ご注意:苦痛・流血をともなう本編の過激描写は、小説としてのフィクションです。
決して人体に試さないで下さい。死亡・大怪我・病気に至ります。


【上下主従10のお題8】配布元:Abandon様

【イリス・W】
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◆第七話:「様」は不要


 薄青い朝の光が、天井まで届く高い窓から差した。
広々とした室には、天蓋つきの豪奢な寝台があり、女主人の趣味のいい香水の香りが
夜明けの底に甘く沈んでいる。
隣りで眠っている女の腕を、そっと外して、カディウスは半身を起した。
「カディウス様……」
 寝返りをうった女は、その均整のとれたまろやかな白い身体を、カディウスに寄せてきた。
「お帰りになってしまうの」
 やわらかな女の胸と腕が、カディウスの背にはりついた。
カディウスの背を抱いた女の手を、カディウスは掴んだ。
そしてその手を、胸から腹へ、そして下方へと降ろさせた。背中で女がかすかに抗い、笑った。
「いけない方」
 乳液で毎日磨きあげている女の手は、三十路となっても、まだ小娘のようにすべすべとしていた。
男の腹にしなやかな両腕を回して、女はカディウスの背に頬をすりつけた。
「ねえ。興味がありますのよ。その女奴隷の話」
「昨夜言ったとおりです」
 カディウスは女の髪を指ですくった。
平生はきっちりと編みこんでいる貴婦人の髪は、彼の前でだけ、夜に解かれ、乱れるのだった。
「屋敷においてある子供たちの面倒をみさせています。他に使い途もない」
「可哀想なことを無理強いさせておられるのでは」
「莫迦らしい」
「聞いていましてよ。アンティトス様が、たいそうご執心だとか」
「あの男はいつもそうです。それにわたしの友人には、奴隷を酷く傷つけるような者はおりません」
「ねえ、心配ですわ。その女奴隷のことが」
 昨夜の続きを行うのは礼儀である。カディウスは女の身を寝台に横たえた。
女は困ったように顔を横に向け、かたちばかり、抗ってみせた。膝と膝がぶつかった。
「アンティトス様の奥方の、あの怖ろしいサビナ様が、黙ってはいないのではないかしら」
「そうですね」
 腕を回して下から女の尻を支えて持ち上げ、開いた女の股に、カディウスは手をすべらせた。
ゆっくりと丁寧にするとみえて、いきなり指を入れてしまう。
「わたくし、その子のことが心配で、ん」
「貴女はいつも奴隷に対して、実母のようにお優しい」
「貴族らしからぬことと咎められましても、庇護してやらなければと思いますの。あ、だめ」
「せっかく貴女に逢いに来て、女奴隷の話もないものだ」

