ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。

少年王

■三幕


 ここから出たくはありませんかな、と神官長は言った。
「何を、何をなさいます」
 忽然と現れた神官長の姿に、ルデアは怯えて後ずさりした。
「誰か」
 助けを求めるルデアの悲鳴は弱々しいままに、恐怖で掠れて、途中で途切れた。
逃れようとする女の細腕を掴み、神官長はルデアを両腕に抱きすくめ、祈祷室へと
引きずっていった。回廊の片面には小さな祈祷室が並んでおり、そこは王が霊廟で
祈りを捧げている間は、立ち入りが禁じられていた。
 狭苦しい祈祷室の壁に背をつけてルデアが身を竦めるのへ、
「大きなお声を出されると、ここにイチジクの枝を入れますぞ」
 神官長は太い指でその股をわり、女のその部分を後ろから撫で上げた。
「王が神に祈りを捧げておられる間、われらはこうして、ゆっくりと二人きりで話せる」
 即位後、若き王は特別なはからいとして、奴隷ルデアを月に三度、後宮と宮殿の
間に建つ霊廟に連れ出した。
 先祖の霊と神に祈る儀式は王の義務であり、それは王ひとりで執り行われる。
先の王が闘病の末に崩御し、少年王が正式に王の位についてから、王はいつしか
その霊廟にルデアを伴うようになっていた。
「王は何をお考えなのでしょう。ルデアに女官の格好までさせて」
「まさか神聖な霊廟の中であの女奴隷と……」
「いくら何でも」
「しかしそれでは、ルデアを伴って外に控えさえておくのに、説明のつかぬこと」
 宮廷人たちがいくら盛んに噂をしても、王の行動の理由は誰にも不明のままだった。
「祈れ」
 王はルデアに言い渡した。
「その暗い顔はどうせ予に殺された親族のことを想っているのだ。郷里の北の国の
ことを想っているのだ。予を待つ間、ここで祈れ」
 北の国と南の国が崇める神は同じものだった。
 ルデアは王が祈祷室に入っている間、その室の囲む回廊の片隅に膝をついて、
滅ぼされた故国のことを想い、黙祷することになった。
 祈祷室から王が出てくると、きまってルデアの両頬には涙のあとがあった。
静かな光に身を打たせて祈る奴隷女は、おかしがたい聖性に包まれて、王の目を
しばしそこに留めさせるだけの美があった。
「それを見たいがために、王はそなたを霊廟に伴われるのであろうて。
心に哀しみを秘めた美しい女を後で犯すのは男の愉しみ」
 でっぷりと太った腹をルデアの臀部になすりつけるようにして、神官長は祈祷室の
扉を閉めた。
「この霊廟の中に入れるのは王が許可した者と、そして神官長であるわしだけだ」
 祈祷室は、大の男が両手を広げれば左右の壁に手がつくほどの小部屋だった。
神官長は無力なルデアに覆いかぶさり、小さなその耳にぶ厚い唇を近づけた。
大腿部をさまぐる神官長の手が股の間に入ろうとするのを、ルデアは両膝を
合わせることで阻もうとしたが、神官長の手が潜り込むほうがはやかった。
「ほれほれ、毎晩若い王に鍛えられているだけあって、からだは正直」
 女奴隷の陰部を撫で上げながら、神官長はよだれを垂らした。王子、とくぐもった
小さな声でルデアが助けを求めるのを、神官長は女の乳首をつねることで邪魔をした。
「即位式も結婚式もつつがなく終えられた王のことを、まだ昔のように王子王子と親しげに
呼んでおられるのか。王もそれをおゆるしになられているとな。ほほ、小鳥のような声。
あの厳しい王もそなたにだけは、お優しい」
 神官長の手は薄絹の上からルデアの肢体を這い回り、その衣の隙間を探った。
「時間がない。手短に言いますぞ。お声は出さぬようにな」
 女の股に手をしのばせ、神官長は指の間で小さなしこりを楽しみながら、
