、
それは絹を裂くような悲鳴を上げているエステル姫の痛みには構わずに、姫の体内へと沈められた。
表面に突起や溝のついた張型を、徐々に女の腹に押し込むその間、第三王子は
笑みひとつ浮かべてはいなかった。
それは姫の膣にはあまりにも大きすぎ、そして長すぎた。
第三王子は遠慮なく深々とそれを沈め、あまりにも姫のそこが狭道なので、時々唾液で
道具を湿しながら、ねじを回すようにじっくりとねじ込んだ。
全体の半分まで埋め込んだところで、底にぶつかると、ようやく止まった。
それだけでは終わらなかった。
王子はまるで自慰をする時のような手の動きで、外に出ている部分を握り締め、それを動かし始めた。
張型の突起と溝は、その感触でエステルの膣を引き裂き、入り口に引っかかり、また圧し戻され、
実際にそうなるわけではなくとも恥骨をやすりで擦るような激痛を姫に与えた。
第三王子に快楽を与えるものはその手ごたえではなく、異物によってえぐられる
女の苦しみもがく様子であった。姫の膣内は焼ききれるように燃え立った。
 もがいているエステル姫の全身は痛みと恐怖の汗に濡れた。
 第三王子の張型の扱いは巧みであった。
ゆっくりと、あるいは姫の悲鳴が身を揺さぶられるその振動で短く、切羽詰った一音だけが
切れ切れに掠れてながく続くように、自在に王子は淫具を扱い、たっぷりと時間をかけた。
エステル姫こそが、王子の快楽の道具であった。
出し入れするだけでなく、張型を回して奥をこねられるようにいたぶられた際のエステル姫の
悲鳴は狂気じみた。
第三王子が姫の細腰に向かってそれをするその間、エステルは第一王子と第二王子の名を叫び、
彼らに助けを求め、大股を開いたまま閉じることも許されず、許しを求め、泣き叫んだ。
そのうち、そのすすり泣きに、悦びが混じり始めた。
熔けきったエステルの頭は、もはや悲鳴ではないものに支配され、痛みは別のものになった。
すると王子は、女がそれを味わうのは許さぬというように手を止めてしまい、姫を切なくさせた。
残酷な快感のゆり戻しが起こり、エステルは自らの力で張型を動かそうと腰をねじることまでした。
王子は、張型を尻尾のように立てたまま可憐な尻をわななかせて呻いているそんなエステル姫に
別の懲らしめをほどこした。
 苦痛は苦痛に受け渡され、またエステル姫は激しく身をふるわせ、あられもなく尻を振りたて、
小さな頭を敷布にたたきつけるようにして身悶えることになった。

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6.
 第三王子の宮での伽は三日間続いた。

 ------決して逆らったりはいたしません。あなた様にかわいがっていただくことが
  奴隷であるわたくしのよろこびでございます。どうぞ、何なりとお命じ下さいませ。

 どの王子の前でも毎晩、エステル姫はその前にこれを誓うことを求められたが、二夜以降、
第三王子の前でそれを言う時、エステルの声は決して偽りではない恐怖に凍え、
その語尾はか細く口の中でもつれて消えてしまった。
 床に膝をついたエステルはふるえながら眼を伏せた。
そのようにして淋しげに怯えた女こそ、第三王子の好むものであった。
「衣を脱ぎ、寝台にうつ伏せになるのだ。お前のものが見えるように、脚を開くのだ」
 第三王子はエステル姫に寝台に上がるように命じた。
若い王子は異国の姫の衣をはぎながら、威嚇することを忘れなかった。
「さもなくば、お前の国の民を生きたまま串刺しにする」

 そうやって始まった第三王子の許での、第二夜は、第一夜のおさらいであった。
昨夜の痛みがまだ重く腰に残っているエステル姫は、少年に何をされるか
今度は分っているだけに、まだ何もされぬうちから、暑さのためではない汗に
つめたく全身を濡らした。
 手足を柱に縛られた姫君は、四肢を開いた格好でうつぶせにされたまま、ひたすら怖れ、もがき、泣いた。
いびつな円錐形を長く繋いだ珠を、今夜も王子が黒い箱から取り出してエステルの眼前に掲げてみせた時、
それを見せられたエステルは誓いにそむき、泣き濡れた顔で弱々しく首を振って抗った。
「おゆるし下さい。それだけは、おゆるし下さい」
 王子は、張型を咥えさせたままのエステルの腹の下に、さらに枕を入れて
姫の腰の位置を高くし、作業をやりやすくした。
それは宝石を繋いだ首飾りならぬ、残酷な責め具であった。
後ろの穴に、その先端が当てられた時、エステルはがっくりと観念して首を落とし、
一つずつ、そのいびつな大きな珠が肛門に無理やり押し込まれる間、声をころして呻いた。
 繋がれた珠はそれぞれに形が違い、全部で、五つもあった。
すっかり入ってしまうと、次に第三王子はその根元の糸を持ち、少し出したり、中に埋め戻したりし始めた。
硬い珠が出入りする異物感にエステルは咽び泣いた。
そうされておいて、張型をふたたび動かされると、二つの刺激が作用して、この世のものとも思えぬ
感覚にエステルは身を貫かれることとなった。
下腹は焼かれたようになり、いびつな珠と珠がねじれて擦れ合い、襞と張型が擦れあうたびに
耐え難い鈍痛が悪寒となって、背筋をかけ上がった。
王子は張型を巧みに扱い、痛みで感度が鈍くならぬように調整し、じっくりとそれを姫の
蜜壷に挿し入れ、かきまわし、引き抜いた。エステル姫は、快楽と快感の渦に呑みこまれた。
そしてまた苦痛に引き戻され、獣じみた声を上げながら、ひたすらに泣いた。
 女の拘束を取ると、第三王子は、その責め道具を、エステル自身の手で外すように求めた。
引っ張るたびに、からだの中に埋め込まれた珠は体内の細い管にひっかかり、ねじれ、
たとえようもない痛みと恥ずかしさを女に与えた。
一度に抜き取りたくとも、あまりに痛くてそれも出来ず、脂汗を額に浮かべながら
柱に片手をついて女がそれをする間、まるで溺れる女の苦悶の姿を岸から眺めるようにして、
第三王子はその細い目で、エステル姫の尻を観察した。


 美しい姫は栗色がかった柔らかな金髪をしていたが、下の毛も、同じように柔らかく、
そしてまだ年端もいかぬ少女のように薄く、うぶ毛のようであった。
そのことは遠征に参加し、最初の検分に立ち会った男たちの口から口へ伝えられた。
あの姫は二十四歳にもなっているが、大人びたお淋しそうなお顔立ちのわりには、
からだはまるで少女のようなのだ、乳房も小さめで、しかしかたちよく盛り上がり、胸も尻も
すべすべとして、しみ一つなく、白雪のようなのだ。
第一王子と第二王子も姫を抱いた後でその噂を裏づけ、
「少々ぜんたい的に未成熟であられるが、エステル姫は名器といっていい」
 満足の意を表明したために、その決定的な評価は
順番を待つ男たちをして、いつかその高貴な姫を組み敷ける日への
期待を何倍にも膨らませたものだった。
 三日目の夜、第三王子は、そんなエステルに自慰をさせた。
それも強要してではなく、自主的にそうなるようにもっていった。

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7.

