ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。

少年王

■六幕


 後宮にいるルデアの許に、王妃より贈り物があった。
「先日の宴で披露した芸の褒美とのことでございます」
 後宮に届けられたその包みは、王妃からのものということもあり
何の検閲もされぬまま、ルデアの許へと届けられた。
 細長いその箱を開けるなり、ルデアは恐怖の叫びを上げた。
箱の中にはびっしりと体表に棘と毛の生えた太った毛虫が詰まっており、
それらがうねうねとくねりながら、鉄のイチジクの棒を覆いつくしていたのだ。
『王の訪れがない夜は、毛虫つきのイチジクの枝で自慰すれば?』
 悪意と嘲笑を塗りこめた、そんな紙切れまで箱の底に入っていた。
 王妃は大使の詰問に知らぬ顔を通した。
「わらわがどうして後宮の奴隷に贈り物なぞするものか」
 王妃は顔をそむけて付け加えた。
「毒毛虫を送られるなど、やはり卑しい者は行いも卑しいのか、日ごろから
誰かの恨みを買っているとみえる。先日の宴の淫芸をみても分かるとおり
卑しい女はどこまでも卑しく、毛虫が似合いということではないかしら。おお嫌」
 この事件は犯人不明のまま内々に処理されたが、王も、大使も、
仕掛けた者が誰かを知らぬわけではなかった。


 宮殿の廊下を歩いていた大使は、先日よりずっと気になっていた人物の
姿を見かけて、そちらへと歩いていった。
「これは。王弟さま」
 自分から声をかけた。
 王とは二、三歳違いということだから、御年十八かそこらのはずだ。
兄王とは似てもにつかぬずんぐりむっくりした王弟は、現れた大使に驚いて
小さな目をしばたたいた。粘土でこしらえたようなその顔をひと目みれば、
誰にでもこの王弟は崩御した先王の血筋などではないと知れる。神官長が
先王の病の床に押しかけて、もうろくした先王から無理やり実子の証文を
とりつけたというだけあって、一説には、この若者は王后がとある貴族との間に
もうけた不実の果実にして、その貴族とは、他でもない神官長の縁戚なのだという
噂まで囁かれていた。
 風采のうだつのあがらなさ、愚鈍そうなその目つきは、人間よりも蟲か家畜か
何かのようであり、知能といったものがないようにも見える王子を前に、大使は
さらりと礼をとった。
「王子。ご挨拶をいたします」
 大使は付け加えた。
「王妃の相談役として逗留をゆるされております、東国の大使めにございます」
「あ、ああそうか。そうだったな」
 ぐずぐずと王弟はようやく答えた。
 覇気ある兄と比べて、いちいちが何とも鈍く、そこにどろりとした不快なものを
無意識のうちに漂わせている気持ちの悪い若者だった。
「王弟さまはこのような処で、何をなさっておいででしたか」
 そう言いながら、大使の目はすばやく王弟が背中に隠したものをとらえていた。
王弟に半裸にされた幼女奴隷が、王弟の後ろでしくしく泣いていた。
王弟は、幼女好みということらしい。
「行け」
 さすがに決まりが悪かったとみえて、王弟は泣いている幼女を押しやって
立ち去らせた。引き下げられた衣をかきよせながら幼女が去っていくと、大使は
軽やかな口調でさわやかに告げた。
「王弟さまは、女遊びのご趣味がよろしい」
 世辞を装った厭味である。
「お邪魔をいたしました。ではこれにて」
「大使」
 意外なことに、王弟は小太りしたからだを揺すりながら大使を追いかけてきた。
大使は立ち止まった。
「はい。王弟さま、私に何か御用でしょうか」
「その。このたびは兄上のために、東国から美しい女奴隷たちを新たに大勢
届けさせて、後宮に入れるそうだな」
「ええ」
 大使は笑顔をつくった。
「これは気がつきませんで。即刻国許に早馬を出し、もう一度、今度は
王弟さまの為の、とびきり美しい幼女たちをとり揃え、箱に詰めて王弟さまの許へ
送らせましょう。幼女入りの箱にかけるリボンの色は何色がよろしゅうございますか」
 大使の皮肉も通じておらぬようで、王弟は首をふった。
「いや、そうではない」
「では、趣向をかえて美少年なぞはいかがですか」
「いやその」
 如才なく、大使は愚鈍な若者を促した。
「王弟さま。ここは二人きり。何なりとご要望をお申し付け下さい。両国の
友好のためにわたくしはこの国に残留しているのです。王弟さまのために
便宜をはかるのは、私の仕事のうちでございます」
「では」
 胸の前でいじいじと指をすり合わせて、王弟はようやく勇気を振り絞った。
「では大使。僕はルデアに似た女が欲しいのだ」
「ルデア」
「そう」
「ルデアというと、宴の席で晒し者にされていた、王の昔の戦利品ですか。
放尿の芸をしていた」
「そう、それだ」
 こくこくと王弟は頷いた。
「あのように美しい女は滅多にはおらぬだろうが、ルデアに似たのが欲しい」
「ルデアは成人した女ですが」
「よいのだ、それで」
 王弟はぱちぱちと陰気にその目を瞬かせて、口許をゆるめた。
「大人の女は生意気だし威圧感があって嫌いだが、あの女奴隷は別だ。
初々しくて、少女のようであったから」
「左様で。まことに」
「後宮に何年も囚われている女とはとても思えぬほどに清らかであった」
「……」
「もとは王女ときいて、気品があることにも頷けた。ああいう女奴隷に奉仕
させている兄上がうらやましい。大使はどう思う?」
「そこはまったく同感です」
「無理か?」
「尽力はつくします。が、期待はしていただかぬほうがよろしいかと」
「そうだな。ルデアのようないい品は滅多にはあるまいからな」
 王弟はまるで恋する男のように、深い深いため息をついた。
そのため息は少々深すぎた。そのことを大使はひそかに留意しておいた。
神官長と王弟。この双方がルデアに執心しており、なおかつこの王弟は
兄王に嫉みを抱いている。神官長がもしもよからぬことを思いついた場合、
もっとも操りやすそうな王族の男子が、ルデアに関心を寄せている。
これは、注意すべきことだった。
「ルデアならば、僕のことを軽んじたり笑ったりはせずに従順なおもちゃに
なってくれそうだしさあ」
 脂ぎったあばた面で、王弟は未練たらしく、まだ何かをぶつぶつ云っていた。
「あの放尿の芸、ルデアを高く抱え上げさせて、下からのぞき見てみたい」
 王弟はずんぐりした背中を向けて、大使の前から立ち去った。