逃れられないようにルデアをいたぶる指先に力をこめた。女のやわらかな恥毛は
毎朝の検診の前に切りそろえられていた。
 狭い祈祷室に、神官長の荒い息がこもった。
「現行の王ではなく、王弟が王として立てば、そなたは解放される」
 ルデアは首を左右にふった。目に涙を滲ませたその横顔も美しいといったように、神官長は
喉の奥で笑った。張り詰めた白い乳房をもみながら神官長はさらにルデアを口説いた。
「今日のところはこれだけを考えて下さればよい。王女よ、あなたはまだお若い。
後宮のお外に出たくはありませぬかな。王が飽きればどうせそなたは棄てられるのだ。
東国から王妃を迎えた王は、遠からず、そなたを棄ててしまうのだぞ。その前に
身のふりようを考えるのだ。わしが考えて差し上げよう」
「ルデア」
 そこへ、若々しい王の声がした。
円柱回廊を抜けてくる青年王は、鞭のような声で、女奴隷の姿を探していた。
「ルデア。どこにいる」
 太ったからだに似合わぬ俊敏な動きで、神官長はさっと身を引いた。
「もし王に今のことを告げ口なさったら」
 頭髪をそり落とした神官長の顔が、若い女を脅して悪魔のようになった。
「そなたの下腹にまた、イチジクの枝を入れますぞ。医師団はこちらが買収しているのだ。
毎朝の検診の際に、そなたに懐妊の兆しありと虚偽をさせることくらい、たやすいこと
なのですぞ。考えるのだ。このままあの王の慰み者となって果てるか、それとも別荘つきの
わしの愛人となるか」
 イチジクの枝というくだりで、ルデアの目が恐怖にみひらかれるのを、神官は
満足そうに眺めた。
 神官は後ろを気にしつつ、ルデアの白い頬をひたひたと軽く叩いた。
「わしには分かっておりますぞ、分かって。そなたがあの王に心を寄せていることくらい。
あのように精悍な若者に日夜お腰の奥を可愛がられていては、それも仕方がないこと。
女の身が疼いてしまうのだろうて。王も、王子の頃から肌を合わせてきたそなたを結婚後も
格別に扱っているようだしな。だが精力的な王のことだ。これからも次々と新しい女に
寵を移していかれることだろう。そうなる前に、心を決めたほうがよろしいぞ。わしに協力して、
王の異母弟を支持するのだ。そなたがわしに奉仕するならば、その奉仕しだいでは
王のお命だけは奪わずにいてやってもよい」
 ルデアを回廊に放り出すと、神官長は音もなく、勝手知ったる霊廟の隠し通路を抜けて
走り去っていった。
「ルデア」
 柱の陰にうずくまっている女を見つけた王は、ずかずかとやって来た。
野生の獣のような、荒々しい動きこそは、繊細なルデアをふるえ上がらせるのには十分だった。
「ルデア。気分が悪いのか」
 逞しい両腕に女奴隷を抱え上げた王は、間近からルデアの顔をのぞきこんだ。
「どうした」
「王さまは、こちらかしら」
 不意にそこへ、華々しい、しかしどこかに刺々しい険を隠した若い女の声がした。
「王さま。どちらにいらっしゃるの」


 大使は、その日の業務を終えて、宮殿の自室から暑い庭へと出て行った。
 東国と南国の婚姻は、ひと月前、つつがなく盛大に執り行われた。
東国から出立した花嫁行列は、途中で南国の軍隊に出迎えられ、日が暮れても
その行列の末端が地平にまだ見えてはこない。その規模はいかなる戦行列をも超えていた。
 ありとあらゆる贅を極めた調度品、駿馬、奴隷。それらが一つ残らず南国の大門に
吸い込まれるには数週間を要し、それらは後続を繋げて、まだまだ現在も続いている。
 大使は東国の姫の付添い人として、花嫁行列に加わった。
女の多い鈍行の旅をようやく終えて、花嫁の一行は一旦は南国領のはずれの離宮で休息し、
それからあらためて宮殿へと向かい、それにも三日の日数がかけられた。
