ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。
決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。

【異教徒の妃】
◆七幕(最終回)
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 -----よくやりました、王子
 -----あなたの弟王子はどのみち、この先、あなたが即位する途において邪魔者でした
 -----あの異教徒は、妃に上げられても、まだ改宗せずに頑張っているとか。
    しかしこの先、王の子を孕みでもすれば、子とおのれの栄達を考えて、あの女も
    改宗に応じるやも知れません
 -----妃腹から生まれた王子は、有力な次代候補です。そうはさせてはなりません。
    弟王子を殺したことを気にやむことはない。それでこそ、この国の、王子です。
 -----あの賤しい女を、少しは木馬の背で懲らしめてやりましたのか。それはよきこと。
    ほんの短い間でも、あの刑罰にかけられた女は、その後一生涯、前かがみになって
    床を這うほかない、惨めなからだになるそうな。
    異教徒の分際で妃の位に居座った女には、天誅が必要です。離宮からお戻りになった王も、
    さっそく王子殺しのあの女を、念入りに詮議なさっているとか。ほほほ、いい気味。


 父王は離宮に行かれた。父上が留守の間、お前を可愛がってやるぞ。
牢獄から女を出した二人の王子は、宦官たちを外に追い出し、女を無理やり地下室に引きずり降ろした。
 王子たちは王妃の衣を剥ぎ取り、その白い肌に、縄をかけた。
「本当に歩く時に、片脚を引くのだな。まさに”うさぎ”だ」
「薬を呑め。今からやることをお前が父上に喋らないように、そしてお前がすっかり忘れるように」
 女はすぐに全身を苦痛の汗で濡らし、性器に食い込む鋭い痛みに髪を振り乱した。
後ろ手に縛られ、天井から吊るされた女には、そこから落ちることも出来ず、王子たちの思うがままにされた。
 王子たちは砂時計で時間をはかり、女をすぐに滑車で吊り上げ、休憩を与えた後に、また木馬の背に降ろした。
足首には錘がなかったが、女の両脚は、すぐに、鉛のように痺れた。
「芸をしてみせろ、淫乱なめす犬め」
 王子たちは股を裂かれている女の乳首に責具を噛ませ、それを前後に引っ張った。
三角木馬の尖りの上で腰を前後に揺すられた激痛は、この世のものとも思えなかった。
女は白眼をむき、声なき絶叫をふり絞り、後ろ手に縛られた身をのけぞらせ、木馬の上で苦悶し、脂汗にまみれた。
乳房を振りたて、舌噛み防止に張型を含まれた口で、女は狂ったように呻き続けた。
 時間にして僅かな、しかし極限の辱めと脳天を貫く地獄の責め苦は、宦官たちの大声で終わりを告げた。
「王子、何をなさっておられます!」
「はなせ。弟王子に怪我を負わせた、この異教徒の首を刎ねてやるのだ」
「弟王子はすでにお亡くなりです」
 三角木馬の脚もとに凭れて床に坐りこんでいる王妃は、全裸で、返り血を浴び、その手には
血濡れた刃物を握っていた。
「父上、父上。あの女が、木馬をねだったのです。父上が留守の間に、あの淫乱なめす犬が檻から
それをねだったのです。虐めて下さいと尻を振り、もっとひどいことを下さいと、木馬の上で
悦びの声を上げ、涎をたれ流していたのです」
「王子の話は、本当か」
「……はい」
 異教徒は頷いた。
宗教裁判に引き出された女でも、さまで従順ではあるまいといった風情で、女は壁に架けられ、
おとなしく王の鞭打ちを受けた。
「すべてまことでございます」
 鞭を受けるたびに華奢な身体を鎖の間で揺らし、女は、王の問いのすべてに頷いた。
 王さまの留守中に、王子さまがわたくしを、木馬で慰めて下さったのです。
ひとりの王子さまが牢に鞭を取りに戻られました。
その間に、もうおひとりの王子さまがわたくしを木馬から降ろしました。
わたくしはその王子を、傍にあった刃物で刺しました。
そうすれば、もっともっと虐めてもらえると、思ったのです。死ぬまで虐めてもらえると、そう思ったのです。
わたくしのような穢れた淫乱なめす犬は、処刑されるのが当然です。どうぞ、お裁きを下さいませ。
 自白が終わり、ようやく枷を解かれた王妃は、よろめいて、後ろ向きに倒れ掛かった。
王の腕が、それを抱き取った。
女は、誰の手で詮議され、誰によって鞭打たれていたのかも、自分が誰の胸に抱きとめられているのかも、
分ってはいないようだった。虚ろな目をしたままの王妃を、王は揺さぶった。
「これが、お前の望みか。死をもって、余から逃げることが」
 その問いに応えるように、王妃は王の腕からかよわく逃れた。王は王妃を睨みつけた。
異教徒の妃は、ふらつく足取りで、地下室から逃げ出そうとまでした。
しかし、その脚では逃れられるはずもなく、数歩も歩かぬうちに、王妃は、屈強な宦官たちに
取り囲まれ、取り押さえられてしまった。
「王さま……」
 三人の宦官の手により、石床の上に引き据えられた王妃は、王を探し求めた。
聖堂の中で、神の祭壇に膝をついて祈りを上げた時と同じひたむきさで、女は、目の前に立っている
男の姿を探していた。
 ふたたび、女は王の腕に弱々しく、すがりついてきた。
しかしやはり、何にすがっているのか、分っていないようであった。
王妃は王の胸の中で、なおも左右を見回し、幼子のように啜り泣き、その姿を求めた。
女は、こんこんと小さく咳き込んだ。
尋問に立ち会っていた宦官医師たちが王に言上した。
「地下室の湿気が王妃さまには合わぬようで、時折、あのようなお咳を」
 それは王も、最近気がついて、気をつけていたことだった。何らかのかたちで
身体に障碍がある者は、常人よりも、ひ弱いものである。
宦官たちは、妃に滋養や薬を与えることで、辛うじて悪化をくいとめていたようだった。
「王妃さまが、死刑におなりあそばすならば、転地の必要もございますまいが」
「おとなしくお裁きを受けます。何でも言うことをききます」
 王の腕の中で、妃ははらはらと涙を流した。
「どんな、どんな淫芸でもいたします」
 地下室の床で、女は、”卑しい異教徒のめす犬”の体位をとった。
異教徒はその体位のまま、怯えた目で、目の前の王を見上げ、宦官たちの影を見回した。
いつもの慰めが何も与えられないと知ると、王妃は、さらに惨めに哀願した。
「あの方のお求めになることは、何でもいたします」
 女は神を求めず、王の名を呼び、王の姿を探していた。王その人に、すがりながら。
「そのとおりでございます。わたくしが王子さまを殺しました。お裁きを下さいませ。お望みどおりにいたします。
ご希望であらば、もう一度木馬にもお乗せ下さい。いやらしい格好をいたします。お道具を挿れて下さい。
可愛がって下さい。そうすれば、また、王さまに逢わせていただけますか。あの方に------」
「妃に下剤を呑ませ、胃を洗浄して、呑まされている薬をすべて洗い流せ」
 王は宦官にするどく命じた。


