ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。
決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。


[雄鹿の館]・X





 『雄鹿の館』に通うようになって数ヶ月経った、在る晩。
はじめてギョームは、館の他の客人たちと引き合わされた。
仮面でもつけるのかと思えば、そのまま通され、ギョームは肉玩具を吟味し、輪姦を
嗜む四人の男たちの一員となった。
 初日に用意されたのは、系統としては金髪のイヴォンヌ似の、美しい女であった。
 ギョームの順番は最後であったが、それはギョームへの歓迎の意であった。
男たちに散々に犯された女は、ぐったりとなっており、ギョームが女の陰部に肉棹の先を
あてがっただけでも、陰部から淫汁を零して、よがり泣いた。
 『雄鹿の館』とは、男たちを雄として振舞わせ、メスを支配し、心ゆくまで蹂躙することが
可能な、別天地であった。そしてそれには荒々しい獣性だけでなく、余裕も求められた。
もしも館の外で彼らが顔を合わせたとしても、彼らは礼儀正しく天候がらみの挨拶を交わし、
遠国の情勢について意見を交わし、そしてまた、礼儀正しく、すれ違うだけであった。
そこには奇妙な、秩序と知性、抑制すらあった。
 客人たちは『雄鹿の館』にいる女たちの飼い主であり、この場合の飼い主とは、
女の肉体を征服し、芸を仕込み、しつけ、可愛がってやる者のことであった。
彼らにはそれぞれお気に入りの肉玩具があったが、それは独占されるものではなく、必要に
応じて貸し出され、また、共に愉しむべきものだった。

 シモーヌの調教も、引き続き行われた。
今ではシモーヌの浣腸も、ギョームの手で行っていた。
肉玩具は口が利けないので排泄の許しを懇願させる楽しみはないが、その代わりギョームは
浣腸器で大量の湯を注入したシモーヌの肛門に栓を埋め、そのままで口淫させた。
おぼつかない舌使いであったシモーヌも、腹部を開放されたいばかりに、懸命に舌と唇を
駆使するようになり、真っ青な顔でぶるぶる震えながら、口をすぼめ、奉仕するのだった。
 肛門拡張の成果は、ギョーム自ら確かめることも、他の男に渡して、その者の肉棹で
確かめてもらうこともあった。
 肛門を試されるシモーヌは、そのしっとりとした白い尻を男たちの目に晒されながら、
その間ずっと細眉を寄せて、ギョームにしがみついていた。
 括約筋が切れては元も子もない。
ギョームは男たちに、はげしく動かさずに、慎重にすることを求めたが、それはかえって
シモーヌに長い時間の苦しみを与えることを、計算の上であった。
 女の肛門を貫く男の太い肉棒は、奇妙な生き物のように、シモーヌの中に出たり
入ったりしていた。
「具合はいかがです」
「きついが、以前よりは、使いやすい」
「この女を、もっと鳴かせてみたいな」
 男たちはそうした。
 膣に淫具を埋め込まれたシモーヌは、ふたたび肛虐が再開された時には、いっそうの
悦びをみせるようになった。
「このシモーヌに、鞭を使うことは?」
「いや。あれは女の肌を損なうので、わたしは好かない」
 シモーヌの背をさすって宥めてやりながら、ギョームの手はシモーヌの乳首を摘んでいた。
薄紅色の胸の先は、男の愛撫に敏感であった。
「肌に傷がつかない鞭もある」
 男の一人が、それを見せた。
「肝心なのは、辱めてやることで、痛みのあまりに無感覚にさせることではない」
 鞭の先は平らになっており、強く振った時のしなりも弱かった。
「これなら、たいして傷は残らない。扇で打つほどの力加減が可能だ」
「シモーヌを鞭打つか否か、この肉玩具の調教権を持っている君が決めるといい」
 シモーヌに肉棹を突き立てている男が、抜き差しを強めながら、ギョームに決定を求めた。
指先に触れるシモーヌの、硬くしこっている乳首をビー玉のように弾いた。
シモーヌの膣には、いびつな突起を繋げた淫具がぎっちりと埋め込まれて、直腸に
振動を受けるたびに中で連動してうねり、シモーヌを泣かせ、喘がせていた。
 そのシモーヌが、哀願するように、ギョームを仰いだ。鞭が怖いのだ。
肉玩具の乳首を指先で転がしながら、ギョームはシモーヌの、細腰から尻へと続く、陶器のように
白い背中を見つめた。尻を強く突かれたシモーヌの口から、切れるような悲鳴が零れる。
(シモーヌ。オーレリアを知っているな。この館で、お前はオーレリアを見たことがあるだろう)
(答えろ、シモーヌ)
(シモーヌ。お前はやはり、オーレリアを知っているのだな。そうだな)
「シモーヌには、まだ従順さが足りぬようだ」
 きつい二穴責めにシモーヌがびくびくと身をそらす。男たちがそれを抑えつける。
「鞭を試してもいい」
 ギョームは同意した。