 先先帝の娘は、この歳になっても独身で、カディウスとの関係は五年前から続いている。
貴婦人として申し分なく、賢く、優しい。夜の相手としてもいつも満足を与えてくれる。
ひそかにカディウスはもし妻帯するならこの女か、またはこの女のような貴婦人を妻にと思っていた。
 朝の茶がはこばれて来ると、カディウスはそれを自分で淹れて、女に渡した。
薄物を羽織った女は、寝台の背に身を預けて茶を呑み、小首を傾けた。
「先ほどのお話ですけど、本当に心配ですわ」
「何のことです」
「カディウス様。その女奴隷をわたくしのところでお預かりしましょう。わたくしが女主人である
この家ならば、さすがに殿方もお行儀がよくて、うかつに女奴隷を所望したりはしませんもの。
もちろんカディウス様がご入用の時には、責任をもって、そちらにお届けいたしますわ」
「貴女は本当に優しい方だ。先刻、そのお行儀がよいはずの男が貴女にしたことについては、
まるでお咎めではないのだから」
「そうではありませんのよ」
 女はイリスのことを、どうやら本気で心配しているようであった。
 別れ際に、女は再度、輿の中のカディウスに言った。その顔は真剣な憂慮で曇っていた。
その顔をみるかぎり、女も、サビナにまつわる黒い噂や、以前サビナが、あまり宮廷では派手な浮名を
流さぬカディウスを誘惑しようとしたことを知っているようであった。
 さらには、付き合いのあるご婦人の許にいた、可愛らしいことで評判の女奴隷が
五日前から行方不明となっていることも、女をひどく不安にさせていた。
そしてたいてい、行方知れずとなった女奴隷は、二度と戻ってはこないのだった。
 奴隷であれ罪人であれ、馬や牛であれ、生き物を手荒に扱うことや鞭打つことに対して
常日頃、強い憤りと憐れみを抱いてやまない温情ある女は、身をふるわせた。
「将軍の娘のサビナ様とて、先先帝の娘であるわたくしには手出しが出来ませんわ。
それは大貴族である貴方に対しても同じです。このことを、もう少しよくお考えになって、カディウス様。
つまり、手厚く護られていればいるほど、サビナ様にとってはその女奴隷が、いや増して
許しがたい、気に食わぬ存在に変わる可能性を秘めているということです。
あのような方は、殿方がちょっと誰かを褒めたというだけで、貴女であれ、奴隷であれ、
その者をはげしく憎むのですわ。幾ら貴方の家の奴隷であっても、いえ、貴方の家の奴隷だからこそ
アンティトス様は楽観してその奴隷をお求めになったのでしょうが、アンティトス様は
少し軽率でいらっしゃるわ」
「ご心配なく」
 カディウスは女の手の甲に接吻した。
サビナは、現皇帝の親族を使って、すでにイリスの上に復讐を果たしている。
それはまさに、カディウスが大貴族だからこそ、イリスへの報復をあのような方法に収めて、そこまでに
手控えたものであろう。
「今後、アンティトスには遠慮してもらうことにしたのです。それで解決でしょう」
「カディウス様。いつでも、わたくしのことを思い出して、頼りになさって」
「いつでも思い出しています。ところで先刻の件ですが、その奴隷は近いうちに荘園に
遣ってしまうつもりでいるのです。つまらぬことで貴女の頭を煩わせてしまったことについて
お詫び申し上げます。今後はもうその話をする必要がないように、取り計らいます」
「カディウス様」
「貴女とわたしの関係で?」
カディウスは女の顔を見た。女はたちまち頬を染めて、言い直した。
「カディウス。愛しています」
「近いうちに、また」
 カディウスは奴隷に担がせた輿の四方の垂れ幕を下ろさせた。輿が動き出した。

 都の朝は、すっかり明けていた。
賑わう市場の近くに差し掛かると、路の真ん中で人だかりがしていた。
「何だ」
「カディウス様、不浄でございます」
 それにしては人々の騒ぎ方が不穏である。カディウスは垂れ幕を上げて、外を覗いた。
奴隷に輿を担がせているので、人垣の頭を超えて、路上のそれが見えた。
「奴隷の死体のようです」
 路の中央に、磔のような格好で、女奴隷が死んでいた。
死体は丸裸で、その首輪だけが、女が奴隷であることを示していた。
全身に火傷と鞭の痕があり、顔はといえば、目がくり抜かれ、耳と鼻がそがれ、二目と見れぬ有様である。
まだ若い女だった。女の両手の爪はすべて剥がされており、左右に投げ出された腿の間は血だらけで
裂けているようであった。死ぬまでに、かなり長い時間、入念な拷問にあったのは間違いなかった。
死体には、それを示す、拘束具の擦過痕があった。
 人々はひそひそと囁きあった。
「どこの家の奴隷であったかも、これでは判別つきませんな」
「主をよほど怒らせたのだな」
「それにしても、惨いことだ」
 若い女奴隷の死体見物で、路は混み合っていた。
気分の悪いものを見た。カディウスは憂鬱に、別の道を通るように奴隷に命じた。
人ごみをかきわけて、輿が向きを変えた。垂れ布を下ろそうとしたカディウスは、人垣の向こうに
半月型の笑みを浮かべた女の顔を見たと思った。
(サビナ)
 確かめるより早く、女の輿の方が垂れ布を下げてしまった。
女の顔は、路上に晒されている女奴隷の無残な様を、満足そうに笑いながら見ていた。