 水盤に手を浸けたまま、眼を閉じて、エステルは座り込んでいた。
ここは庭のはずれなので、生い茂る樹木に隠れ、誰からも見られない。
ひとりになりたい時には、いつもここまで来るのだった。
 その向こうは壁である。
異郷の王宮の中に与えられたエステルの室は、四方を壁に囲まれた、牢獄であった。
そこからは、青い空が見えた。
紺碧の青空は雲ひとつなく晴れて、やがて日が暮れると、真四角に燃え上がり、
紫や紅色に空を染め上げ、やがて、ひえびえとした群青色の星空になる。
磨いた銀貨を散りばめたような星座の空だけは、毎晩かわらなかった。
 エステル姫は、下腹の鈍痛に眉を寄せて吐息をついた。
郷里から運ばれて、この王宮に入れられてから三ヶ月。
月のものは止まり、医師はそれを、一時的なものだと云った。
いま脚の間を汚す血は、その血ではなかった。
べつのものに穢されたエステルが流す血は、草にも落ちた。エステルは坐っていた。
いったいどのような仕掛けなのか、水盤にはふたたび水が溢れはじめ、水は、
そこに浸したままのエステルの手を伝って下り、水盤の土台に凭れて座り込んでいる
姫君の肩や膝を濡らした。
夜のように、あたりが暗かった。
水音に耳を澄ませながら、姫はからだの痛みに耐えていた。
抗ったり、自殺したりすれば、故国にそれに見合う制裁が下ると脅されている身ではあるが、
自然に死んでしまうぶんには誰にも迷惑はかかるまい。
溢れた水がそんなエステルの上に降った。
 すずしげなその水音にあまりにも耳を傾けていたせいで、エステル姫は後ろから近寄ってきた
その男に、気がつかなかった。

「そのままでは身体が冷えるぞ。具合が悪いのか」
 どこかで聴いた声だと思う間もなく、後ろから抱かれるようにして引きずられ、
水盤の水のかかる下から、姫は身を遠ざけられていた。
濡れて冷え切った姫を日向に連れてゆき、庭椅子に坐らせると、
男はエステルの全身を眺め、そして少しその声を厳しくした。
「出血している」
 ぼんやりとエステル姫はあてどなく視線をさまよわせた。
後に第二王子と同年だと知れたその男は、エステル姫の薄衣を汚している血を指摘した。
その男こそ、征服地においてエステルを検分していた男の中の一人であり、将軍の一人が
エステルを弄んだ時に制止をかけた男であり、人払いをした後に、王族のほかは
先に触れてはならぬエステルの膣をその指で探り、これからの覚悟を
エステルの耳朶に吹き込んだ、その男に他ならなかった。
戦勝祝いの宴におけるエステルのお披露目については、エステルが発熱中ということで
免除されたものの、遠征に加わり、エステルの鑑賞にあずかった男たちは口々に、異国の姫君の
その美しさ、白くてまるい乳房のかたち、限られたものだけが耳にした、姫の声質について賛美し、
ほっそりとした脚を拡げて男たちの眼の前に晒されたその薄紅色の花びらも、身を折って
その屈辱に耐えていた姫の顔の可憐さも、小さな貝のように並んでいた足指の爪から、
腰から臀部への曲線、かすかに喘いでいたその様子にいたるまで、たっぷりと語りつくされたとの
ことであったから、その場に加わっていたであろう男を前にして、姫は身を羞じるしかなかった。
この庭に立ち入ることが叶うのならば、それではこの人も、王族の上席に連なる方なのだろう。
「痩せたな」
 男の手が、不意にエステル姫の白い頬に触れた。以前と変わらぬ、感情のない声であった。
ごつごつとした体躯の男が多いこの国の男にしては痩身で、そしてその態度には、
冷淡な無関心と、顔立ちがそう思わせるのか、何ともいえぬ節度があった。
「エステル姫。それは月経の血ではないのか。室に送ろう」
 男の申し出を、エステルは首を振って断った。
姫の顔を見下ろし、その眸をのぞきこんでいた男の顔が、憂慮に翳った。
少し身をかがめ、男はエステルの唇に唇を寄せるようにして、姫に尋ねた。
「口がきけないのか……?」
 空が暗くなった。エステルは踏み出した。宮と反対方向へ。
男の手がその肩を掴んで引き戻した。エステルは薄闇に手を泳がせた。
あたりはきらめくみどりであり、清流のせせらぎがしていた。
男は姫をこちらに向かせた。姫の眸は遠くを見ていた。
つくり物のように整った姫の顔の、その頤を男はつかんだ。
「答えるのだ。声を失くしたのか。眼が見えないのか」
 エステル姫の頬に、涙が伝い落ちた。

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8.
 回廊の端から、彼を呼ぶ声がした。
「王子」
 彼は振り向かなかった。諦めた声が、再度彼の名を呼びなおした。
「先王御子さま」
 それは、第三王子専属の医師であった。
残虐な嗜好を持つ第三王子の犠牲者となった女は数しれず、怪我人、或いは
死人が出るたびに、この医師が呼ばれ、その始末にあたってきた。
重傷の女が奴隷なら門の外に棄てさせ、女が貴家の出であり、なおかつ第三王子が
まだその者を所望するならば手当てをしたが、この医師はそれをする際、第三王子の立会いのもと
女に麻酔を与えないこともあるとの噂であった。
医師は、先日第三王子の宮で、エステル姫を診察していた。
「御子さま。何用でございましょうか」
 第三王子の許で受けた仕打ちがもとで、エステルは声と視力を
失くしたのに違いなく、先王の王子である彼はその時の詳細を聞こうと、
第三王子専属のその医師を呼び出したのだった。
王宮の一隅は、他にひとけがなかった。
たまには第三王子と共に女を苛むことのある医師の、脂ぎったその顔を見るのは
不愉快かぎりなかろうとも、最も第三王子のやり口に詳しい医師から、何があったかを
聴くのは当然であった。
 医師が第三王子の寝所に呼び入れられた時、医師が見たものは、両手両脚を拘束され、
床の上に髪を広げて、のた打ち回っている姫の姿であった。
「ご安心下さい。お姫さまのお口は、第三王子のご配慮で、舌を噛まぬように布をかまされておいででした」
 御子は、庭で見かけたエステルの口許が切れていたことを思い出した。
血をにじませたその痕は、第三王子の仕打ちのきつさを如実にもの語っていた。

「お気の毒に、巫女であられた姫君には、ここ数ヶ月のことは少々刺激が強すぎましたようで。
しかし眼のお力も、お声も、一時的なものです。すぐに回復されましょう」

 いい加減な診断を下して、医師は御子に一礼すると、そそくさと退出した。
第三王子の命をうけて、医師は何度もエステル姫の膣を薬湯で洗ったが、それには血が混じった。
医師の挿し込む鳥のくちばしのような器具で拡げられ、奥の奥まで何度も湯をそそがれ、
すすがれている間、エステル姫はひくひくと身をふるわせて、乳首を上に向け、白眼をむいていたという。

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9.

 第三夜め、第三王子はそれまでと大きく趣向を変えて、
エステル姫を椅子に縛り付けた。
それは身動きしても、びくともしない、床に固定された鉄製の重い椅子であった。
両膝を椅子の腕木かけさせられて、女の部分が見えるような格好にされたエステル姫は
荒縄で椅子に縛られた。
腕木にかけられた膝も、同じように縛られ、両手は頭の上で、椅子の背の飾り部分に
それぞれきつく結わえられた。
第三王子はエステルの胸先をしばらくいたぶり、またエステルの陰核をこすり上げることを
繰り返して、とうとうエステルに声を上げさせると、細い眼でエステルを眺めおろし、胸がもっと
絞り出されるようなかたちになるように、その乳房にも縄をかけた。
白い乳房とひらかれた内腿に青い静脈が浮き上がった。

 第三王子は特に、エステルの、まだほとんど開発されていない快楽の芽を気に入ったようであった。
そこは第一王子、第二王子ともに愛撫したところであったが、
第三王子の手によるそれは生易しいものではなく、執拗ないたぶりであった。
椅子に拘束されているエステルの眼の前には、鷲の剥製があった。それは王子と同じ
無表情な目玉で脚を拡げられた女を見下ろしており、エステルは
最初にこの室に連れて来られた時から、その猛々しいかたちのまま死んで固まっている
猛禽の剥製が、恐くてならなかった。
第三王子は鷲の剥製を抱え上げ、姫の股の間に据えた。
剥製のくちばしや羽根、その鋭い爪で擦られ、撫でられ、つつかれる苦痛に、エステルは
口枷をはめられた喉で声なき声に泣き、ゆるしを乞い、縛られたからだで暴れ、おぞましさに身悶えした。
すでに二夜に渡って悲鳴を上げ続けた姫の喉は完全に潰れており、喘ぎも呻きも
擦り切れた痛々しいものでしかなかったが、剥製を女の割れ目にあてがう第三王子の細い眼は
それに対する同情をまったく浮かべてはおらなかった。
喉をそらし、胸をふるわせている女を、猛禽の二つの目玉が股間から見ていた。