 熱せられた焼鏝が赤く、不気味に燃え上がっていた。
王妃は地下の拷問室を見回した。床に落ちた肉片や血を洗い流す水の音。
しゅうしゅうと湯気を立てている熱鉄板。南の国のそれは国許のそれと比べて
見慣れない道具も多く、拷問の見学は興味深かった。
「いかがですか。王妃さま」
 黒ずくめの拷問吏たちが地下室の石壁に長い影を引き、各所で鞭や
怖ろしげな器具をふるうたびに、犠牲者の絶叫が響き渡った。
 鉄の椅子に縛り付けられた若い女が、乳房を板の間で潰されていた。
その様子を眺めている王妃に話しかけたのは、王妃を地下へ招いた神官長だった。
「気に入らぬ奴隷がおりましたら、罰する場として、どうぞお使いになって下さい。
足りぬ責め道具があればすぐに作らせます」
 片隅では、四肢を吊るされた女に焼き鏝と熱い蝋があてられていた。
「楽しいこと」
 王妃は上機嫌で壁にかけられた責め具を調べていった。
「東国では見たことがないものもある。試してみたいわ」
 神官長はほくほくと王妃の機嫌をとった。
「地下室の音はぜったいに外には漏れません。特別室もございます。こちらへ」
 神官長は通路を抜けて、次なる小部屋へと順番に王妃を案内した。
そこには大部屋にあったものとはまた違う種類の拘束具や、複雑なかたちの
責め具が揃えられていた。
「狭い檻の中でじっくりいたぶるほうが、興がのるわ」
 王妃は小部屋の方が気に入ったようであった。石壁から垂れ下がっている
錆ついた拘束具を王妃は足先で転がした。
「ここに、あの女を閉じ込めてやりたい」
「あの女とは?」
 王妃はそれには答えず、据わった目つきで鉄具の表面をさすった。
地底の底のようなその牢獄の石壁には、過去の犠牲者の悲鳴と苦悶が黒々と
染み付いているようだった。
 神官長は「木馬もございます」と、様々な木馬があることを王妃に示唆した。
「鉄製のものよりは、木製のほうが、長く責めてやることが出来ます。
処刑を目的としないのならば、頂点の角が丸みを帯びているもののほうが
女囚をたっぷり責め立てるのに具合がよい」
「そうね」
 こともなげに、王妃は応えた。
「木馬をゆすってやる時の、女どものあの絶叫ときたら」
「女体にとって、繊細なところを責められるよりも過酷な道具というだけあって
効果は絶大。惜しむらくは、あまり長時間は乗せてはやれぬところですかな。
せいぜい半時間」
 王妃は頷いた。
「その後で、脚を切断する羽目になった女たちも多かったわ」
「責めてやりたいのは、もしや、王の寵を独り占めしている後宮の女奴隷の
ことですかな、王妃さま」
 若い王妃の嗜好をよく心得て、神官長は王妃を次の間に案内した。
「ここは……?」
 その室は他と違って、地下なのにまぶしかった。地上と同じだけの光量が
地下室に注ぎ込むようになっており、室全体が明るかった。
「後宮行きの奴隷の処置室です。王妃さま」
 室の中央には、粗末な板で出来た開脚寝台があった。
神官長は王妃の耳に囁いた。
「後宮に納められる奴隷どもの処女検診は、ここでいたします。性器の形状を
克明に書きとめられて、下の毛の処理も」
「そお。では、あの女も」
 王妃はひややかにその名を吐いた。
「ルデアもかい。神官長」
「おお、もちろんでございます」
 神官長は得々と頷いた。
粗末な木で出来た開脚台は、一人の処置が終わるごとに取り替えられる。
そこにあるのは、まだ真新しい板だった。
「肌を見せたことのない深窓の姫君でございましたから、肌着を切り取られただけで
失神してしまわれて。あのお美しい肢体をここに縛りつけたことは忘れられるものでは
ありません。雪のようにまっさらな処女姫さまでございました」
「わらわも見物したかった」
 女を縛りつける台を見つめ、心底無念そうに王妃は悔やんだ。
「男たちの手で初物を弄り回されているルデアを見たかった。
医師たちの手で破瓜措置を受けたあの女はどんな様子だったの」
「それは」
 神官長は口ごもった。
 それを行ったのは、宦官医師ではなく、地下室に現れた王自身であった。
まだ少年であった王子は前触れもなく突然この室におりてきて、そして自身によって
それを果たしたが、それは異例にして先例のないことであり、神官長はそのことを
王妃に告げるべきか迷った。
「それはもう。大変な嘆かれようで」
 神官は適当なことを言いつつ、思い出したことを言い添えた。
「奴隷女の受ける辱めの中でも、ルデア王女は、占領された北の国の民人を
助けてくれるようにと、我々に懇願しておられました」
 