 世界中の花を集めたのかと思われるほど、都の行程に敷き詰められた花びら。それは
色ごとに美しい文様を描き、宮殿までの道を彩り、王の花嫁を祝い、飾った。
 沿道に出た人々ははるばるやって来た東国の花嫁をひとめ拝まんと列をなし、花嫁の
輿は覆いをかけたままであることを知りながらも、首をのばし、目を凝らし、そして過ぎる行列に
街が埋まるほどにも祝賀の花びらを惜しみなく投げかけた。
 王の即位式が終わったばかりではあったが、王は挙式を優先して即位式を簡略化
したので、事実上、この結婚式が即位式の祝いも兼ねていた。
「王、万歳」
「王妃さま、万歳」
 割れんばかりの歓声の中、王妃の輿は宮殿の大門をくぐり、壮麗な南国宮殿へと入っていった。
その模様は、末代までの語り草となり、歌にもなった。
 ひと月前のその様子を思い返しながら、大使は緑の庭を散策した。
白い羽根の孔雀がのんびりと前を横切った。こたびの大使は王妃の相談役としての
任務を帯びて帰国命令が出るまで南の国に駐在しているのであったが、それを任じられた
時の浮き立つような気持の中には、四年前の、後宮での一夜のことがあった。
 お姫さまを抱けるなど。夢のようだったな。
 もちろん、顔には出さない。
「大使。ひさしぶりだ。近くへ」
 若い王と王妃が初対面の挨拶を終え、ひとまず王妃が別処へと案内された後、
午後になってようやく大使の口上の番になった。
 王の間において、大使は、しきたりどおり祝いを述べ、東国の王からの言上を読み上げた。
「王よ。まずはご即位おめでとうございます」
「大使。そなたとは数年ぶりだ」
「は」
 許しを得て王座の前にまで進み出、王を見上げた大使は、感動に打たれた。
 数年前も十分にカリスマと貫禄のあった王子であったが、四年という月日は十代の少年を
男らしく激変させていた。
 背ばかりが先に伸びていたからだに武人らしい引き締まった筋肉がつき、しなやかな
からだには重々しさが備わり、日に焼けた浅黒い顔には威厳がいや増して、気高い狼のよう。
戦に明け暮れる日々を象徴するかのような刀傷がうっすらとその浅黒い肌に浮き出ているのを、
王は厚い胸板を開く豪奢な衣裳から隠すことなく、誇りの勲章として見せつけていた。
かつての王子は、惚れ惚れするような青年王となって、大使の前にあった。
「王。ご立派になられました」
 大使は感動を素直に口にした。
 しかし大使のその喜びを、迎合もせず冷やかしもしない、王の酷薄な笑みこそが
大使にこの若き王がどういった若者であったかを、たちどころに思い出させた。
大使の視界は、知らず知らず、王座の隣りにある柱をとらえていた。そこには宴の間と同じ
大理石の白い柱があるばかりだった。
 王は金のサンダルをはいた脚を組み替えた。
「そなたはわが王妃の相談役として、しばらくこの国に残るのである。こたびの祝賀も
楽しんでくれるよう」
 さまざまな挨拶言上を終え、ようやく大使は王の許を退出した。
その間にも、王座の両脇に居並ぶ廷臣たちの間に、見慣れぬ若い顔を見つけて
大使はそれを脳裡に刻み込んでおいた。
 早めに父親の地位を継いだ地方貴族だろうか。あばただらけの不器量な顔をした、
ずんぐりした若者だった。


「まあ、大使さま!」
 帰国後も折にふれては手紙を書き、手紙には高価で趣味の良い扇や香水などの
贈り物を添え、世辞を並べ、君に逢いたい愛してると書き綴ってきたのが功を奏し、
女官は大使を忘れてはいなかった。
「逢いたかった」
 もちろん、その間も互いに別の相手と恋のたわむれは重ねていたが、そこは
男も女も了承済である。
「ルデア?」
 久方ぶりに肌を重ねた女官は、くしゃくしゃになった髪の間から、目を上げた。
「あ……やっぱり王妃さまは気になさって」
