ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。

少年王

■八幕


 南の国にしばし訪れる、はげしい雷雨が午後にあった。
鉄格子のはまった窓に顔を寄せて、ルデアは滝のように流れ落ちる
雨を見ていた。草木を打つ雨音と空を引き裂く雷は、大地を叩くだけ叩くと
すぐに止む。その後は涼しい風が吹き、束の間、暑さがやわらぐのだ。
 格子の隙間から手を差し入れて、ルデアは指先を雨に打たせた。
はじける雨粒はルデアの手を冷やし、腕を濡らした。
横殴りの雨と雷の光の合間に、庭の木々が引きちぎれそうに傾いて
揺れており、花の幾つかは土に落ちていた。
 後宮に入れられてからのルデアの日々は、嵐に翻弄されるあの花の
ようなものだった。それでいいとルデアは想う。国が負けた以上、古来より
王族の女がどういった扱いを受けるものか、南の国に連れて来られた時から、
それは定まっていたことなのだ。
「生け捕りにされるくらいならば、ご自害を!」
 混乱の中、女官に促されてルーティアは奥の間へ逃げた。
その途中、乱入してきた占領軍に捕まってしまった。王族の者たちが
順番に首を斬られている処刑場の雪の中で意識を失い、気がつけば、
灼熱の国へ移送されてここにいた。
 雷鳴が轟き、青紫色の光が折れ曲がりながら王宮近くに落ちた。
ルデアはびくりとして窓から身を引いた。雷がまた落ちた。
 ルデアは顔の前に手をかざしてみた。うす蒼いひかりに縁取られた
その手は、肉づきの薄いままに、そのまま透けて消えてしまいそうに見えた。
 遣い棄てられる奴隷の短命さは誰でも知っている。
 だから、耐えてこれたのだともいえる。
 後宮に納められた当初、王子のルデアへの扱いは、まさに家畜に
対するそれだったのだ。
「お前にルデアという名を与える」
 首輪をつけられた時も、年下の少年王の目の前で宦官たちに
細部を検分されている時も、きっと遠からず親族の後を追って
死ねるだろうというかすかな期待だけが、あの雪の日の処刑場の
記憶と重なって、いつもルデアの胸の底にゆるやかにたゆたっていた。
辱めは一時のことで、そのうちすぐに厭きられて、処分してもらえるのだろうと。
 熱いのか苦しいのか分からぬ情交の最中、ルデアは王子の胸の中で
実際にそう口走ることさえあった。おゆるし下さい。死にそうです。
なぜか少年はそのことをとりわけ喜ぶようで、さらにそうされるのも、
いつものことだった。
 調教する。王子は最初にそう言った。お前にはそれが必要だと。
しだいにルデアは王子のふるう鞭の音に身も心も凍りつき、飼いならされた
家畜のように、仕込まれた芸を少年に捧げるようになっていた。
日が経つにつれ、何かを考える力はルデアの中から失われ、意思も消え、
恥じらいこそは残っていたものの、いつ終わるとも知れぬ陵辱に、抗うよりは
流されるままになっていた。
 少年王のお気に入りの玩具。
 それがルデアと名のつけられた、後宮奴隷の役割だった。

 合わぬ気候と無理がたたって、ルデアは何度も熱を出した。
ある日、起き上がれぬほどの高熱を発して、ルデアは寝込んだ。
熱の苦しみと薬の合間にうつらうつらと漂ううちに、ルデアはふと、室の隅に
こちらを睨むようにして立っている王子がいることに気がついた。
 どうして、そこにおられるのだろう。
 夢の続きかと思った。
 今宵は使い物にならぬことは、宦官の口から王子に伝わっているはずだ。
何よりも、女から王子に病がうつるようなことがあってはならぬ。