 膝を左右の腕木にかけられて、股をわったはしたない格好のまま
荒い息をついているエステルに、第三王子はさらなる仕掛けを加えた。
むきだしに晒された、花の色をしたエステルの部分に、第三王子は何かのどろどろとしたものを
木の匙で塗りこめ始めた。
膣の中にも匙は挿し入れられて、散々張型で嬲られてきたその傷口がまだ癒えぬ弱い部分にも
それはたっぷりと、椅子の上に溢れ出るほどに、塗りたくられ、注ぎ込まれた。
細かな泡を持った濁った液体であった。
 その後のことは、エステル自身、よく憶えていない。
猛烈な痒みが下腹を襲い、エステルは身動きできぬままにはげしい苦痛に襲われ、貫かれた。
それは痛みのような痺れのような、まるで子宮内を何百という毒蜂に刺されたかのような
蠕動的な感覚の波で、収まることなくエステルの膣内を刺激し、駆け回り、膨らませ、腫上がらせ、
そしていつまでも刺し続け、痒みを与え、終わらなかった。
おぞましい形の毒虫に入り込まれ、群がられ、吸われ続けているかのような
その熱い痒みは、エステル姫を崩壊させた。
 椅子に架けられたまま、エステルは眼をむき、声を上げ、全身をべっとりと
汗で濡らして、その深い痺れと、耐え難い痒みに泣き続けた。
懇願するように第三王子を見ても、王子はそんな女の姿をもっとよく見ようと
細い眼を近づけるばかりで、白く濁った液体を、縄で縛り上げられたエステルの胸先にも
塗りつけることで、抗いをみせたそのお仕置きとしただけであった。
エステルの小さな乳首は液体の刺激を受けてふっくりと立ち上がり、それはすぐに
胸先から乳房全体への、えぐるような腫れと痒みに変わった。エステルは泣きじゃくった。
 (殺して。わたくしを、殺して)
 もしも声が出せたなら、誇りも慎みも捨てた身でそう頼んだであろう。
そうする代わりに、第三王子は、縛られて頭の上に上げられたままのエステルの手に、何かを握らせた。
そして、口枷と、それを持たせた片手だけ、縛めをほどいた。
 室内に女の切れるような声が響き渡った。
第三王子は聖女のようなエステルが、あまりの痒みにすべての慎みをかなぐり捨てて、
手に握らせたそれを使って、自らの膣にそれを突き入れ、激しく突き動かすのを、正面からじっと見ていた。
 男根を模し、表面にはたくさんの突起をつけた器具は、焼けるような膣の中の痒みを
かき出そうとして、エステル自身の手によってはげしく扱われ、動かされ、出し入れされた。
そのようなことをしても、皮膚の粘膜に浸透した痒みの成分はもう取り出せないのであったが、
ひいひいと泣き咽びながら、エステルは白い手で自らそれを動かし、突き入れ、少しでもこの痒みの
地獄から解放されようと、めちゃくちゃにそれを使った。
白濁した液体に手がすべり、棒が床に落ちてしまった時には、
「お願いです、それを下さい。わたくしを突いて下さい。それをわたくしに下さい。お願い」
 泣き叫び、第三王子が意地悪く、お前のどこになにをして欲しいのか云わなければ与えられない、
駄目だ、そのような曖昧な頼みかたでは聞き入れられぬと無情に突き放すと、エステルは絶望に
はげしく泣きながら、第三王子が求めるままに、
「わたくしに下さい。その床に落ちている、黒い男性のかたちをしたもので、わたくしを苛めて下さい。
何でもいたします。ああ、やめないで。奥まで突いて下さい、もっともっともっと」
「我慢できませんお願いですやめないでわたくしを壊して。殺してころして」
 何を口走っているのかもう分らぬ哀願を繰り返し、第三王子の手で痺れきった部分を
おし拡げられ、二つの穴に同じ太さの道具を与えられた途端、エステル姫は、脚の間から血を流し、
椅子に縛り付けられたまま気を失ってしまった。


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10.
 王宮でエステル姫に与えられた室は、ごく普通の、貴女のための客室であった。
姫は奴隷であっても、夜の伽をのぞけば、客人でもあった。
嫉妬深い妻が大勢いる第一王子は来なかったが、第二王子はエステルを見舞った。
エステルは数限りなくいる征服地からの女にしか過ぎなかったが、
その清らかな水に磨かれたような容貌と、揺れる秋の花のような、愁いある風情は、
支配欲の強い第二王子の大いに気に入るものであった。

「先王の御子が、エステル姫を見舞っただと」
 控えの間で侍女からそれを聴かされた第二王子は、不快を隠さず鼻を鳴らした。
寝台に横たわったままのエステルは、第二王子の訪れに身を起そうとしたが、
「そのまま、そのまま」
 第二王子の手で枕に戻されてしまった。
王子はエステル姫の前に、手をひらつかせた。姫の青い眸は何の反応もなかった。
 (眼が見えなくなったというのは本当なのだな)
 第二王子は眼をすがめ、精緻な人形のように横たわる、美しい姫の姿を眺めた。
弱りきり、蒼褪めて、姫は現のものとも思われなかった。
姫を診察した医師から聞き及んだところ、エステル姫はもう子が孕めぬかも知れぬとのことだった。
(それは構わん。どうせ孕んでも堕胎させるのだ。かえって好都合というものだ。
それにしても、弟め、あれほど云っておいたのに、姫にいったい何をしたのだ)
 寝台に身をかがめ、第二王子はエステル姫に囁いた。
「耳は聴こえているのだな?聴こえているのなら頷くのだ。よし。お前は人形などではない」
 掛け布をはぐと、第二王子はおもむろにエステル姫の寝着を裾から持ち上げ、ほっそりとした、
白い脚をあらわにさせた。
さらに寝着を上までたぐり、すっかり脱がせてしまうと、それを床に捨てた。

 寝台の上に乗り上がった第二王子の重みで、寝台がぎしりと音を立てた。
王子は姫の膝をひらき、腿の間に身を入れるようにして、姫の下着に手をかけた。
エステル姫は吐息のような抗いのような小さな声を上げたが、王子は構わなかった。
 産毛のような、薄くやわらかな恥毛があらわれた。
第二王子は二本の指で女の溝を拡げ、あやすように指を動かしてくつろげながら、
出来るだけよく見えるように姫の腰を移動させ、窓から差し込む陽の光の明るみの中で
それを確かめた。ほっとしたことに、めちゃくちゃにされたといっても中が切れただけで、
使用できぬわけではなさそうであった。
花びらの奥に鼻を近づけると、かすかな尿のにおいと、女の蜜壷のにおい、それに血のにおいがした。
「ここは、無事だな」
 王子の指は、その上にある鋭敏な一点に向かった。
 そこは今となっては、エステル姫の泣きどころであり、触れられるだけで、エステル姫は
背をそらし、おののきをみせる。
「弟はここをかわいがったか?どうやってかわいがられた。奴のことだ、針を通したり、
蜜を塗って虫にたからせたりしたのではないか。それとも痒くなる芋の汁を塗られたか。
それはさぞかし、そなたを狂わせ、身悶えさせ、何度も頂きに追いやったことだろう」
 耐え難い感覚に貪りつくされた、あのおぞましい記憶が呼び起こされ、エステルは逃げようとした。
王子は腰をつかんで、放さなかった。
もちろん、第二王子は事情を知った上で姫をなぶっているのである。
言葉責めも彼の好むところであった。
王子は姫の片方の足首を持ち上げ、肩にかけると、姫の股をひろげさせた。
剥き出しにされた小さな芽が、王子の爪で弾かれた。
「……ア」
「言葉は失くしても、感じることはできるのだな。
わたしはお前が口を利けなくなろうと眼の光を失くそうと、いっこうに不都合はないぞ。
むしろその為の道具には相応しい。そのほうが感度が上がるというので、わざと女の眼を
潰す娼家もあるほどだ。玩具として男を愉しませ、そなたの声を聴かせるのだ。
ここがいいのか。それともここか。もし違うのならば黙っているはずだな」
 第二王子は指先を唾液で湿し、指の腹をあてて入念にそれをほどこした。
「ア、ア……」
「よほどいいようだな。首を打ち振り、そんなに感じるとは。止めて欲しいのならば
そうはならぬはずだからな。口を利けぬ女にはからだに訊くのがいちばんだ。どうだ、
感じるのか、そのようにひくついて、これが好きなのか。唇をかみ締めていないで
答えるのだ。もっと尋ねてやろう」
 姫は胸をそらした。先の赤い、真白い双丘が王子の眼下でゆれた。
「そんなに暴れるな。そなたが使い物になるかどうか調べてやろうというのだ。
弟は尻の穴も責めたか。なるほど痛々しく切れてるな。しかし指一本くらいは咥えることが
できるだろう。ここと、こちらの穴を同時にかわいがってやろう。どうしたのだ、
そんなに悶えて、そんなに嬉しいのか。もっと責めて欲しいのか。力を抜くのだ。また怪我をするぞ」
 男の手の動きが本格的になった。エステル姫は、王子の思うがままに声を放つものと化した。
最後に第二王子はおのれのものをエステル姫の口でしごかせて、姫の喉の奥に
男の精をたっぷり出すと、姫の見舞いを終えた。

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11.