 本当でございます。
わたくしが王子さまに、それをねだったのです。わたくしが、王子さまを刺したのです。
その前にわたくしから王子さまを誘惑して、この脚を開き、お情けをいただきました。
わたくしの方からすすんで王子さまを奥に導き、隅々まで可愛がっていただきました。
 わたくしに死を賜って下さい。
穢れたこの身は、これ以上、王さまのお傍にお仕えするには、相応しくありません。
異教徒の女は、貴方さまには相応しくありません。
他の殿方を通してしまったわたくしは、もう貴方さまにはお仕えできません。
信仰も貞操もなくした女が、どうして生きていかれましょう。殺して下さい。殺して下さい。
 王子さま、王子さま。
お止め下さい。牢に入ってきてはいけません。
もうこのようなことはお止め下さい。
わたくしはここで、王をお待ちしているのです。あの方だけを、お待ちしているのです。
これ以上わたくしを辱めないで下さい。この身もこの心も、あのお方のものです。
そうです、この天地にたった一人の、あの残酷で、お寂しい方のものです。
王子さま、お赦し下さい。お願いです、お願いです。
 女、たかが異教徒の性奴隷のくせに、逆らうか。
誰がお前を父上の妃と認めているものか。
みろ、貞淑に振舞ってみせたとて、少し嬲られただけで、こうして尻を濡らして悦んでいるではないか。
お前のように賤しい女が、父王に相応しいと思うのか。
相手は誰でもいいのだろう。父上の留守中にも、宦官たちにこれをさせているのだろう。
どんなに首をふっても、お前のからだが正直に答えているのが分らないか。
逆らった奴隷には、お仕置きが必要だな。
脚を拡げろ。いやらしく、ひくついているぞ。ほらほら、これはどうだ。