それであるはずなのに、隔離されたルデアの病室に、王子はその夜現れた。
 王子は二言三言、宦官医師とルデアの病状について言葉を交わすと、
灯りの影からルデアの顔を覗き込んできた。
「心細いのか」
 そう声をかけられて、はじめて、ルデアは自分が泣いていることに気がついた。
夢に見ていたのは、氷の花のことだった。それが今になって溶け出した。
胸にせまるのは、あの時のあの接吻のことばかりだった。
 少年王は手づからルデアの首輪をはずし、女の呼吸が楽になるようにした。
 それを嬉しいと想う淡い気持ちを、ルデアは自らやはり封印しなければならなかった。
彼は故国を滅ぼした少年であり、親族を殺した敵であり、そして自分は、いつか
飽きて棄てられるであろう、人質の奴隷人形にしかすぎなかった。
 ルデアは王子の手が嬉しかった。うち消してもうち消しても、どうにも
ならぬところで、慕わしかった。生まれの身分のせいか、この上なく
乱暴で支配的ではあったけれど、ずっと直接的な方法でルデアの心の扉を
不器用に叩き続けていた少年王のことがいとしかった。ルデアの繊細な心は
それに盲目ではいられず、少年王を見るなり、泣き出した。
 少年は弱っている女奴隷にぼそりと云った。もうお前に鞭は使わぬ。
それから、そう言ったこと自体が悔しかったのか、少年王は不機嫌に付け加えた。
「そのたびに寝込まれてはかなわぬからな」
 ルデアの懐妊が発覚したのは、それからほどなくのことだった。


 雷は去ったが、雨脚はまだ強かった。
四角く区切られた窓から見上げる描き殴りのような雨模様は、そのまま今の
ルデアと王の関係のようだった。
 かたりと音がして、扉の覗き窓が開き、見張りの宦官が異常がないかを
確認して、また小窓を閉ざした。日に何度となく行われることであったが、
王の留守中は特に念入りだった。
 西の国との小競り合いを制圧するために王は軍を引き連れて不在中であり、
王の遠征中、後宮の女たちは朝夕に、王の戦勝を祈ることになっていた。
 強い雨音を聴きながら、ルデアはその場に膝をつき、王の無事を祈った。
そうすると、霊廟でのことが一度に思い出されてきて、ルデアは氷り水に
漬けられたように突っ伏して身を震わせた。
 王は遠征直前にルデアを伴って霊廟を訪れ、戦の勝利を祈願した。
まさかと思われたその日にも、神官長と王弟は現れ、ルデアを祈祷室に
引き立てて行ったのだ。

「おゆるし下さい。今日ばかりは、おゆるし下さい」
 ルデアは抗った。戦いに出る王の前では、きれいな身でいたかった。
神官長と王弟はそんなルデアから衣を剥ぎ取り、押し伏せた。
薄暗い祈祷室の中に、聖母の股裂き刑のような、無残な光景がひろがった。
「可愛い、可愛い、ルデアちゃん」
 王弟はルデアの脚の間を弄りはじめた。
「誰よりも美しいお前に、新しいおもちゃを持ってきたよ」
 幼児がえりした王弟は、奇妙な形状をした淫棒を取り出して、ルデアの
顔の近くでその先端を自分の口に入れて舐め回した。
「今日は常になく奴隷が興奮しておりますな」
「王女ちゃんがおとなしくなるように、いまからこれを下のお口に挿れて
あげるから待っててね」
 口枷を嵌められ、縄目がつかぬように薄絹を使って身体のあちこちを
縛られている女奴隷に笑いかけると、王弟はたっぷりと唾液をつけて
濡らしたものをルデアの膣口に無理やりに押し込みはじめた。
「王弟さま、どうぞご存分に」
「いい格好だよ、ルデアちゃん」
 神官長は自由を奪われたルデアの肛門の穴に指を出し入れした。
女の股の間から飛び出ている淫棒を、うっとりと王弟は眺めた。