 ------決して逆らったりはいたしません。あなた様にかわいがっていただくことが
  奴隷であるわたくしのよろこびでございます。どうぞ、何なりとお命じ下さいませ。

 おぞましいかたちをした虫を好む女などこの世にはいない。
エステル姫とて例外ではなく、ある種の虫をひどく怖がった。
 また、姫は蛇を怖れた。
それを知った第三王子は、床上げしたエステル姫を責めるのに、早速それを使った。
いつもの責め具ではなく、生きた蛇を挿入された時の姫の暴れようは、特に第三王子を興がらせた。
蛇責めは、たとえ毒蛇でなくとも蛇がどのような病気を持っているか知れぬために、
常ならば使い捨てのきく奴隷女にほどこすのであるが、清らかなエステル姫が
蛇をとりわけ苦手とし、怖がるのを見ては、王子としてはそれを試さずにはいられなかったのである。
第三王子はまず、眼の見えないエステル姫のすべらかな腹の上に蛇を二匹のせ、
それが蛇であることを姫によくしらしめた。
小蛇は先のとがった舌で拘束された姫の胸をなめ、姫はその間身をよじり、声を上げ続けた。
エステル姫は蛇を嫌悪するあまり、錯乱した。
失神から呼び戻された姫は、慈悲を乞う眼で王子を仰いだが、王子はその懇願を拒絶した。
第二王子がしだいに悦びを覚えて頬を上気させてゆく姫を好むとすれば、反対に、
弟の第三王子は、蒼褪めてゆく姫を好んだ。
口を縫い合わせてある蛇の頭をつかみ、特殊な手袋をはめた手で尾の方を捕まえると、
王子はいやがる姫の膣に差し入れた。
蛇は浅瀬で泳ぐ魚のようにその三角の頭を姫の暗闇の中に入れ、しばらく迷うように
頭を振り立てていたが、やがて身をねじらせながらそこにもぐりこんだ。
蛇の体をエステルの中に入れてしまうと、第三王子は残った蛇の尾を釘で床にとめた。
出口をなくした蛇は手足を縛られた姫の膣の中で蠢き、奇妙なかたちにねじくれて、
あらゆる細部を刺激し、それ自体が意志をもった淫具のように奥へ進もうとつつき回り、
エステル姫を泣かせ、悪寒でふるわせ、その華奢な肢体を総毛立たせた。
蛇がかま首をもたげたり、身をねじらせると、姫の白い、平らな腹は、それだけ圧迫された。
第三王子は籠からもう一匹の蛇を取り出し、そのとがった頭の先でエステルをつつかせた。
太さのあるものが姫の膣を満たし、中で蠢き、伸縮し、進退を繰り返しているのを、
王子は飽くことなく眺めた。
 蛇の動きが弱くなり、第三王子が姫の膣に手を入れてそれを引きずり出してみると、
蛇は姫の淫らな白い粘液に汚れて出てきた。

 それをしたあとは、必ず膣内をよく洗わなければならなかった。
鳥のくちばしのような器具を突き立てられ、花びらの奥まで貫通されたエステル姫を
薬液で洗浄するのは、第三王子専属の医師の役目であった。
頭の方が下になるような特殊な椅子に坐らされ、がっくりと細首を倒している女の狭い奥穴に、いやな
においのする薬液が漏斗からどろりと注がれた。
医師はわざと器具を動かしたり、暴れてはなりませんのでと言い訳しながら、美しい姫の白い脚を
開脚にさせて縛ることを愉しんだ。
膣を満たしてゆく液も耐えがたかったが、何よりも椅子から起されて、ふらつく膝で木桶を跨がされ、
男たちの見ている前でその液体を下の口から吐く辱めは、盲目の姫を辛くさせた。
とろみのある薬液は手を差し入れてかき出さないと完全には外に出ず、それも、姫は自分で
やらなければ許してはもらえなかった。
 怯えた女を苛むことを、第三王子は好んだ。
そしてどれほど乱れ、怯え、あられもない狂態に追い上げられても、エステル姫を覆う
姫のおとなしやかな、そしてどこかこちらを拒み続けるようなものは、変わることがなく、
それがまた第三王子の可虐性をそそるのであった。

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12.
 姫の視力が消え、言葉をなくしてからも、第二王子と第三王子は交互に
エステル姫を召し出した。
それは寵愛といってもいい破格の待遇であったが、エステル姫には、どちらのお召しも辛かった。
 第二王子は第三王子ほど酷いことはしないが、その代わり手加減しないことと
休ませてももらえぬことでは、第と同じであった。
第二王子が腰の上に姫を跨らせ、男のものを含んで動かすように教えた時には、
姫の膣の中の肉襞が窮屈なほどに絡みつくのがいいと云って、以来、エステルは第二王子から
その奉仕を命じられぬ日はなかった。
淫薬を呑まされ、最初は促されるままにおどおどと、次第に自ら腰を動かして男を迎えるエステルは、
頬をほてらせ、おのれの頭が白く濁ってくるまで陰部を熱くして、また熱く突かれるのだった。
 一方、第三王子のほうは、おのれの男性機能が使えぬ代わりに、専属医師や
奴隷を使って、姫を犯させた。
黒檀のように肌の黒い大男が、姫の白い肢体を後ろから突き上げている間、第三王子は
役に立たないおのれのもので姫の顔をなぶっていた。

 その日も、両脚を拡げるかたちで磔具に固定され、第三王子と医師に
交互に責め具で遊ばれて、エステル姫は呻き、泣いていた。
二人が「木馬」という言葉を交わしたのを、エステルは聞いた。
彼らはその会話の間も、エステル姫をいたぶる手を止めなかった。
医師は、姫の白い、穢れをしらぬようなまるい胸に、高いところから蝋燭の蝋を浴びせた。
それは落下の間に冷えてはいても、姫を縮こまらせるにはじゅうぶんな熱さで、
点々と姫の胸の先を打った。低温蝋燭を特注で作らせたのは、医師の発案であった。
それは火傷痕を肌に残さぬままに、女にその効果を与えることができた。
熱い蝋は姫の固くなった乳首や、大きく左右にわられている内股の弱いところを狙って落ち、
緊縛され、眼の見えぬ姫には、それがまるで焼け火箸で叩かれているように思われるのだった。
開脚された下の口は張型で拡張されて、突起のついたそれは縄で縛られた姫のほっそりとした腰を
じらすように浅く深く突き続け、時折は肉襞を指でえぐるようにかき回されもした。
結合部分からこぼれおちるのは、姫自身の、淫水であった。
最初の頃にはなかったそれが溢れるようになったことを、まだ認められないというように、
エステル姫は弱々しく首をふって、彼らが故意に立てさせるその音から
逃れようとするのであったが、それを見ると第三王子はさらに責めを強くして、
太ももを伝う悦びのものを、エステルに教えるのであった。

「木馬責めをご所望ですか」
 医師は熱い蝋を姫の肌に垂らしながら、その口端をしまりなくゆるめた。
不細工で不健康に太り、脂ぎって下卑びた彼は、女にもてず、それだけに
エステルのような極上の姫を縛り上げ、苛み、その白いすべすべとした肌を屈服させ、
犯せることが、嬉しくてならぬのだった。
少し低いところから、貴女の胸の先に蝋を落とすと、エステル姫は白い喉をのけぞらせた。
両腕を頭の上で縛られている女の脇や無防備な腋の下にも、熱い蝋は滴った。
「しかしあれは、女の股を裂くものです。お道具を嵌めて揺らす馬のほうがお勧めです。
せめて兄王子さまがこの方を飽いて捨てるまで、お待ちなさいますように。
足枷手枷は、鉄製、木製、お望みのままに。そのうち姫を水槽や地下牢のある館に運び込み、
もてなして差し上げたいものです。こういう良い媛は、末永く、かわいがって差し上げませんと」
 第三王子は張型でエステル姫の下の口を泣かしながら、女の敏感な陰核を
姫の結い上げた髪から抜きとった金色のピンの先でつついていた。
エステル姫は両手両脚をひきつらせた。
強制的に昇りつめさせられるたびに、ますます彼らはエステルを追い込むのが常であり、
頂を迎えても迎えなくとも、泣いても叫んでも、ゆるしてはもらえないのだった。
 次に王子は、おもちゃの鋸の歯のようなものを取り出し、姫に与えた。
小さな歯を肉芽に押し付けて揺らすと、細かな、そして複雑な強い刺激となった。
「-----おや、あれほど我慢なさるようにと言ったのに、お姫さまが、またしても」