「いやいや。王妃さまとて、愛人のあまたおられた父王と同じく、南の王も後宮に
たくさんの女をお持ちであることはお分かりだ。後宮の女は出身問わず、王の奴隷。
したがって女の中でも最も高貴なご身分である王妃さまは、そのことについては
何ら気にはされてはおられない」
「わらわの夫となる方は後宮をお持ちなのか。ふうん」
 ぎらっと目を光らせて扇を握り締めた少女王妃の浮かべた表情には、嫉妬と、憎悪と、
残忍の萌芽があったように思う。が、それも王妃と後宮が隔てられている限りは
何の心配もないことだ。
 はだかで天井を仰いだ大使の目に、月光が揺れた。
すすり泣く可憐な女の声が大使の耳を小波のように浸した。この四年間、忘れられ
なかった王女の声だった。両腕を王子の手に抑えられたルデアは、恥ずかしい処を
男たちに弄られながら、下口からも涙を溢れさせていた。
 (おゆるしを……おゆるしを)
「ええ、ルデアはまだ生きて後宮におりますわ」
 ルデアについて、女官は知っていることを教えてくれた。
「王のご寵愛は少し常軌を逸しているようですわ。そりゃあお美しいお姫さまでは
ありますけれど。何だか、わたし、怖くて」
「怖い」
「王の執着ぶりが。もしや、本当の愛なのではないかと思われるほどに」
 大使が後宮に招かれた一夜のことを知らぬ女官は、かいがいしく水煙管を
用意してそれを大使の口に含ませた。
「下世話なところでは、よほどあれが良いのではないかという噂ですわ。名器なのかしら」
「ははあ」
「あのように清楚なお姫さまでも、わたし達のようなことをするのですわねえ」
「乳房と尻をふってかい」
「殿方のあれをお口に咥えて、おしゃぶりを」
「宴の席で一度見かけたことがある。以来、ルデアが宮殿に出てくることはあった?」
「いいえ。あれ以来ぱったりと」
 大使の口から煙管を取り上げ、女官はそれを自分の口に持っていった。
「何でもあの時は、堕胎後ルデアの元気がないので、王が宴を楽しませようとしたそうですわ」

 
 ちっとも魅力のない女だったわ。
 王妃の宮に戻ってくるなり、開口いちばん、王妃は憎々しげに吐き捨てた。
「どんな女かと思えば、やせっぽちのめす犬ではないの」
「もちろんでございますとも」
 側近の侍女は頷きで応えた。
 侍女は王妃の姉妹のような女だった。顔立ちに表情というものが乏しく、陰湿で、
弱いものをいたぶる時のみ笑みが浮かぶという、生まれつき性質のゆがんだ女だった。
「王妃さま、ちっともご心配はいりませんわ。あれはいってみれば、犬か猫といった女です」
「王は新婚の合間にも足しげく後宮にお渡りではないか」
「まあ、王妃さま」
 ほほほと汚い声で侍女は笑ってみせた。
「ルデアとかいうその女奴隷。王には愛されていないそうですわ。王のご悋気を
ぶつける相手として後宮に飼われているだけなのです。王の寵を受ける女も様々ですわ。
あのような女も数のうち。ですから、この国で一番高貴な女人である王妃さまは
何のご心配もいりませんわ」
 しかし女二人はその女をもう知っていた。
 霊廟の中で見かけたルデアは、月の光で磨かれたように美しかった。
「性奴隷だからといって----」
「王妃さま」
 すばやく侍女は知りえた情報で王妃をなだめた。
「ルデアは、石女なのです」
「なんですって」
「一度、堕胎をされております。それ以来懐妊したことがないといいますから、
石女なのです」
「堕胎を。王の子かい」
「ええ、ええ。しかももとは高貴な王女でありながら、この国の女奴隷として、もっとも卑しい
方法での堕胎措置を受けたそうですわ。大勢の男たちの面前で」
 侍女の目が陰湿な悦びに細くなった。
「奴隷の堕胎には、鉄製のイチジクの枝を使うそうです。ルデアはそうされたのです。