「ほらほら、こうやっていじめてもらうことがルデアちゃんは好きだよね。
どうしたの、そんなに首をふって。濡れた音が立ってきたよ。
こんなに太い棒がお前に入るかなと思ったけど、入ったね」
「王弟さまの拡張調教は順調ですな。こちらもお試しになっては」
 神官長は女に尻を上げさせて、もう一つの孔を指し示した。
王弟は躊躇した。
「ええー、浣腸もさせてないのに」
「なんのなんの。道具をお使いになればよろしいのです。兄王さまの
最愛の性奴隷を、あなたさまが王のお留守中にご征服なさるのです」
 神官長と王弟はルデアのからだをひっくり返し、四つん這いにさせた。
女体を挟んで前後に男が回ると、狭い祈祷室はそれだけでいっぱいになった。
「女体遊びほど、面白いものはこの世にはありませぬ。ましてや、これほどに
美しく従順な女ならば」
 神官長はルデアから口枷を外すと、張型の一つを口に押し込み、しゃぶらせた。
「奴隷、しっかり舌使いを学ぶのだ」
「入れるよ、お尻の穴に」
 ルデアは悲鳴を上げた。王弟の手で直腸に進入してきた責め具は
細い炎のようにルデアの感覚を脳天まで焼いた。
「わあ、入った入った。ルデアちゃんのお尻から、いやらしい棒が突き出てる。
どんなにきれいな女でも、やはりお前は卑しい性奴隷なんだね。さっきまで
自分で舐めていたものを突っ込まれているのに、こんないやらしい肛虐にも
尻をふるわせて悦ぶのだから」
 王弟は棒を入れたり出したりしてルデアを呻かせた。王弟は肛門責めを
すっかり気に入ったようだった。ルデアは強いられる快感に腰をふるわせた。
祈祷室という檻の中で責められている女体は、むしりとられる花びらのようだった。
「ああ、もどかしいな。早くルデアちゃんを別所に閉じ込めて、あんなことや
こんなことをさせてみたい」
 王弟は這い蹲るようにして、ルデアの性器に脂ぎった鼻をすりつけ、舌を這わせた。
「おしっこの匂いがする。ルデアちゃんを手に入れたら監禁して、いつも僕の
見ている前で排泄の芸をさせるんだ」
 王弟は喘いでいる女奴隷の顔を上げさせると、唇を重ね、無理やりに
舌をからめていった。神官長は後ろに回り、責具をいそがしく動かして
ルデアの膣を異物で満たしながら王弟に言った。
「王妃さまもこちらのルデアをご所望になっておられます」
「嫌だよ。あの人、何だか怖いもの」
 赤子のようにルデアの乳首をちゅうちゅうと吸っていた王弟は、唇を離すと
白くきれいなルデアの乳房を両手で揉みながら、嫌そうに顔をゆがめた。
「王妃はお気に入りの女官といつも地下室に閉じこもっては、目をつけた
奴隷を拷問にかけて殺しているそうじゃないか。いつかの宴席の時でも
ルデアちゃんを見る目が普通じゃなかったよ。あんな女にこの王女を渡したら
どんな酷い目にあわされるか。せっかくこんなにきれいな子なのに」
「芸を仕込み、長く生かして見世物にしたいとの仰せでしたぞ」
「それならいいけどさあ……うわっ」
 神官長が責具を引き抜くと同時に淫水がぴしゃっと床に飛び散った。
王弟はびっくりして、ぐったりしているルデアの乳房を握りしめた。
「失禁した」
「王弟さま、これが噴水の芸ですぞ。もう一度ご覧にいれましょう」
「兄上が都に不在になるのは嬉しいけど、そうなったらしばらく霊廟にも来ない。
ルデアちゃんと会えなくなるのは、寂しいなあ」
「ルデア、いつものように膝をついて王のご無事と勝利を祈るのだ」
「ちゃんと祈るんだよ。真剣に祈ってるかどうか、今から調べてあげるから」
 はだかのルデアにそうさせておいて、神官長と王弟はふたたび奴隷の