 ギョームには女を鞭打つ嗜好がなかったが、他の男たちは違った。
下僕たちが二人がかりで運んできたのは、外套かけのような、一本の直立した棒器具であった。
その器具には、『小鳥の宿木』という名がついていた。
垂直の鉄棒の上部には、留め金をはめる鉄環がついており、そして下部には、何かを
嵌め込むための調整穴が、段階的に表面に穿たれていた。
シモーヌを犯した後、彼らは、シモーヌを引き起こし、両手を縛ってこちら向きに器具から吊り下げた。
てっきり背中を鞭打つものだと思っていたギョームが見ている前で、彼らはシモーヌの両足首を
ひとつに束ねてくくり、さらにその紐を棒の基底部に繋げて、暴れてもあまり脚が大きく
動かせないようにした。
それから彼らはシモーヌの股間に、棒を挟ませ、腰よりも少し上になるような位置に調整した後、
調節穴に差し込んで固く留め、吊りの高さも整えた。
それにより、鉄柱から木の枝のように横に突き出した棒の上に、吊り下げられた体重ごと
女の陰部が乗ることになった。
 シモーヌは局部にくいこむその激痛にのけぞった。
あまり性器を痛めぬように棒には革張りがされてあったが、女の四肢はたちまち痛みに硬直した。
そこへ、男たちの鞭が振り下ろされた。
「失礼いたします。ギョーム様。週末は、いかがなさいますか」
 執事の声に、はっとなり、ギョームは書棚に本を戻した。
自宅の書斎であった。
「いつもと同じだ。友人の別邸へ」
 週末ごとに通う『雄鹿の館』のことを、執事にはそう説明してある。
もちろん執事は、迎えに来る黒い馬車を知っており、主には外に愛人でも出来たのだろうと
思っているはずだ。
 執事は盆の上に乗せた数通の手紙をギョームに差し出した。
「お手紙が届いております」
 執事を下がらせて、手紙を開封してみると、どれもこれも、なじみの娼館のおかみたちからだった。
『雄鹿の館』に通うようになって、すっかり疎遠になっているので、催促しているのでる。
 『小鳥の宿木』に架けられて、鞭打たれていたシモーヌ。
 男たちは肉玩具の過敏な乳首をばねつきの責具で挟んでやり、それを誰が鞭で
打ち落とすかを交代で競った。
胸の先を狙われ続けたシモーヌは乳首を弾かれるたびに、枝の上でのけぞった。
途中で男たちは女の股を責めていた横枝を取り去り、今度は前に突き出していたその棒を、柱の
下の方に横向きに取り付け、その棒に、シモーヌの足首をそれぞれ革帯で結わえ付けた。
 肉玩具は、脚を開かれた格好で、器具から吊り下げられることとなった。
準備が終わると、男たちはシモーヌの小さな陰核をむき出しにさせ、肉芽にゆらゆらと揺れる
錘つきの責具をつけた。乳首にもそうされた。
「鳴け」
 軽く挟んでいるだけの責具は叩くとすぐに落ちたが、それは何度でも繰り返された。
 上から下から、至近距離から胸と股間を叩かれて泣き叫んでいたシモーヌは、最後には吊られて
揺れているだけとなり、『小鳥の宿木』から降ろしてやると、からだに責具をつけたまま、小鳥は
ギョームの腕の中で気を失ってしまった。