 王は怒っていた。
 王の怒りに、ルデアは震え上がり、後退りしようとして脚をもつれさせて
床に倒れた。ルデアは壁際に逃れながら王を仰いだ。
「王子、王子おゆるし下さい」
 ルデアの腕を掴んで、王はルデアを引きずり起こした。
王の力は怒りのあまり、女の身体を反対側へ突き飛ばしていた。
「ルデア。これは何だ」
 衣を剥ぎ取った女奴隷の膚を見下ろす王の声は、ひえびえと冷えていた。
「まあ、それは面白いこと」
 地下の拷問室から宮殿に戻った王妃は、神官長が耳打ちする話に
目を輝かせた。
「あの霊廟があの女奴隷を懲らしめる為に、そのように使えるとは」
 王妃はおおいにその話に興味を示した。
「淫売だけあって、場所を選ばずなのね。王がお祈りをしている神聖な
霊廟の中ですら、男の肉棹を尻の穴に咥えたがるとは。その秘密の逢引は
もう長く続いているの」
「王に危害を加えるぞと脅したのがきいて、回を追うごとにルデアは
従順に従うように。こちらの思うが侭です」
「やはり、王だけでは我慢できない女だったのだね」
 王妃は得たりと頷いた。
「王が居ないところで、本性があらわれたのだわ」
「今日はわざと少し傷つけておきましたからな。今頃ルデアは王から
手酷い折檻を受けているはずです」
 神官長はあやしく笑った。そこには、か弱い女を追い詰めて苛む、男の悦びがあった。
「ルデアが罰せられれば、少しは王妃さまのご悋気も癒えるかと思い……」
「ルデアが王に告げ口したりはしないの?」
「ご心配なく」
 いつものように祈祷室からもとの回廊へとルデアを追いたてながら、神官長は
ルデアを脅すことを忘れなかった。
「よいな、陰部の傷痕を見てもし王がご不審に思ったなら、こう言うのだぞ。
王のいない間、自慰をしておりましたと」
 先刻まで神官長のいいようにされていた女奴隷は、力なく放心していた。
俯いてしまったルデアの横顔に、神官長はさらに念をおした。
「なに、そなたは美しい。こうしてこのようにと、王の目の前で自慰をしてみせればよい。
寵愛の奴隷が懸命にしてみせる芸をご覧になれば、王の怒りもほどけようぞ」
 神官長の命令に従わねば王子の命が危ない。繰返し刷り込まれたそればかりが
哀れなこの女の頭を占めていた。
 最初こそ遠慮していた神官長であったが、狭苦しい場所で好きなように
出来る美しい王女と二人きりとあっては、女を性玩具にするのも遠慮をなくし、
ルデアを追いつめていくうちに、なかなか思うようにはならぬあの若く生意気な王を、
この南の国を、おのれの足許においたような錯覚にとらわれて、好色な神官長は
ますます王が寵愛する女奴隷を蹂躙し、好き放題に扱うようになっていた。
「よいですかな、王女」
 神官長はすでに何度もなぶってびくびくと過敏になっている女の陰部から
持参の張型を抜き取ると、ぶ厚い唇を直接つけた。
「王の宦官はわしが買収しておりますからな。王女がわしの言いつけを
守ったかどうか、すぐに分かりまするぞ」
 舌先で潤んだそこをかき分け、神官長は女奴隷に言い聞かせた。
壁に身を押し付けられたルデアは苦しげに喘いだ。
「王弟さまを王座につければ、そなたは自由なのですぞ。
もうその計画はすっかり出来上がっておる。王のお命は、わしの考え次第」
「どうして……」
 狭い密室に差し込む天窓の薄あかりに、半裸の女の肌が弱々しく
浮き上がった。そのまるい尻は神官長のねちこい指技と繰り返される
異物の挿入に耐え切れず、蜜をしたたらせ、床を濡らしていた。
息の詰まった掠れた声でルデアは背後の男に訊いた。
「どうして、あの方を殺めようとなさるの……?」
「殺すとはまだ言っておらん」
 神官長は女の細腰をつかんで引き寄せると、次なる道具を取り出して、
女の肛門に埋めこみ始めた。
「いい格好だぞ、わしの奴隷ルデア」
 女の悲鳴に構わず、神官長はそれをねじこんでいった。
「何を嫌がる。王からもこの穴は時々可愛がられているのだろうて。
ほれほれ、動かすぞ」
 神官長は淫棒を女の尻に突き刺しては引き抜くことを繰り返した。
膝をがくがくとふるわせている女奴隷の乳房の先から汗がこぼれ落ちた。
「そなたがこうしてわしに従順ならば、王の命は保障してやろう」