 屋敷に戻ると、カディウスは水音のする方へと庭を歩いて行った。
屋根のある水場のところで、イリスが泣いている小さな子供の膝小僧を
洗ってやっているところであった。奴隷たちは主の帰りを見ると、その手を止めた。
「カディウス様。お帰りなさいませ」
「転んだのか」
 夫婦一組で買った奴隷の間に生まれた子であった。
カディウスの奴隷から生まれた子供は、彼らを庇護している間は、やはりカディウスの奴隷である。
まだ小さいので何の用事も出来ないが、たまには庭番と一緒に草むしりをしたりする。
カディウスは子供のうちくらい、幼い彼らをあまり使わずに、遊ばせておくことにしていた。
 子供は泣きながら訴えた。
「カディウス様、ぼくが石段で転んで、イリスがぼくを庇って、一緒に転んだのです。
ぼくよりも、イリスの方が怪我をしてるのです」
「見せなさい」
 水捌けがいいように石を敷き詰めた水場に身をかがめ、カディウスは子供の怪我を見た。
血が出ているものの、擦り傷だった。
子供は泣きながらイリスを指した。子供たちは本当にイリスのことが好きだった。
「イリスのほうが傷ついたのです。イリスのほうが怪我をして、血が出てるのです」
 カディウスは微笑み、子供の頭を撫ぜてやった。
子供を去らせると、立ち上がったカディウスは今度はイリスに、「見せなさい」と言った。
 擦り剥けて血が出ているイリスの膝と肘を、カディウスは水で洗ってやった。
屋敷の女奴隷たちには、茶か灰色の衣を着せていたが、今日のイリスは灰色の衣を身につけていた。
腰紐でしめただけの灰色の装いは、女奴隷の美しさをかえって惹き立て、人間よりも
植物に近いものであるかのように、イリスをひっそりとしたものに見せていた。
 イリスの手首をとり、ひしゃくから汲んだ水を傷口にかけた。
衣の裾を膝まで上げさせて、転んだ時に擦りむいた脚の傷も洗った。
水は、イリスのすんなりした脚を伝い、黒石を踏みしめている素足の、小さな指先に伝い落ちた。
 子供たちの子守はいつの間にかイリスの役目になっていたが、イリスの怪我を先に
訴えていた先刻の子供の様子をみていると、あれでは、どちらが子守か分らない。
 カディウスはイリスが小さな子供でもあるかのように、イリスの傷口を洗ってやった。
「子供は転んでも意外と大きな怪我をしないものだ。大人になってから怪我をすると、肌に傷跡が残る。
今後は気をつけるように」
 最初に泥を落とした後で、もう一度、彼はイリスの傷を洗った。
外から帰ってきた男の熱い肌と、日向にいた女の肌が、冷たい同じ水にひやされた。
 沁みるのか、イリスは少し眉を寄せ、きゅっと唇を閉じていた。
屋根の下では青白く見えるほどに、イリスの腕や脚は白く、すべらかだった。
それが腕の中、この身体の下であえかにもがいて、すがりついてきたものであることを
彼は思い出さないわけにはいかなかった。
(カディウス様-----……)
(カディウス)
(カディウス。愛しています)
「ありがとうございました」
 まだ血が出ている膝の傷口をあり合せの布でしばってやり、沓をはかせて紐を結んでやった。
イリスは身をひいた。
カディウスは去ろうとするその手首を捉えた。
イリスは目を伏せ、足許の、黒石の上にたゆたっている水を見つめていた。
「イリス。もう怪我などするな」
 屋根の隙間から日蔭に差し込む日の光が、そんなイリスの横顔を淡く包んでいた。
その顔も姿も、誰にも何にも、穢されたことのない者であるかのようだった。
カディウスは、自分でも何を言おうとしたのか分らなくなった。やましい気持ちすらした。
彼は憮然として、イリスの手首を放した。
「膝の打ち傷は後から腫れる。詳しい者にきいて、湿布しておくように」
 イリスの姿がカディウスの屋敷から消えたのは、その午後のことであった。