「”うさぎ”。淫薬を呑め」

 苦痛にかすんだ視界の中で、兄王子が弟王子の首筋に、鋭利な刃物を突き刺していた。
弟王子が動かなくなると、王子は木馬から女を降ろした。
 木馬から解放された女が激痛に身を折り、陸揚げされた魚のようにはねて暴れる暇すら、王子は
女に与えなかった。
床に落とした女に薬を与え、股を押し広げると、王子は、痛めつけられていた女の性器の匂いをかいだ。
「いい臭いだぞ」
 漏らした尿と、いたぶられて強要された淫水が混じり合っているそこは、熱を帯びていた。
王子は滾りたった己の一物を、その女の膣に固く押し込んだ。
異母弟を殺害した直後の王子は、昂ぶりのままに異常な目つきをしており、獣のように行為をいそいだ。
「どうだ女。王妃であるお前が、父の子に犯される気分は」
 白く平らな女の腹と、責め具をつけられたままの小ぶりの乳房が、王子の眼下に揺れていた。
「少しでも身を恥じる心があるなら、二度と父上には顔向けできぬはずだ。気持ちがいいか。
ずっとこうしてやりたかった。弟が生意気にも止め立てしなければ、父上の女奴隷だろうが、最初から
こうしてやりたかった。お前を悦ばせてやるぞ」
 木馬責めを受けていた女は、降ろされてもまだ、恐怖と苦痛に全身が凍えて、麻痺したままだった。
上体を縛られた女を木馬の脚に凭れさせるようにして、あぐらをかいた膝の上に乗せ、女の腰を支えて
怒張したものをあてがうと、王子は昂奮のままに、女をはげしく貫いた。
「呑ませた薬は効いているな。その薬は、少々のことでは解毒できないからそう思え。
男なら誰でもこうして咥え込む、破廉恥な、けがらわしい、賤しい女め。虐められて悦ぶ、肉奴隷め」
 死んだようになっている女を突き上げ、王子は女のやわらかな白い胸をもみしだき、
女の小さな耳に、熱っぽく、脅しの言葉を囁いた。
結合部分は熱をもち、淫薬の効果で女の流す白濁したものが、ずるりと淫靡な音を立てていた。
「いいか、こう言え、お前が弟王子を殺したと言え」
 王子は女の敏感な乳首をいたぶった。妃の乳首は勃起していた。
「見ろ、父上でなくとも感じているではないか。お前が弟を殺したのだ。お前が殺したのだ。
ずっと父上の傍にいたいか。それなら、そこに倒れている弟王子を、お前が殺したと言え。
父上は、お前を剥製にして、お前をいちばん悦ばせた淫具でこの穴を塞ぎ、淫乱な異教徒の
見本として、美しいお前を大広間に飾っておかれるぞ」
 小動物を解剖する時のように、王子の指は、女の陰核をえぐり、尻の穴にも、虫のようにもぐりこんだ。
 舌噛み防止に女の口に押し込んでいた張型が、床に転がったままになっていた。
王子はそれを床から拾い上げ、唾液で湿らせると、怒張したもので女の膣を満たしたまま、
男のかたちをしたその責具を、後ろから女の肛門に押しこみ、埋め込み始めた。
「父上からも、こうやって、調教されていたのだろう」
 ゆっくりと淫具を抜き差しして弄ってやると、二穴責めを受けた王妃は死ぬような声を放ち、背を痙攣させた。
女の尻に窮屈に突き立てた張型を、王子は巧みに、ねじるように埋め込んでは、引き上げた。
「さっきは木馬の上でいい格好だったぞ、女。泣いていないで、懇願してみろ。助けて欲しいと。
そうすれば、死んだ弟のことは事故だったと言ってやる。その代わり、いつもこうさせろ。
お前を王子宮に引き取って、専属の玩具にしてやる。首輪を与え、風呂でも奉仕させてやる、
足を舐めろ、何でもしろ。父上よりも、神よりも、あなた様がいちばんだと、四つん這いになって
道具を咥えた尻を動かして求めてみせろ」
 地下室にこもる異母弟の血の匂いの中、年長の王子は両目をぎらつかせ、哄笑した。
「それとも慈悲をかけて、このまま殺してやってもいいぞ。どうせお前は死刑になるのだ。
父上に仕込まれた淫技を尽くして、命乞いにせいぜい媚びてみろ。お前が弟王子を殺したのだ。
父上の女のくせに、その息子に抱かれて、こうして、いい声を上げているのだ。
恥知らずめ、相手は誰でもいいのだろう、異教徒のめす犬め、王を誘惑した淫乱な、いやらしい牝奴隷め。
お前を処刑する際には、両手首を切ったりせずに、息絶えるまで一晩でも二晩でも木馬の上に
放置してもらうよう、父上に頼んでやる」
 その三角木馬の影が、犯されている女の上に覆いかぶさっていた。
薬物で朦朧とした女の脳裡に、王子の声は繰り返し、毒々しく、滴った。
「父上に逢いたいか。それなら、弟王子を殺したと認めるのだ。そうすれば、父上は
お前に新しい罰を下さる。王に逢いたければ王子殺しの罪を認めるのだ。
詮議には何でも頷くのだ。さすれば、お前の卑しいこのからだを父上はもう一度だけ、
たっぷりと可愛がって下さる。そこの死体はお前が殺したのだ、王に逢いたければそう答えるのだ。
お前が殺したのだ。いいな」
 王子は、女が意識を失ってしまっても、なおも激しくゆさぶり続けた。