 木馬を用いるかわり、彼らは木馬責めの応用で姫を罰した。
姫を床に抑えつけ、棒状の淫具を尻の穴に埋め込んだのは、医師だった。
全身をひくつかせている姫の髪をわし掴み、ひき起すと、彼らは姫の両手を縛り上げ、
高さを調整して天井から吊るした。
姫の股間には、結び目をつくった縄が通されて、その両端は、姫の腰よりも
少し高いところにぴんと張られた。
それはいつも宴の席で女奴隷に課せられる綱渡りであったが、第三王子のそれは、もう少し凝っていた。
疲れて踵を床につけると、荒縄の縄が、姫の敏感なところにくい込み、縄の張力によって
たわんだ縄は上へと戻ろうと弾み、エステル姫は過敏なところをたえず刺激され、こすられ、
身動きするたびに、あらたな角度から股が痛み、つま先立ちになっていない限り、その責め苦から
逃れることはできないのだった。
 姫の髪をまとめていたピンは、陰核責めだけでなく、姫の乳首にも使われ、花の色をした
両方の乳首が金属で挟み込まれた。それは噛まれるように痛かった。
彼らは天井から吊られたエステル姫の胸先や、尻から突き出ている淫棒の上を、荒縄の鞭で叩いた。
全身を叩かれるよりも、そうされたほうが、縄目の上の耐え難い苦痛は苦痛のままに姫を貫くのであった。
特に、両乳首を上下から挟んでいる、金色のピンの与える鋭い痛みは、耐え難かった。
姫は鞭から逃れようとして縄の上で前後に動いた。
いまや姫は、自らそこを縄の結び目にあてがうようにして、身体をゆすり始めていた。
快感の波が脳内を満たす時の、あの忘我を求めて、辛さから逃れるためにエステルは
縄におのれを押しつけた。
 それはまたとない見ものであった。
美しい姫が、切なく喘ぎながら、男たちの前で荒縄の結び目を股で挟み、こすり合わせ、
前後に揺らしているのである。
髪を振り乱し、より強い刺激を求めて、エステル姫は縄の上で腰を振った。
姫の白い尻に荒縄が深く喰いこむよう、彼らは縄の高さを少し上げた。
そうするともう足指の先しか床には届かなかった。
第三王子と医師の手が交互にその背を鞭打った時には、明らかな悦びの声をエステル姫は上げて、
痛みと快感に引き裂かれ、縄の上に揺れながら、うっとりと眸を宙にさまよわせていた。

 先王の御子が第三王子の室に入ってきたのは、ちょうど、荒縄から降ろされた姫が
四つん這いにさせられ、口に医師の陽物を、尻には第三王子の手で張型をあてがわれ、
褒美を受けているところであった。

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13.
 女の細い腰は男たちの両手で掴まれて、前に動けば男の肉棒が喉の奥を、
後ろに引かれれば、張型が女を貫いていた。
「これは。先王御子さま」
 医師は愕き、女の口からおのれを引き抜いた。
床の上には、さっきまで姫の肛門に入れられていた道具が転がったままになっていた。
御子はそれを足先で蹴って退けた。
邪魔をされた第三王子は不満げに、細い目を先王の御子に振り向けた。
医師が情けない姿で慌てて衝立の向こうへ隠れてしまうと、しぶしぶといった風に、
第三王子は慇懃無礼な口をきいた。
「何かご用ですか」
「エステル姫を貸してもらいたいのだが。今すぐに」
 先帝の王子は何事もないかのような、あの冷淡な口調で第三王子に求めた。
少し間があって、やがて第三王子は細い目で、膝の上に乗せている姫の白い尻を見下ろした。
口にあったものを抜かれた姫は喘ぎながら、縄目の痕の残る尻をふるわせ、床に伏していた。
途中で止められるとかえって辛いのか、姫の膣は勝手に張型を呑みこもうとし、尻を動かした。
喘いでいる女の顔を御子は無言で見下ろしながら、王子の返事を待った。
 やがて第三王子は、しぶしぶ応じた。
「父上から散々勧められておきながら、姫の初物を第一王子に
お譲りになった貴方が今さらなんです。女奴隷ならば幾らでも他にいるではないですか。
でも、いいですよ。貴方は先王の直系であり、勇猛な将であり、王である父とても、貴方には
気を遣わざるを得ないのだから」
 第三王子の手で張型を引き抜かれたエステル姫は、胸から床に落ちた。
御子は床を這って逃げようとするエステル姫を抱き上げると、第三王子の宮を出た。


「イヤ。イヤ……」
「エステル姫」
「イヤ」
「何もしない。おとなしくするのだ」

 まだ若い頃、御子には、気に入った女奴隷がいた。
それはエステル姫と同じように、征服地から連れてこられた貴婦人であった。
戦の褒賞として御子はその女を求め、王は先王の子である御子にその女を最初に与えた。
そのかわり、しきたりどおり、御子は女を独占は出来ず、決められた日が過ぎると
ほかの男たちに女を渡さなければならなかった。
また貴婦人は、御子が以前エステルに教えたとおり、宴の席においては
最下級の奴隷として扱われ、淫らな姿態で男たちの間を引き回された。
それが戦の神へ捧げる感謝のしるしであり、征服の証明なのであった。
宴の卓上で両脚を拡げられた女は、男たちに嬲られるままになっていた。
以来、御子は惹かれた女ほど、あまり手を出さぬようにしてきた。
たまには抱いたが、女奴隷たちは王族の間をひととおりまわると、臣下に下げられて
そしていつの間にか消えていくのが常だった。
埃と火炎のたなびく戦場において、エステル姫がたった一人で敵陣に歩いて来た時、
そして戦の将たちの前にその膝をつき、征服地への慈悲を乞うた時、
彼らを見上げたその眸の清い美しさが、遠からず粉々に砕けることを、彼ほど知る者はいなかった。
それゆえ、御子はエステル姫を求めず、第一王子に譲り渡した。
 首枷を嵌めた時の姫の首は、あまりにも細かった。
台座の上で憐れな姿を強いられていた姫を少しなぶってみて、姫がまだまったくの
無垢であることを知った御子は、そうであればあるほど、エステル姫のことを忘れようとした。
欲情に顔を濡らした男たちの間にあって、エステル姫は、別のことを考えているようであった。
それはどれほど穢されてもけがれない、姫しかしらない、清い心だけが胸に抱くことが可能な、
なにかの不変なのだろうと思われた。

 先帝の王子の宮は、御子の意向で普段から、ほとんど人がいなかった。
教え込まれた姫は、室に到着するなり、御子の脚の間に膝をつき、その見えぬ眼で
御子のものを探した。
それをすれば、もう酷いことをされぬと思っているようであった。
怒張した男のものをエステル姫は、その小さな赤い唇で懸命に咥え、喉の奥まで入れた。
御子は姫の、花の色をした乳輪と乳首が、姫の口の動きに合わせて揺れるのを見ていた。
男の精液を一滴残さず呑み込んだ女の乳首は立っていた。

 身動きするたびに酷く辛そうにしているので、怪訝に思った御子は、エステル姫に後ろを向かせた。
乾いた体液がこびりついたままになっている膣に指を差し入れてみても、何もなかった。
姫の肛門から第三王子の埋め込んだ性具を引きずり出す間、エステル姫はひどく苦しんだ。
仕方なく、御子は姫を縛らなくてはならなかった。
もぐりこんでしまった紐を取り出すには指を二本入れなくてはならず、エステル姫の
肛門はそれだけ拡張された。御子はあまり女の尻の穴を扱ったことがなく、紐を引いて
深く埋め込まれたそれを引き出す間、一度ならず、エステル姫に悲痛な声を
上げさせなければならなかった。
奇妙なかたちのものがようやく顔を出した。
それは魚の形をしており、表面にはうろこ状の溝が刻まれていた。
姫君の血と体液に汚れたそれを、御子は暖炉に投げ入れた。

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14.