肉体を弄りはじめた。


「すごい雨でしたわね」
 大使のもとに遊びに来ていた女官は、ようやく雨の上がった空を見上げて
明るい笑みを浮かべた。その二人の顔色が一変したのは、土砂降りの
雨をぬって雨上がりの王宮に駆け込んできた急使のもたらした報だった。
「王が戦地で行方不明になられただと!?」
「御自ら斥候に出られて、そのまま未帰還とあいなりましてございます!」
 どういうことだという叫びが、廷臣たちの間から悲鳴のようにあがった。
「まさか、捕らえられたのか」
「いえ。さいわいにしてその報告はありません。が、西の国の偵察に
出向かれた王の消息は隊ごとかき消え、本陣には誰一人戻ってはいないとのこと」
「馬鹿な」
「いつのことなのだそれは」
「二日前になります。探索が不発に終わり、本国にもお知らせするべきだと」
 二日前。ということは、密使が国にたどり着くまでの時間を足して、
王が敵地で行方不明となってから、もう一週間は経っているということだ。
「なんたることだ」
「うろたえるな。これは極秘にすべきことだ。
王の安否がはっきりするまではうかつに騒ぎ立ててはならぬ」
 その間、東の国の大使はとりいそぎ残留の将軍たちの中から懇意の者を
選んで顔を出し、必要あらば東国も支援する用意があると申し出ておいた。
「天災に巻き込まれたのではないのか」
「土砂崩れなど」
「その筋も調べ上げております。現地は快晴つづき。王が斥候に出られた
道筋には目立った難所はなく、交戦の形跡も皆無であります」
「……」
 廷臣たちは顔を見合わせた。これは、どう考えるべきなのか。
「……お若い王のことだ。何かお考えがあって味方を欺き、大胆な別行動を
秘密裏のうちにとられているのかも」
「ありうるが、軍を混乱させてまで隠密行動をとるとは不自然では」
「待て。おのおのがた、続報を待つのだ」
 不安に突き落とされた宮廷人たちの紛糾をよそに、大使は胸騒ぎを覚えて
王妃宮へと直行した。王妃は、不在だった。
「王妃さまは、どちらに」
 厳しく問い尋ね回っても、まともに答えられるものはいなかった。
脅しつけてようやく得た回答は、王妃は、大使にも内緒で昨日から
神官長の別荘に招かれて不在であるとの返答だった。
 王と王妃の夫婦仲最近めだって疎遠であり、それと反比例するように
王妃は神官長を頼って親睦を深めている。大使はぞっとした。
 王の行方不明。もしやこれは王妃がつれなき夫を憎み、亡き者にせんと、
絶大な権力を持つ神官長と手を組んで仕組んだことではないのか。
 笑い飛ばそうとしたが、顔がひきつった。
次に大使はもう一つの重大な懸念に襲われて、とび上がった。
大使の様子を心配して追いかけてきた女官が驚いて大使の袖をつかんだ。
「どうなさって。顔色が真っ青よ」
「ルデア王女は」
 大使はそこらの人間を突き飛ばすようにしながら、後宮に向かって走った。
「後宮のルデア王女は、ご無事か」
 大使が後宮の門の向こうに出した遣いからの返事は、雨雲が去った
夜になっても、返っては来なかった。

 こんなことをして、もしも王にばれたら、わたしどもの命はありません。
ですが成功すれば多額の報酬を、そして断れば、あなたさまの代わりに
全員が殺されるのです。
 雨が上がるのを待っていたかのように、室に押し入ってきた後宮の庭男たちは、
そう断ってルデアに襲い掛かり、薬をしみ込ませた布をルデアの顔に押し当てた。

 ご褒美をおあずけにされた野良犬。
 牢獄に集った庭男たちは、そんな顔と目つきで、地下に落とされた