 鞭打たれたシモーヌのからだは、夜になっても、熱かった。
(オーレリアという女を知らないか。此処にいるはずだ。答えろ、シモーヌ)
 あれから、何度、同じ質問をシモーヌに訊いたことか。
しかし、シモーヌはこの問いにだけは、曖昧な反応をするのだった。それでいて
シモーヌはオーレリアという名が出るたびに、びくりと身を震わせる。
(やはりシモーヌは、オーレリアを知っているのだ)
 思いついて、備え付けの便箋とペンを用意し、シモーヌに文字で答えさせようと試みたが、
シモーヌには、それも出来なかった。事前に暗示療法でも受けているか、または
クラオン侯に罰せられるのが怖いのか。
 それが分かっていても、
(シモーヌ、どうした答えろ)
 いたぶりの理由、それとも、ギョーム自身にも分からない何かの衝動によって、ギョームは
いつもそれをシモーヌの白い肌に追い求めた。
「シモーヌ」
 ギョームは、『小鳥の宿木』に架けられていた肉玩具の股間を舌で慰め、鞭打たれていた
その乳首を唇に含み、シモーヌをすすり泣かせた。
「お前は、オーレリアを見たことがあるはずだ。それは、どこの部屋だった」
 裏返しにさせて、尻を引き寄せ、怒張したものをあてがう。
教えたとおりの体位で、従順に伏せ、尻を差し出しているシモーヌに、硬いものを埋めてゆく。
ギョームは重みをかけて、おのれを打ち込んだ。何かの怒りに駆られて、深く突く。
シモーヌが前のめりに崩れ落ちる。
 それからギョームはゆっくりと、拡張調教を始める。
肉棹を押し込み、引き抜くたびに、内部のおうとつが呼び止めるような快い刺激を与えてくる。
たちまちのうちに、シモーヌの声が掠れ上がる。
「今日、ほかの男たちに嬲られていた時も、お前はこうして悦んでいたな」
 男のものでぎっちりと埋められた狭穴は、うっすらと血を滲ませていた。
貫かれている女の悲鳴には、そこもまたメスの性感帯であることを示す、爛れた悲哀が
混じりはじめていた。
「これが欲しかったのだろう」
 ギョームはシモーヌの細腰を掴むと、女の悲鳴を愉しみながら、動きを速めた。
包み込んでくるような膣とは違い、肛虐性交は、ひたすら女の直腸を使っての自慰に似ている。
ギョームはオーレリアのことをシモーヌのからだに尋ね、そのことでシモーヌを繰り返し苛んだ。
まるで、シモーヌを愛する口実のように。