 御子はながくエステル姫を宮にとどめ置かなかった。
薬を呑ませてよく眠らせた翌朝にはもう、姫を自分の領地の離宮へと送ってしまい、
第二王子と第三王子が姫を取り戻そうとした時には、後の祭りであった。

「あのままでは、第二王子と第三王子の間に、女奴隷をめぐる争いが起こりそうでしたので」

 御子は王にそう説明し、第一王子に対しては、
「悋気のはげしい貴方の奥方に、姫が眼をつけられぬ前にこうしたほうがよかったのです。
今までいったい何人の者が、嫉妬深いあの方の手で惨たらしく、無残になぶり殺されてきたことか。
それをお考えになって貴方もエステル姫に執着されなかったのでしょう。賢明なことでした」
 胸中お察ししますといった男同士の暗黙の了解を告げるにとどめて、第一王子の前を通り過ぎた。
 第二王子は憤慨した。
「それでは誰があの姫の、我らに仕えて悦ぶ声を、戦神に捧げるのだ」
 第二王子は御子に詰め寄った。
彼は弟の第三王子ほどではなかったが、清楚な姫を奴隷として仕込むことに熱心で、つい先日も
遠国からわざわざ取り寄せたものを、ことごとく姫にほどこしたところであった。
弟が痒み芋の汁を使ったのならば、それに対抗すべく、第二王子は発熱感を与える塗り薬を
姫の肉襞にすりこみ、成分の刺激で腫上がった姫の陰核を執拗に責めることで、姫に快楽を覚えさせた。
充血した小さな芽の回りを、先の丸くなった性具でいじめ、エステル姫が膝をふるわせてひくつくと、
「お前の恥垢をとってやっているのだ」
 垢などなくとも、そう囁くことで王子は姫を羞じ入らせ、乱れあがった姫の声が枯れ果てるまで
秘薬をすり込んだ蕾の上に、小刻みな振動を加え続けた。
また、張型も姫のために幾種類も用意して、毎回、どれか一つは姫で試された。
波状の溝のついた張型はエステル姫を特に悦ばせたようで、膣に入れて動かすと、熱い疼きを覚えた
姫の股間はそのために、ぐしょ濡れとなるほどであった。
エステル姫はか細い腕で抗い、細い声でなき、膝を拡げられてはその奥を突かれ、両腕を
頭の上で拘束されたまま泣き咽んだ。肛門に道具を埋めてやり、それを時々引っ張りながら
犯した時の姫の悦びようは、狂気じみているほどであった。責め具の鎖を尻の穴から垂らしたまま
姫は突っ伏し、白濁した液を呑ませた下の口はぱっくりとゆるんだまま、姫自身の淫らな液を流していた。
内心で、あの姫を専属の奴隷として、自分好みにもっと仕込んでやろうと思っていた矢先に、
王宮から姿を消すとは。

 御子はあっさりと、彼に掴みかかった第二王子の腕を抑え込んだ。
「女奴隷は戦神への捧げ物だ。誰もそうしないとは云ってない」
「何だと。ではまさかおぬしが」
「姫は重病なのだ」
「重病だと」
 そこで、王が口を出した。
この国の王だけは、異民族の女を抱くことを赦されておらず、どのような美媛が
征服地から連れて来られようとも、王は我慢しなければならなかった。
そのためにか、王は奴隷に何の慈悲もかけはせず、むしろ鞭打つことを好んだ。
王は広間に集った王子たちに言った。
「どうかな、エステル姫は盲となり、口も利けぬというではないか。
もはや治らぬようであれば、その姫を愚民にくれてやるとよい。
広場に引き出し刑台にでも吊るしておけば、下民のよい気晴らしとなろうぞ」
 そして翌日、引き取りに向かうと、そこにはたいてい膣に棒や野菜を詰め込まれて悶絶死した、
女の死体しかないのだった。持ち帰りを禁じているのは、それをゆるしてしまうと
女を巡って殺生沙汰が起こるからであり、そのかわり公衆の面前で高貴な女を犯すこと、
辱めることは、おおっぴらに行われた。
どのような賎民であろうとも、その女には、戦神への捧げ物であるという名の下に、何をしてもいいのだった。
ろくに風呂にも入らぬ男たちに代わる代わる覆いかぶさられ、衰弱死するまで
犯され続けた女もいれば、戦で近親を亡くした怨みのある者の手で、両手両脚を
切り落とされた女もいた。王は酷薄に笑みを浮かべた。
そのような晒し刑が行われる時、きまって王は、それを眺めに赴くのだ。
「どれほどその姫が美しかろうと、どうせ、散る花ではないか」。

 御子はそれから十ヶ月の間、植民地の砦の巡回の他は、一度も王宮から離れなかった。
エステル姫を独占するつもりなのかという第二王子と第三王子の猜疑心、それに加えて
美しい姫を愚民に与えようとする王の気まぐれな関心が薄れるまで、御子は待った。
ようやく領地を訪れたのは、冬も深まった頃であった。
御子の領地は雪の降る北であった。

「御子さま。よろこばしいお報せです。先月エステルさまに、月のものが」
 そうか、と御子は迎えに出た侍女頭の報告に頷いた。
月のものがあろうがなかろうが、月経が戻っても、エステル姫はもはや身ごもることはあるまい。
かりに誰かの種を身ごもったとしても、それは育つ前に摘み取られるさだめなのだ。
むしろ女のからだを愉しむためには、身ごもらぬからだであるほうが望ましく、
そのほうが長持ちすると、多くの男たちは征服地の女たちを抱きながらそう笑う。
エステル姫は、もはや、石女であろう。
 (身も心も、かどうかは知らないが)
 エステル姫の、あの月の精のような面影を胸に、御子は姫の室へと脚をはこんだ。
雪が降りだした。


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15.

 エステル姫は、露台で夕方の雪を浴びていた。
姫の視力はまだ完全ではなく、うっすらと見えるだけであったが、
室に入って来た男が、王宮にいた御子であることを、その眸は見分けたようだった。
部屋の片隅には、小さなはた織り機があった。
眼が不自由でも、少女の頃からやっていたのか、手馴れた風に、何かのきれいな
模様が織られているところであった。
何と声をかけたものか、御子は迷った。
眼の光はともかく、言葉のほうは、ほぼ回復していると聞いている。
一年ぶりに見るエステル姫は、ますますかよわく見えた。
暖炉の火に紅く照らされているせいか、雪よりも白い肌は透きとおるようであり、
結い上げた髪も、青い眼も、幻のようであった。
雪の中から、エステル姫は、御子の前に歩いてきた。
ほっそりとしたその姿と、何かの決意や想いに張り詰めた美しい面持ちは、ちょうど、
敵陣の中にその身を投げ出しに来た、あの日の姫を彷彿とさせた。
御子の眼はくらんだ。
あの時と同じように、姫は、たおやかなその身を沈め、その膝を御子の前についた。
御子を見上げるエステル姫の顔は、かすかな怯えを堪えてゆらぎ、そしてそれを超えて、
何かにしっかりとすがっているようであった。
かがやくように清いその身を男の前に差し出して、乙女は御子を見上げた。
そして、透きとおるような声が、それを紡いだ。

「決して逆らったりはいたしません。あなた様にかわいがっていただくことが
奴隷であるわたくしのよろこびでございます。どうぞ、何なりとお命じ下さいませ」

 エステル姫は、自らその衣を肩からすべり落とした。
すべらかな、華奢なからだであった。
唇と胸の先は花の色をしており、寒さのために、乳首は立っていた。
男の眼がそれを見ていることを恥じるように、姫は俯き、淡い恥毛を両脚で隠すように膝を固く合わせた。
それから、エステル姫はふたたび顔を上げた。
そこにはふるえるような女のおそれと、それを抑えつけようとする何かの力があった。
とぎれとぎれに、エステルは男に懇願した。
「わたくしを、かわいがって下さい。お気に召さぬことをいたしましたら、罰して下さい」
 女の華奢な手が、御子の男のものにかかった。姫はおぼつかぬ手で御子の衣から
それを取り出し、唇の間に含もうとした。
御子がその手を振り払うと、エステルの顔には絶望が浮かんだ。
エステル姫はうろたえ、怯え、両手を中途半端に宙においたまま、眸を大きくみはり、
問いかけるように、切なく御子を見上げた。
エステルはよろよろと立ち上がった。
そしてふと思いついたように、女はすぐ後ろにあった椅子に向かった。
エステルは、はだかのまま椅子の腕木の間に胸部をおくようにして、身を倒し、前かがみになった。
白く丸い尻が御子の前に差し出された。
ためらいがちに姫は膝をひらき、腰を突き出した。
男の眼に、女の溝があらわになった。暖炉の明かりがその姿を照らした。
エステルは、御子に求めた。
「この日をたのみに、どれほどお待ちしていたことでしょう……」
 男を誘うつもりか、それとも寒いのか、エステル姫の腰がびくりと揺れた。
暖炉の炎の色みが姫の腿の間を濡れたように浮き立たせ、それはまるで、姫の淫らなものが
際限なくしたたる様子を思わせた。その姿勢が辛いのか、それとも御子の無言を怖れてか、
姫の肩がふるえた。
エステルは、男に女を秘所を晒したその態勢のまま、男の手を待っていた。
御子は自分でも理由のつかぬ失望に落とされた。
そして次に、それは怒りとなって燃え上がった。