 日が差さぬ地下室には、篝火が焚かれ、何もかもが、赤黒かった。
まだ洗い流されていない床や壁の黒い染みは、血の痕のようだった。
壁にも台の上にも、ぎっしりと何かの怖ろしい道具が並べられており、それは医療器具にも見えた。
 険のきつい顔をした、その貴婦人が誰か、イリスは知らなかった。
カディウスの屋敷の門のところで、いつものように、花木から石畳に零れ落ちた花びらを
拾って掃除をしていると、
「ちょっと。そこのお前」
 門の外から貴婦人が呼んだ。
 被りものを頭からかぶった女は片手で口許を隠し、下を向いていた。
気分が悪いのだろうか。イリスはいそいで門を出て、女の許に行った。
その手首が女の手に掴まれた。爪が食い込むほどの力だった。
「お前が、イリスだね」
 睨みつけている女の目は、その底に、獲物を捕らえた捕食者のような歓喜を浮かべていた。
後ろから下僕がしのびより、イリスの口を塞ぐと、袋に入れて、肩に担ぎ上げた。
イリスの手から花びらが地面に落ちた。

 地下室には方々に火が焚かれ、熱いほどであった。
天井の滑車から下げられた鎖や枷、木や鉄製のあらゆる責め具が、火に照らされていた。
隅には、水責め用の濁った水を湛えた水槽があり、そこにも焔の影がどす黒く落ちていた。
 イリスに、彼らは口枷をはめた。
イリスはその陰惨な地下室の様相と、女の目つきに竦み上がっており、三人の巨人のような下僕に
囲まれたまま、為されるがままになっており、その膝はふるえて、一人では立てないほどであった。
何よりも、怨みを塗り重ねたような、貴婦人の冷酷な眼が怖かった。
「妾の夫アンティトス様や、大勢の男たちに、尻をふって取り入った奴隷め」
 サビナはイリスの衣を両手で引きちぎり、その胸をはだけさせた。
小ぶりの乳房と、花の色の先をもつ、きれいな白い胸があらわれた。
それを見るサビナの目は、嫉妬と憎悪のあまりぎらぎらと燃え立ち、そのくせ口許は奴隷をいたぶる
喜びを浮かべて、醜く笑い、引き歪んでいた。
「お前には日数をかけて、特に念入りな仕置きをしてやろうねえ」
 サビナは、台の上から金属のピンをとると、ばねがついて先が分かれているそれでイリスの乳首を挟んだ。
いきなり過敏なところを潰されたイリスはのけぞった。強いばねの力は暴れても、もがいても、落ちなかった。
もう一方の乳房にも同じことがされた。痛みのあまり倒れ掛かったイリスを、下僕が羽交い絞めにした。
 サビナはイリスの急所を噛んだ両乳首のピンの両端を持ち、それを胡桃割り器のように回して絞った。
イリスは悲鳴を上げて身を折った。
「めす犬め」
 サビナは扇を持っていた。それでイリスの乳首に噛み付いているピンを上からも下からも叩いた。
 きれいな色をした陰部も調べられた。
下僕の手が喘いでいるイリスの長裾をたぐり、膝を持ち上げ、抱え上げてサビナの眼の前に開脚させた。
サビナは、イリスの女の部分を扇の角でなぶり、下僕には、イリスの乳首のピンを捻らせた。
痛覚を責められて、イリスは脳天からつま先まで痛みに引き裂かれた。
宙に抱え上げられたまま、イリスは叫び泣き、脚をばたつかせ、もがき、引き攣った悲鳴を上げた。
「台の上に奴隷をおのせ」
 下僕たちがイリスの衣をはぎとった。力のない、よわよわしい抵抗は何の意味もなさなかった。
地下室に、奴隷を枷や縄で拘束する音が響いた。