 数ヶ月ぶりに、その呼び鈴を鳴らした。
「まあ、いらっしゃいませ。ギョーム様。ご予約を頂戴してどんなに嬉しかったことか。
近頃とんとお顔を見せては下さいませんでしたのね」
 高級娼館のおかみは、両手を広げて、ギョームの来訪を喜んだ。
化粧の許されていない『雄鹿の館』の肉玩具の素肌を見慣れていたせいか、娼婦たちの
白粉のにおいや紅の色どりが、懐かしく、蠱惑的に、淫靡に感じられた。
 高級な内装に、性器の臭いを連想させる麝香の香りが染み付いたように漂っているのが、
いかにも女を買う場所に似つかわしい。
「ジョゼフィーヌ、ギョーム様がお越し下さいましたよ」
 この娼館でのなじみの女は、ジョゼフィーヌといった。
高級官僚たちの相手もつとめる妖艶な美女で、人気に鼻をかけて少し思い上がったような
ところがあるのが、ギョームの気に入ったものである。
 ジョゼフィーヌは久方ぶりのギョームの訪れを機嫌よく迎えて、今宵は自尊心にかけても
男心を繋ぎとめようというのか、日ごろの高慢もかなぐり捨てて、常にも増して奉仕に励んだ。
 整った女の顔が悦楽に歪み、赤い唇が、淫声を紡ぐ。
 こういった差異に男たちはジョゼフィーヌに入れあげるのであったが、もちろん
ジョゼフィーヌはそれも計算の上で男の上で乱れてみせるのであり、どこかの皇妃にも似た
面差しに、豊かな巻き毛をふり乱して、ジョゼフィーヌは男のものを含んだ尻を揺さぶり、動かした。
 さすがは、この道の女である。
巧みな性技に、ギョームはたちまち快楽の大波に溺れ、麝香の香りの中に時間を忘れた。
 その夜のジョゼフィーヌは、『特別』に、手首まで入れさせてくれた。
(いったい、何人の『特別』がいることやら)
 潤滑液をたっぷりと使い、女の股の中心に慎重に手を入れてゆく。
さすがにきついのか、高慢なジョゼフィーヌの顔が引きゆがんでいる。
気位の高い女がかえるのような惨めな姿で、金で買われたからだを晒し、男の手首を
呑み込まされている様子に、ギョームは女王を犯しているかのような錯覚を覚えた。
 内部で拳を少しだけ動かしてやると、ジョゼフィーヌは枕に身を倒して、はげしく喘いだ。
ゆっくりと手を引き抜き、かたちのいい女の脚を拡げさせ、通常の性交にうつる。
「いいわ、いいわ、もっと」
 ジョゼフィーヌはギョームの腰に脚を回して、淫らに腰を振り立てた。
 受身一方の『雄鹿の館』の女たちに比べれば、演技にしろ、本気にしろ、反応がいい。
おとなしいシモーヌを無理やりひらいて呻かせるのとはまた違う、手ごたえがあった。
(ジョゼフィーヌに比べれば、『雄鹿の館』の女たちは、おもちゃだな)
 シモーヌの淡い色とは違う、娼婦の茶色の乳首。
メスの図太さを伝えて、びんと立ち上がっているそれを、ギョームは乳房ごともみしだいた。
(シモーヌなど、見目は美しくとも言いなりになっているばかりの人形のようなものだ)
 耳底で、クラオン侯が笑っていた。
 ------だからこそ、肉玩具なのですよ。
 久方ぶりに十分に女を抱いた満足と共に、しかし、翌日になるとやはりギョームは
屋敷に迎えに来た黒い馬車に乗り込んだ。
 シモーヌの肉体が欲しいというのでも、加虐の悦びに遊びたいというのでもない。
クラオン侯の見ている前でシモーヌを膝に乗せ、乳首や陰部をいじってやる時の、
あの、ひくひくとした女の反応にある怯えのようなものを、ギョームは突き止めたかった。
そして女がすくみあがり、怯える時ほど、男たちの加虐心を呼び覚ますものはない。
 その繊細がとりわけ似合う美しいシモーヌは、しばし、恐怖と快感に引き裂かれ、
息を詰まらせるまでに、男たちに責められた。
 無抵抗にされるがままにひたすらそれに耐え、そして女の陰部はそれとは裏腹に
熱くぬるんでくるのであったが、ギョームがシモーヌの膝裏をとり、脚をかかげさせてそれを
男たちに見せてやると、肉玩具はギョームの首筋に顔を埋めるようにして、ひどく嘆き、淫液を
滲ませているそこが鑑賞される間、可憐に羞じ入るのだった。
 男たちは、シモーヌの溝や肉襞の形状を語り合い、皮を剥いた肉芽を触診してやった後で
その日の拡張を始める。
 一面に真珠の飾りがついた淫棒は、白濁した液ですっかり濡れぼそるまで、シモーヌの
膣を検診するのに使われて、それを洗うのもまた、シモーヌの陰部から強要される透明な
液体であり、肉玩具は泣きながら、いつまでも、その器官という器官を男たちに試され、
使われるのであった。
 館に足繁く通う理由のひとつには、ギョームがシモーヌを気に入っている限り、シモーヌは
さほどひどい目には遭わされぬのではないかという、甘い期待もあった。
 その予測は当たっていた。
ギョームが『雄鹿の館』の屋内玄関に降り立つと、ちょうど、顔なじみの男たちが噴水の前に
集っているところであった。
「君を待っていたのだ」
 男たちは、シモーヌを取り囲んでおり、二人の男が左右からシモーヌの腕を掴んでいた。
召使が着るような黒いドレスに身を包んだシモーヌは、青い顔をして目を伏せてふるえており、
その様子は、無力な少女のようであった。
 彼らはギョームに、鹿の上の剥製を指し示した。
「この女は、あの剥製に似ている。カトリーヌがそうだったように、シモーヌの脚の腱も
切ってみたらどうかという案が出ているのだ。片足だけでもいい。感度がよくなるかもしれん。
どうだろう、君の同意が得られるなら、そうしたいのだが」
「残念だが」
 歩み寄ったギョームは努めて落ち着き払って、男たちの中からシモーヌをこちらへ受け取った。
「わたしはこの玩具はこのままがいい」
 男たちはあっさりと承知し、ギョームにシモーヌを渡して、引き下がった。

 客室に入ると、シモーヌは、今のことがよほど怖かったとみえて、泣き出してしまった。
「シモーヌ。お前を剥製にさせたりはしない」
(さだめし、童話風にいえば、魔王に射すくめられて、声と自由を失くした小鳥といったところか)
 この館の女をうけ出すには、金が幾らいるのだろう。
自家資産を反芻しながら、ギョームはシモーヌの髪を撫でた。
「その代わり、お前を虐める。そうしないと、お前が、クラオン侯に罰っせられるだろうから」
 くたくたと床にへたり込んでしまったシモーヌを、ギョームは見下ろした。
二重三重に罠をかけられ、飛び立てぬ小鳥。
 シモーヌが落ち着いたところをみはからい、いつものように湯浣腸をほどこした。
鏡の前でシモーヌに排出させていると、室の扉が叩かれて、下僕がギョームを呼びに来た。
鏡に手をつき、桶を膝で挟むようにして、その上にかがんで喘いでいるシモーヌの白い尻からは、
その美貌やつややかな肌とは対照的なものが、醜く滴り落ちていた。
「ギョーム様。お暇が出来ましたら、地下室においでいただきたいとのことです」
「わかった」
 ギョームは浣腸器を取り上げた。
「尻を上げろ、シモーヌ」
 器具の先を穴に挿し、ギョームは清めの湯をシモーヌに注入した。

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