王や医師たちの前ではだかにされ、天井から吊るされまして、水桶を足の下に置かれましてね。
両足首には重しをつけられて、身動きできぬように股をはしたなく開かれて」
「それで」
「下孔からイチジクの枝で子宮を突かれましたの。何度も何度も、胎児を切り刻むために。
残滓を引っかくようにして掻爬される頃には、苦悶のあまりルデアは白目をむき、口からは
血の泡を吹いていたとか。もちろん水桶の水は真っ赤ですわ」
「麻酔なしで?」
「事前にたっぷり麻薬をふくまされたそうですが、だからといって痛みが消えるわけでは。
激痛に暴れて錘をつけられた足首が折れそうになったため、重しを外して宦官が
男の力で女の脚を抑えていたとか。かえるのように左右に脚を持ち上げられて、これ以上は
ないというほど不恰好な開脚体位で」
「お前、それを誰からお聞きだい。大使かい」
「いえ。神官長さまより……」
 侍女が言葉を濁したのは、たっぷりと金を積まれたからだった。
この数日のうちに、神官長はぬかりなく、王女の側近を手のうちに取り込んでいた。
「その時に死ねばよかったのに!」
 王妃は苛々と当り散らした。
「天井から吊るして開脚させ、下孔から鉄棒を入れて突くのだね。ぜひそれをもう一度
わらわの前であの女の身にしてやりたい」
「胎児下ろしを、でございますか?」
「王のお胤を孕んでいようといまいと、どうでもよい。身の程知らずにも王の精を呑んだ女を
わらわの手で罰してやるのだよ。イチジクの枝などまだ手ぬるい。灼熱の棒を突き入れて、
牝牛のように泣き叫ばせてやる」
「しかしルデアは後宮におりますので、王妃さまのお目の障りになることは今後もう
ありませぬことと思いますが」
「引きずり出してやるわ」
 扇で膝を叩き、王妃は細い目をいよいよ細くした。王妃は靴先で絨毯を踏みにじった。
「王もすぐにお分かり下さるわ。身の程知らずな女奴隷を苛んでやる愉しみを」
 扇が床に投げ出された。
「あああ、暑い国だこと」
 胸をはだけて、王妃は長椅子にひっくり返った。
「それくらいしかこの先愉しみがなさそうだから、せいぜいルデアをいたぶってやることに
したいものだわ。首尾よく王から譲り受けたら、あの者の爪を剥ぎ、乳首を切り落とし、
檻に入れてそこに置いておくつもり」
「それは、お楽しみでございますわね」
「『自慰をしてごらん』『はい王妃さま』。そうしつけてやるわ。もちろんイチジクの枝を使って
王女にそれをさせるのよ。どうしたの、もっとはやく、もっと奥に入れてごらん、この淫売」
「ほほほ、もとは王女でも、王妃さまの前では卑しい奴隷。それを思い知らせてやるべきですわね」
「退屈しのぎに傷口には塩水をかけてやるわ。何日も糞づまりにさせておいて、浣腸をしてやるわ。
『王妃さま、この卑しい奴隷の肛門にお浣腸を下さいませ』尻をふらせて哀れっぽくひいひいと
男たちの前で泣かせてやるわ」
「霊廟にもう出入りできぬとは残念ですわね。二度と立ち入り禁止ですって。
ちとわざとらしかったでしょうか。王はお怒りになると怖いから」
「まあいいわ。ルデアを見れたのだから」
 王妃は今朝方に見た美しい女の顔を脳裡で引き裂きながら、後宮のある方角を
窓の外の夜に睨んだ。王の腕の中にあった女奴隷は、王の腕にかよわくすがり、
そして畏れ多いといったように、王の胸にひっそりと包まれていた。
「調子にのってるのは今のうちよ。王より年増のくせに生意気な。叩き潰してやる」
 王妃はその薄い唇に残虐な笑みを浮かべた。
王のものとはまた違う、粘っこく、陰湿なものだった。


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