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◆第八話:笑顔が好きで、貴方が好きで


 切れ切れの悲鳴が、地下室にこもっていた。
女奴隷に与えられた口枷は、奴隷が舌を噛むことをかろうじて止めていた。
異様な音は、イリスの体内の狭いところに、責め具を無理やりに押し込んでいるその音であった。
もう何回も、同じことが繰り返されていた。
さまざまな形の張型がイリスの脚の間に埋め込まれ、引き出され、また奥に押し込まれるたびに
イリスは細首をのけぞらせ、延々と続く性器責めに苦しめられ、鎖を鳴らして身悶えた。
 その唇が、ひときわ高い悲鳴を放った。
イリスの狭い膣口は窮屈な抵抗を示し、下僕たちは道具を変える度に、それにてこずった。
「何をしているのだい、奥まで挿れておしまい。深く、底をえぐるのだ。そして、じっくりと突いておやり」
 膣に責め具が押し込まれ、抜き差しが始まると、イリスの膣は裂けるような痛みに覆われた。
泣いて首をふり、引き裂かれるような悲鳴を絞っても、赦されることはなかった。
潤滑油は与えられなかった。
「もっと苦しませてやるのだよ。もっと責め抜いてやるのだ。もっともっともっともっともっと」
 奴隷は、拘束された身体でもがき、繊細な壊れもののような声を張り上げ、咽び泣いた。
肛門にも責め具が埋め込まれていた。そちらも刺戟を新たにするために、べつの物に
入れ替えられた。肛門の入り口は傷つき、血が滲んでいた。
 サビナの指はピンで挟んだイリスの乳首を、ピンごと掴んできりきりと捻った。
奴隷は首をのけぞらせ、枷で股を拡げられた身体を、手足を縛る鎖ごとがくがくとふるわせた。

 時々、休憩が入れられた。
あまり同じことを続けると、痛みのあまりに無感覚になることを、サビナは熟知していた。
サビナが求めるものは生殺しの辱めであり、それには遣り過ぎないように加減することが肝要だった。
彼らは奴隷の膣と肛門から責め具を引き抜き、口枷を外したイリスの口に
漏斗を立てて、その嗄れ果てた喉に水を呑ませ、乳首のピンを取り外した。
 イリスの膝と肘には、カディウスの屋敷の庭で転んだ時の、擦り傷があった。
膝の傷は赤く充血して、周囲を青く変え、イリスの白い肌をより無残に見せていた。
 下僕たちは、縄を使ってイリスの胸をもっと絞るようなかたちに縛りなおしたり、体位を変えさせた。
女奴隷の脇や股間に手を差し入れるたびに、下僕たちは太く荒れたその指や爪でイリスの
白い胸をもみしだいたり、陰部を性急にえぐった。
 サビナが食事や用事で地下室を離れると、下僕たちは奴隷責めの間、ずっと股間を
いきり立たせていたものを、はげしくイリスの中に突き込んだ。
サビナが戻ってくると、むちゃくちゃにされた余韻の中でイリスは四肢を痙攣させており、むしろ
それが見たいが為にサビナは下僕どもを極限まで焦らし、女の悲鳴を聴かせながら、
いつも、おあずけにさせておくのだった。