ルデアの顔や全身を食い入るような目つきで眺めていた。
後宮にいる男は一人残らず去勢された宦官であったが、彼らはそれにより
女への興味が失われたわけではない。
 夜毎、王族が後宮を訪れるたびに、その一部始終を好色な老女よりももっと
詳細に、どろどろとした欲望を付き合わせるようにして詰め所で陰気に語るのが
宦官というものである。その後宮づとめの宦官の中でも、庭男となれば、下の下、
たまに王より気まぐれに与えられる使い捨ての女のほかは、彼らはめったに
女を間近に見ることもできなかった。
 そんな男たちの前に、ひっそりと無力に横たわっているのは、後宮で
もっとも頻繁に名があがり、もっとも神秘に包まれ、彼らの好奇と劣情を
もっともかき立ててきた女奴隷だった。
 誰かが、地下牢へ入ってきた。
「この女を、壁に吊るしなさい」
 命令しなれた女の声がした。
「----目をおあけ」
 下顎に扇があてられ、気を失っていたルデアは、霞む目をあけた。
 牢獄の片隅には格子のはまった暖炉があり、ごうごうと燃えている炎が
壁に吊るされたルデアの姿を薄く彩っていた。
「わらわが誰かお分かりだね」
 目の前にあるのは、険のきつい、若い王妃の顔だった。
ルデアは怯えた。鎖枷がふるえた音を立てた。王妃は嗤った。
「ここはね、地底の拷問室なのだよ。泣き喚いても、外に悲鳴が漏れることはない」
 王妃の扇の先がルデアの喉もとから白い乳房にさがり、乳首の上でとまった。
 神官長の別荘を訪れているはずの王妃は、ひそかに地下に潜んで、
獲物がはこばれてくるのをここで待っていたのだった。
 壁の鎖に両手首を、横にした棒に両足首を固定されているルデアは、
欲望に濁った男たちの目と陰険な王妃の目つきに、青褪めてふるえ上がった。
その様子に王妃は笑った。常に残忍な薄笑いを隠しているような声音だった。
 王妃は扇でルデアの乳首をぴしりと上から叩いた。鎖がじゃらりと音を立てた。
「いつも王から、こうして可愛がられているのだろう。卑しい女にはそれなりの
扱いというものがある。王は、わらわに優しかったぞ。格別にお優しくしてくれた。
お前のような卑しい奴隷とは扱いが違う」
 扱いが違う、というところに王妃は力をこめた。
 実際には王は王妃宮にやって来るなり、王妃の媚態には目もくれず、
下半身にだけに用があるといわんばかりの手早い行為で終えて帰っていたのだ。
それはルデアに対して王がいつもかけている時間と手間の、何十分の一だったか。
「よくお聞き」
 王妃は扇でルデアのかたちのよい乳房を下から持ち上げるようにした。
王妃の両眼はますます陰険なものを底に光らせて細まった。
「王が、戦地でご病気になられたのだ」
 王妃はわざとそう言った。
 奴隷がその美しい顔を不安と心配で曇らせるのを、心底、気に食わなさそうに
王妃はじろりと眺めた。
 奴隷の乳房をなぶっていた王妃の扇は女のたいらな腹を辿り、
ルデアの脚の付け根へとおり、その隙間へと潜り込んだ。
 王妃は突然、後ろに控えている下男たちに厳しい声で命じた。
「家畜に衣などいらない。剥ぎ取っておしまい」
 鉄はさみを手にした男たちは大きな刃をじゃきじゃきと動かして、奴隷の衣を
切り取りだした。冷たい金具をルデアの肌に押し付けるようにして、下男たちは
拘束されたルデアから熱心に衣を剥ぎ取り、下着も切り取って、はだかにしてしまった。
「これでいいわ」
 ごてごてと着飾った醜い王妃と、身を覆うものは何ひとつない女奴隷の美の
対比が残酷に牢獄の中に浮き上がった。王に愛されてきたルデアの白い肌は