(この、売女)

 室内に響いたのは、椅子が倒れる音であった。エステル姫は床に突き飛ばされて倒れた。
御子はエステルを組み敷いた。結い上げてあった姫の髪がばらりとほどけた。
御子の手は姫の華奢なからだを揺さぶり、その局部を掴んだ。
姫の秘所に男の指がめりこんだ。
「言え。ここで何を考えていた。第二王子のことか、それとも第三王子のことか。それとも
お前の処女を奪った第一王子のことか。この一年、何を考えていた。
どれほど淫らな夢想を重ね、どれほどお前のここを、この穴を、いやらしく濡らしてきたのだ。
それとも、お前は自分でそれをやっていたのだろう。こうして自分で指を入れて
おのれを慰めてきたのだろう。言え」
 否定するようにエステルはおののきながら首をふった。
御子はなおも姫の髪を掴んで引き戻し、女の膣内の奥に指を深く埋め込んだ。
「何人の男たちをお前の中に引き入れた。しおらしい顔をして、そのような声を上げて、ここで
何人の男をこの脚の間に咥えこんだのだ。王子たちに抱かれて、お前はどんな声を上げたのだ」
 御子は姫のほっそりとした脚の内股を蹴った。姫は呻き身を折った。
そのよわよわしい様子が、ますます男を猛らせた。

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16.
 膝を合わせた姫をゆるさず、御子はエステル姫の脚を大きく拡げさせた。
ふと思いついて、御子は姫にそれを命じた。
御子の求めに姫はほそい眉を寄せてしばらく拒絶する様子をみせたが、やがて眼を閉ざし、ゆっくりと
膝を胸に寄せ、自分の手で足首を掴むとそれを大きくわって、女の部分を御子の前に差し出した。
真っ白な脚の間に、色鮮やかな溝が見えた。
恥ずかしさのためか、その姿勢の辛さのためか、姫は喉をそらし、小さな吐息を洩らした。
一年前と変わらず、姫の花びらは可憐な紅色で、恥毛も薄かった。
あられもない格好となっているエステル姫は、もはや、ただの女であった。
急速に怒りの醒めた御子は、嗤いもせずに、ひえびえとした声を
無様な格好をしている女の上に投げかけた。
「見せるだけか。それで男が満足すると思うのか」
 女の股間をつめたく過ぎるのは、部屋の寒さではなく、男の侮蔑であった。
覚めきった眼で上から見下ろしている男に怯え、姫は切なく喘いだ。
やがて羞恥に絶え入るような小さな声で、瞼を閉じたまま、姫は御子に願った。
その目じりから、涙がしずかに零れ落ちた。
 お望みがあるのならば何でもいたします。
「何でもするだと」
 御子は昏い笑みを口に浮かべると、窓際に行って、そこにあった機織の道具の中から
糸を通してある杼を掴んで戻って来た。
それは男の手の中に収まる大きさの、先端の丸い、糸巻きの舟ようなものだった。
上と下に分かれた縦糸の間にこの道具をすべらせることで、糸を組み込み、模様を織るのだ。
木でできた杼には、赤い糸がかけられていた。
御子は念のために基底部を手の平にすりつけ、ささくれたところがないかどうかを
確かめた上で、それを姫の腹の上に投げ出した。
「それを使って、おのれで自分を慰めてみろ」
 その意味が分った時の、エステル姫の苦悩は哀れなほどであった。
涙をたたえた眼で、姫はゆるしを乞うて御子を見上げた。冷淡に、御子は重ねて命じた。
「やるのだ。いつものようにな」
 諦めて眼を閉じた姫は、いっそ静謐といってもいい顔をしていた。
姫は白い手で、機織道具を握り締め、それを膝を立てた脚の間に持っていった。


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17.
 御子は領地に滞在している半月の間、夜には必ず、エステル姫の室を訪れた。
閉ざされていた蜜壷はすぐに男の迎え入れかたを思い出し、よがり狂う姫を、御子は下では熱く、
頭ではひややかに眺めた。
 エステル姫はいつも何かに怯えており、ひたすら男の意に沿うことだけを、考えているようであった。
そうすれば、もう酷いことをされないと思っているかのように、無理なことにも、耐えていた。
 (王宮で受けた仕打ちが、まだ恐怖となって残っているのか)
 ためしに、生きた蛇をお前のここに入れてやる、蛇の鱗と舌がお前を悦ばせるのを
見てみたいぞ、と背中側から脅してみたが、鏡の前に立たされたまま陰部を指責めされている
エステルは、頬をひきつらせて蒼褪めながら、
「お望みのままに」
 俯いて、膝をふるわせただけであった。

 或る夜、御子は姫の尻の穴に、責め具を与えることを思いついた。
外套を留めておく、紡錘形の小さな飾りがついた紐がそれにあてられた。
飾りの表面はすべらかであったが、中央部が太くなっていた。
五つに連なっているその先端を、脚をひろげさせて膝をまたがせた女の閉じた穴に
一つずつねじ込む間、太いところにくる度に、姫のもがき苦しみようは、床を叩くあえかな
叫びとなり、くぐもった悲鳴となった。
そして姫のそれを聴きながら、やはり、御子は自分の頭が醒めてゆくのを覚えた。
戦場で彼の心に灯ったとおぼえた幻影を御子は嗤うほかなく、そうであればあるほど、
誰にも渡さず、誰よりもこの手でこの女を壊し、穢してしまいたかった。
彼はエステルの尻を押さえつけ、道具を最後まで填め込んだ。
脚の間からは機織の道具の先を突き出し、尻には責め具をはめ込まれた女は
掠れた声で呻き、ほっそりとした脚を不恰好にひらいて、ひくついた。
「嬉しいのだろう?」
 御子は姫に腰を上げさせると、後ろから杼をやわらかく抜き差しした。姫は呻いた。
丸くなっている杼の先端で浅いところだけをつつき、出し入れを速くしたり遅くしたりしてやると、
ひときわ高い声でエステルはすすり泣いた。
「嬉しいと言え。王子たちにも毎晩こうされて、かわいがられていたのだろう。
奥まで欲しいと言え。求めてみろ。淫売」
 御子がエステルに用いているものは、初日のあの、赤い糸がかかった杼であった。
自涜してみせろと命じたあの時、花びらを左右に分けて、覚束なく挿入口を探していた女は、
この一年間、誰も、何も、そこに通していないことは明らかであったが、御子は冷酷なまでに
それを認めず、女にそれを続けさせた。
エステルの額には汗が浮かび、閉じたところを叩いているくぐもった音だけが響いていた。
どうしても物を挿れられず、エステル姫は泣いた。
御子は女の手をどかせた。そこは乾ききっていた。
 なぶる間、御子は、エステルの顔に哀しげな苦しみの表情しか見なかった。

 暖炉の明かりにエステル姫の顔は、赤くほてっていた。
苦悶の表情を男に晒して、喉をそらし、下から身を貫くものに耐えていたが、やがて
隠しようもない快楽の声を上げた。
すべすべした杼はすっかり濡れていた。御子は乱暴に杼を引き抜くと、そこに男を沈めた。
投げ出されて転がった杼が壁にあたって音を立て、そこから湿った赤い糸が床にこぼれた。
御子は女をめちゃくちゃに突き上げた。
尻の穴の異物と男の一物の与える刺激に、女は引き裂かれたようになった。
今にも壊れそうなかぼそい悲鳴の高まりが、いっそう男を煽った。
その影を、暖炉が残酷な色で照らした。

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18.
 滞在の終わり頃になると、エステルのそこは、触れただけで潤うようになっていた。
御子は姫を軽蔑し、そして、女奴隷としてそれに応じた扱いをするようにした。
 外は、雪が降っていた。
白く、はかない雪は、夜の間の淫らな女を毎晩消し去り、一日が過ぎると、また御子の前には
清純そのもののような美しい姫が、怯えながら、しかし脚の間をすでに湿らせ、跪き、
彼を待っているのだった。