 神官長の話を聞き終えた王妃は、にんまりと笑った。
「そう。では、あの女奴隷を従わせるには、鞭よりも、さもなくば王を殺すぞと
脅してやるのが一番のようね」
「王妃さま、今の話は内密に」
「分かっています。神官長には礼をせねば。思い上がった女奴隷を
わらわの代わりに懲らしめてくれているのだから」
「なに、ほんの役得」
 調子よく、神官長は相好をくずした。
「何しろあの女奴隷はよいからだをしておりますからな。ルデアのほうも
抗いながらもまんざらではない反応を」
「ところで神官長、その話、嘘から出た真か」
 王妃は言い出した。神官長は目を逸らしたが、王妃は笑いながら追求をかけた。
「ごまかさずともよい……なかなか思うようには動かぬ王を廃し、王弟殿を
王座に据えるおつもりか」
「いえいえ滅相もない。それはルデアを脅す作り話で」
「神官長」
 王妃は冷たい笑顔で、神官長を見返した。王妃のその顔には、権力に妄執
する者に特有の、歪んだ期待が浮かび上がっていた。
「わらわは、この国が欲しい」
「……」
「わらわを見返ることのない夫なぞ不要。また、夫をそうさせた魔女には
たんと礼をしてやらねばならぬ」
 当初こそ王妃は凛々しい王に魅せられ、その妻であることの魅力に
酔ったものの、それだけにその王の心が別の女の上にあると知った時の
王妃の恨みと憎悪は深かった。
「王の身に何かあれば、それは何もかもルデアが悪いのだ。その時には
この国に禍をもたらした北の魔女として、しおらしい顔をしたあの女の正体を
徹底的に暴き、はだかにして引きずりまわしてやる」
 王がお亡くなりになればそれが叶うな、と独り言のように王妃は
神官長に目くばせをして呟いた。