絹のようにすべらかで、少女のように清かった。王妃の目が嫉妬に燃えた。
「王は立居でお前を犯すこともお好みだったそうね。こうして」
 ルデアの両脚がびくりと反応した。王妃は閉ざされているルデアの陰部に
扇をもっていった。半端に閉じた格好で拘束されているルデアの両足首の
拘束具が恐怖にふるえて、がちゃがちゃと鳴った。
「動くとお前の乳首を鉄はさみで切り取ってやるよ」
 ルデアは首をふった。王妃は扇を女の秘処へともぐりこませた。
地下の牢獄に女の呻きが響いた。下男の持った鉄はさみの刃の間で
小さな乳首がおののくように震え、美しい女の顔が苦悶の泣き顔に変わるのを、
王妃は憎しみをこめて見据えた。
「わらわにお前の道具をすべてお見せ」
 王妃は身をかがめると、異物を感じて緊張している女の粘膜を指で
開いて調べにかかった。
「性奴隷のわりには使い心地が悪いと王はお前にご不満だった。
性奴隷ルデアは生意気だと仰せであった。再調教を受けるべきところを
免除されておいて、お前は王を裏切ったのだ。わらわはすっかり神官長から
話を聞いているのだよ。ここが王のものを咥えていた穴だね」
「アッ……」
「卑しい女らしく、咥えるものは、何でもいいようね」
 王妃はルデアの奥深くに扇を押し込んで突き上げた。ルデアの中から
引き抜かれた王妃の扇には血がついていた。
 奴隷の乳房に汚れた扇をなすりつけて不浄物を拭うと、「淫乱女め」、王妃は
宦官たちの目を意識しながら、さらに男たちの欲情を煽るように、ルデアの乳首を
扇で引っぱたいてみせた。
「王がご病気なのは、お前の奉仕精神が足りなかったせいだ」
 それを聴いたルデアは痛みと恐怖にふるえながら顔を上げ、美しい目をみひらいた。
王妃は口端を吊り上げた。
「お前は霊廟でのお祈りを、ふしだらなことにかまけておろそかにしてきたそうじゃない。
神官長と王弟さまの口からお前の淫乱ぶりはすっかり聞いているのだ。ことこまかにね。
神聖な場において、お前は犬のように四つん這いになって、尻をふっていたそうだね。
そこで、わらわは戦地におわす王のご快癒を祈って、淫乱なお前を調教しなおす
ことにしたのだ」
 そこへ、慌しい足音を立てて誰かが地下へ降りてきた。
王妃は顎をそらして牢獄の入り口を振り返った。神官長が転がるようにして
薄暗い牢獄の中に踏み込んできた。神官長は声を低めて必死になって王妃に囁いた。
「王妃さま、王のご不在中に、なにをされるおつもりか」
「これは神官長」 
 ルデアと王妃を見比べて慌てている神官長に向かって、王妃は胸をはった。
王妃は憎々しげに壁に架けられている美しい女体を指し示し、意味深な目くばせを
神官長に送った。
「この身の程知らずな女奴隷を、そこにいる宦官どもにあずけて性奴隷として鍛えなおし、
ご満足がいくように調教した上で、慰みものとしてお引き渡しいたしますわ。
滑稽な見世物にして徹底的に利用してやるのです」
 王妃は神官長に近づき、すでに情欲に濁った目つきでルデアをちらちらと
見つめている神官長の耳に囁いた。
「狂った女を従わせるには、ちょうどよい口実。これでもう誰にも遠慮はいらぬ。
万が一王が戦地からご無事にお戻りになるのならば、その時は疫病に
罹ったとでも言って、宦官どもと口裏を合わせ、女が死んだことにすればよいのです」
 悪知恵にかけては冴え渡る陰険な王妃は、神官長に向かってつめたく微笑んだ。
「王は戦地でご病気なのです。よいですわね」
 

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