 お願いです。
熔け切った頭で、自分がもう何を口走っているのか分らないままに、
犯されている女は御子に哀願した。
 お願いです。わたくしは何をされてもいいのです。わたくしをかわいがって下さい。
もっと酷いことをなさって下さい。
 (してやるとも。淫売に相応しい扱いでな)
 お願いです。
エステル姫は喘ぎながら、混濁した頭にしか不可能なうわごとを繰り返した。
お願いです、お願いです。
エステル姫の眸から、きれいな涙が、はらはらと落ちた。
その首には、首輪があった。御子が家畜用のそれを納屋で見つけて、姫に嵌めたのである。
お願いです。
「お願いです……」
 エステルは彼にしがみついた。
再度のそれをねだっていると聴こえた。身をひいて、御子はエステルの敏感な芽を
あらわにさせると、弦を爪弾くように慰めを与えた。
虚しさとも、憐れみともつかぬ気持ちで、男はやさしいといってもいい刺激を深く加えた。
最初に触れた時と変わりなく、小さなものが、小さいままにふくらみ、男の舌先にかわいがられた。
エステルは股の間をしとどに濡らしながら、共に汚れてゆく男を迎え入れた。
汗でべとつく胸と胸をすりよせて、男の下で女はなおも願った。お願いです。
御子はエステルを突き上げた。女は声を放った。
たとえ奴隷として連れてこられた女であっても、貴人が望めば、妾にもできる。
或いは、重病とでも偽ってこのままこの離宮にいる限り、姫はもう、男たちに好きにされることもない。
それが望みか。それとも違うのか。女の胸の先を彼は噛んだ。
そして女の身を深く折り曲げさせると、真上にのしかかった。
それは女を奥まで突ける体位で、重みがかかる分だけ底を深くされた女は苦しむ。
首枷をかけられているせいで、エステルの細い首は男が動くたびに傷つき、
息をするのも辛そうであった。強いられたその姿勢のまま、女は追い上げられて髪を振り乱した。
 (なぜ、頼まない)
 女ならば、誰でもそうする。
そのために媚と媚態を覚え、貴人の男の気に入られるように、必死に振舞うものだ。
だが隷属するエステルは従うばかりで、そこに自分の願いを差し挟むことはない。
沼地をかき乱すような音が結合部の摩擦を教え、女の悦びを教え、そして限界の近さを教えた。
霧のような汗と熱に包まれて、エステルはもう自分でもどうしようもないのか、男にすがりつき、
自ら腰を動かしはじめた。彼は女を上にさせた。
 首輪はきつめに留めてある。それは軽く首を絞めるのに近い効果をエステルに与えているはずだった。
潤みきった眼が何かをねだり、そしてそれは口にはされず、女の奥が男に絡みつき、締めつけた。
彼はエステルが腰を振り立てるのに任せた。
 どうして欲しい。なぜ、頼まない。
女の喘ぎ声の間隔が短くなった。
もう一度王宮に連れ戻されるのは恐ろしいと。このままこの離宮において欲しいと。
この首輪をとってくれ、いや、どうかこのままこうしておいて下さいと。
 (あなたのものにして欲しいと)
 寸前で腰を引き抜かせ、また深く落とすようにして埋めてやると、女の首輪の留め金が、
かちかちと音を立てた。
エステルは、その夜も、何も頼まなかった。


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19.(最終回)

 雪が降っていた。
音もない、白さだった。
どれほど弛緩し、放心していようとも、後の始末は必ず姫にさせた。
それが済むと、彼はエステルの股に手をのばした。
乾いたものの上から慰めてやると、痛いのか、感じるのか、エステルは小さく吐息をついた。
そのことを意地悪く指摘してやり、御子は姫の頤を掴んだ。
解放した後の女の眼はいつも、とろりと昏くなっていた。
 (この女は悦んでいるのだ。男なら誰でもいいのだ)
「汗がしみて痛いだろう。外してやろう」
 御子は姫の首枷に手をかけた。姫君の首はそのために、傷を負っていた。
首枷が取れると、エステルはすり傷を自分の手で包むようにした。
冷たい手が熱を帯びた傷口に気持ちがいいのだろうか、エステルは小首を傾け、外に降る雪の音を
聴くような顔をして、おとなしく、彼の近くに寄り添っていた。
しかし後で薬を塗ってやろうと彼が言うと、エステルは咎められたかのように、うろたえて、
手を膝におろし、その美しい眼を伏せてしまった。
男はそんな女の髪をかきあげ、小ぶりの乳をもんでやりながら、そのうなじに、唇をつけた。
「明日、王宮に戻る。お前は連れては帰らぬ。お前は、ここにいるのだ」
 それを聞くと、姫はびくりとした様子をみせた。
何故か、そのことがもっとも恐ろしいようであった。
それは御子がどこかで期待していたような反応とは、ほど遠かった。
御子はどうでもいいような気持ちで、安心しろ、とまだ余熱と潤みが残っている
女の股を撫でながら、女に言い聞かせた。そこだけは彼の望みどおりの応えをみせて、
あたたかく、素直に、男にすがってくることを知っていた。
 指先にぬるいものが触れた。彼は滞在の間に探り当てた泉から、悦びが滲み出るままにさせた。
「お前はもう王宮には戻らなくてもいい。ここにいるのだ」
「どうかお願いです……」
 男の指のやわらかな動きのせいか、それとも寒さのせいか、エステル姫の花の色をした乳首は、
つまむだけですぐに固くなった。振り向かせてみると、エステルは蒼褪めていた。
その眼には、いつも彼が気に入らなく思う、犯しても穢しても、翌日にはまた戻っている、
清いひかりがあった。
 ふるえながらエステルは胸の前で両手を組み合わせた。
「どうか、そんな酷いことをおっしゃらないで」
 そのきれいな眼から、涙が落ちた。何かを怖れているその声は必死で、掠れ、ひきつっていた。
エステルはどうしたらいいか分らぬというように、見るも哀れなうろたえをみせた。
先刻まで彼が支配し、腕の中に閉じ込めていた女が、遠くへ行ってしまったようだった。
「どうしたのだ。落ち着くのだ」
 女は男の手から逃れ、寝台から降りた。両手を胸の前で合わせ、女はがたがたとその身をふるわせた。
「お気に召さぬことがあったのなら、もう決していたしません」
 何かにすがりつくようにして、エステルは男を仰いだ。
その眸には恐怖しかなかった。
「どうか、わたくしをもっとお使い下さいませ。奴隷としてあなたさま方にお仕えいたします。
お気に召さぬことがあったのなら、鞭打って下さい。おゆるし下さい。王宮に連れて行って下さい。
方々にこの身をお引き渡し下さい。昼となく夜となく、わたくしをかわいがって下さい」
 唇をわななかせてエステルは懇願し、冷たい夜の床に膝をついた。


 御子はエステル姫の怖れと誤解を解くことをあえてしなかった。
そう思わせておくかぎり、女は自殺も絶望も考えず、それを信じて生きているだろう。
何をされてもいいというのは、きっと嘘ではないのだ。
 払暁とともに出立の支度をはじめた男は、窓辺にある、はた織り機を指した。
あれは何の模様を織っているところなのだ。
灯りがあってもうっすらとしかものが見えぬ姫の視力は、夜明けには、ほとんどないようであった。
エステルはその時だけ、しずかな喜びを顔に浮かべ、夢を見るような眼で、男に答えた。
 明け方の空には雪が降っていた。午後には吹雪になりそうだった。
「みなさまのところへお連れ下さい。もう決して逆らったりはいたしません。
わたくしは何をされてもいいのです。どうかお願いです。わたくしの民を、お救い下さい」
 都に戻ったら、王に、エステル姫は亡くなったと告げるつもりだった。
そして、郷里の森を白い手で綴っている姫の織物に必要な、美しい糸を取り寄せて、届けてやるのだ。
 寂れた街道に馬をすすめていた御子は、分かれ道に差し掛かり、ふと振り返った。
彼の領地へと続く道は、氷の張った川沿いの一本道になっていた。
今すれ違った、馬車の窓には、第三王子とその医師の姿があったように思ったが、気のせいだろうか。
そのすぐ後に続く馬車にも、見たことのある男たちが乗っていた。
 それも、雪が隠した。
 御子は空を仰いだ。白いものが舞う灰色の無窮に、同じ色をした雲が流れていた。
別れ際、女の白い頬に手をおくと、エステルはその手をおしいただくようにして、手を重ね、
つめたい唇をそっと寄せて、祈るように眼を閉じていた。
傷痕が残ったままの首は、首枷のかたちのままに、赤かった。
真白い雪の影が降った。
清い雪は、女のからだを白く覆い、花の色をわずかに見せながら、まだ雪どけを知らぬようであった。


[エステル・了]

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