 王は組み敷いた女の喉を締め上げた。ほとんど陽にあたらぬ女の白い肌と
太陽の下にその身を晒してきた青年王の裸体は結合しても植物と獣のように
隔たって見えた。
 若い王のからだは華奢な女を床に倒し、その両手は別の生き物のように
女の首に絡みついた。女は王の怒りにすくみあがり、目をみひらくばかりだった。
 揺さぶりあげられるままに、ルデアは苦しくもがいた。
「王子……」
 王に睨まれながら、ルデアは王がつけた覚えのない傷痕の言い訳を強いられた。
「あれは、自分で……」
 王は怒りのままに、女のからだをがくがくと揺さぶりたてた。しだいに女は
喉の奥で泣くだけになり、息も出来ぬようになった。
 粉々に壊れそうな氷の花。
 いつもならば優しいといえぬまでも、様子を見ながらすすめてくれる行為を
今宵の王は猛然と突き進めた。ルデアは悲鳴を上げた。
「おゆるしを」
「ゆるしてやるとも」
 いつ触れてもひんやりとした女の肌が男の熱に炙られるようにしてぼうっと
火照ってくるのを、王はルデアをひっくり返して後ろから突き上げることでさらに
煽り立てた。力任せの行いにルデアは喘ぐことすら出来なくなった。
 すすり泣き、絶え絶えになっている女奴隷の片脚を肩に担ぎ上げ、その顎を
つかんで王は命じた。
「云ってみろ。いつものように」
 しゃくりあげながら、ルデアは長年かけて仕込まれたことを口にした。
熱い杭を深く打たれたまま、身動きもならず、女は圧し掛かっている若い王に
目を閉じながらいつもの言葉を捧げた。
「聴こえぬ」
「……存分になさって下さいませ。お気の済むまで、存分になさって下さいませ」
 男の下になっている女の白いからだは、苦しい体位を強いられていた。
女の目じりから涙がこぼれた。
「身も心も捧げます。わたくしは、あなた様の奴隷です」
 道具を使うのは女の身体によくないときいてから、王は極力ルデアには
それを用いぬようにしていた。
 王は明け方までルデアをしごくだけしごいた。もどり汁を垂らしたまま放心して
ひくひくと痙攣している傷ついた女の上に衣を投げかけると、王は無言でルデアの
室を出て行った。


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