 後宮に、”うさぎ”と呼ばれる、異教徒の女がいた。
異教徒のままに、王の妃であった。
医療実験用のうさぎのように、片脚を引きずって歩き、走ることが出来なかった。
 異教徒の妃の居室は、何枚もの鉄扉に阻まれた、後宮内部の地下牢であった。
豪華な衣裳も、宝石も、異国から取り寄せたあらゆる贅も、そこにはなかった。
「どうやら、このまま牢獄で飼い殺しにされるおつもりのようだ」
「美しい女を見慣れた王の目には、変わった趣向のほうが、お気に召すのであろうか」
 廷臣たちは囁き交わしたが、彼らのうちの誰一人として、異教徒の妃の詳しいその後を知る者はいなかった。
 王の寵を独占している憎らしい王妃の姿を見てやろうと、後宮の女たちは、それからも牢獄の窓に
通いつめたが、地下牢は陰気に静まり返ったままで、王妃はもう二度と、窓の下にその姿を見せることはなかった。
 また、年長の王子と、王子を生んだ後宮の女が、姿を消した。
彼らは病死したと公には発表されたが、四肢を切断されて砂漠に捨てられたのを見た者と言う者もいた。
真相を知る者も、これまたついにいなかった。
 そのうちに、奇妙な噂がたった。
王がいくつか所有している豪奢な離宮の一つ、風と光が溢れている風光明媚な別邸に、
女がひとり、王に守られるようにして、匿われているというのである。
隠れすんでいる女は、王が訪れると、王の御座所に現れて、王の膝にすがり、王の命じるままに
きらびやかな衣を脱ぎ捨て、その美しいからだを、王にあずける。
 寵愛の賜物か、女はわずかな愛撫にも反応を示し、吐息をもらし、目を潤ませる。
華やかな紋様の織り込まれた敷布にその白いからだを横たえて、女は、王が与えるものを享受し、
全身をふるわせ、忘我の心地で、その慈しみに、目を閉じる。
 女は、祈るように、王の名をよぶ。
悦楽におしあげられる女は、声を上げ、幸せな、祈りを奉げるような満たされた顔をし、そして
王はそんな女を、またとないほどに、たっぷりと可愛がられる。
弓なりになった女のふるえる胸の先を、月光がくっきりと浮き立たせ、交歓のあかしはそうやって
人知れず、夜のうちに刻まれるのだという。
 その女は、片脚を引いており、走ることが出来ないのだと、伝え聞く。


[異教徒の妃・完]

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