 休憩が入ることは、サビナの狙いどおり、イリスにいっそうの苦しみを与えることになった。
十分に痛めつけられ、過敏にさせられた乳首や陰部にふたたびほどこしが再開される時、
それは間に弛緩をはさんだその分だけ、倍の痛みとなってイリスに襲い掛かった。
 サビナは苦痛を快楽に錯覚させる類の淫剤の類を一切、イリスに与えなかった。
残酷と、無慈悲をもって、サビナは美しいイリスを念入りに苛み続けた。
どれほどの時が経ったのかも、もう分らなかった。半日か、三日か、永劫か。
「お前のきれいな顔や、この白い肌はなるべく最後まで傷つけないでいてやろう。
その方が、男どもや下僕たちがお前を悦んで虐めるだろうし、悶え苦しむお前の姿をながく愉しめるから」
 ピンできつく挟まれたイリスの乳頭の上に、ぴしりと扇が落ちた。
それは引き千切れるほどの鋭い痛みをイリスの乳房に与え、イリスは眉を寄せて喉をそらせた。
「そんな顔をして、そんな声を上げて、お前は男たちの気を引いてきたのだろう。淫乱な奴隷め」
 ぴしり、とまた扇が胸の上に落ちた。
股の間では、下僕の手に握られた張型が、すり鉢を摺るような動きで、イリスの膣内をえぐっていた。
かき回され、えぐられ、突かれるたびに、イリスは身をびくつかせ、ひどい声で呻いた。
恐怖に縛られているイリスの膣壁には、何の潤みもなかった。
挿入された固形物はイリスの狭い内部を責めたて、膣口を摩擦し、痛めつけていた。
「身の程知らずの奴隷には、お仕置きが必要だね。-----深く突いておやり」
 イリスの悲鳴が絞られた。
「妾の夫からも、こうされていたのだろう。こうして可愛がられていたのだろう。もっと突いておやり」
 埋め込まれるたびに、奴隷は白い肌をふるわせ、胸先をそらし、鎖を鳴らして全身をわななかせた。
がっくりと首を倒したイリスのきれいな顔は涙に濡れて、苦しみを浮かべ、息を切らし、刺戟を受けるたびに
目を閉ざし、眉を寄せて、切なくなるような切れ切れの喘ぎを放っていた。
脚を拡げられている女の、そのはかなげな苦悶の様子は、サビナの妄想と嫉妬と可虐性をさらに煽った。
「懲らしめてやる」
 サビナはそこに並べられたあらゆる道具をその細い目で見回した。
表面に螺旋状の溝が刻まれた紡錘形の棒をサビナは掴み取った。
「これがいい。今度はこれを、ねじのように肛門に埋め込んでおやり」
 下僕たちは女奴隷の身体をひっくり返し、家畜のように尻を上げさせた。
それまで入れていた異物が引き抜かれ、新たな責め具の先が、肛門にあてられた。
奴隷の尻にそれが挿入される間も、サビナは顔色一つ変えず、奴隷の細い腰を押えつけて
棒を無理やりねじ込んでいる下僕たちの腕の太さから目を離さなかった。
 漏斗で水が与えられた。女奴隷の唇から水が滴り落ちた。
膣と尻に含まされた張型を下僕たちの手で交互に抜き差しされたイリスは、失神していた。


 ぱちぱちと何かが不気味な音で爆ぜていた。
瞼の裏が赤くなり、熱くなり、それは、暖炉だと知れた。
イリスの身体を縛っていた鎖は、床に落ちていた。その代わり、イリスの首には、革の硬い
首輪が嵌められていた。荒い織りの白い衣を着せられていたが、寒かった。
 聞き覚えのある声がしていた。
イリスにはもう逃げる力も、懇願する力もなかった。
それでも、怯えた目で、そこにいる、見覚えのある二人の男を見比べた。
カディウスの屋敷の物置部屋でイリスを捕らえ、後に別邸でイリスを愉しんだ、皇族に連なる男たちだった。
彼らは、手に鞭を持っていた。
皇帝の甥たちは、目覚めたイリスを抱え起し、立たせると、その手首に鉄枷を嵌め、首輪と鎖で繋ぎ、
留め具から分かれた二つの鎖を、それぞれの手の中で束ねた。
「イリス。いいことを教えてやろう」
 男たちはふらついたイリスを柱に凭せかけるようにして、衣の上からイリスの尻や、胸を撫でた。
長衣をめくりあげ、脚の隙間に鞭の先を差し入れ、イリスの陰部を鞭の先端で舐めるようにさまぐった。
痛めつけられた胸先と荒い布地が擦れた。女奴隷は苦しく眉を寄せて喘いだ。
男たちは嗤い、ますます鞭の先でイリスをいたぶった。
「サビナが、俺たちをここに招いたのだ。お前を使っていいそうだ」
 手首にくい込んだ鎖が重い音で鳴った。
男たちはイリスを前かがみにさせ、脚を開かせると、イリスの状態を検分した。
それはちょうど、奴隷市場で調教を受けた性奴隷が、競りにかけられる時のようだった。
固い鞭の先が下からイリスの陰部や肛門の周囲をなぞり、つついた。
「傷んでいるが、淫薬を呑ませれば、使えないことはなさそうだな」
「お赦し下さい……カディウス様の許に、帰して下さい……」
 嗄れ果てた喉からは、それしか出なかった。
男たちの手が、かぼそい哀願を繰り返すイリスのその顎を掴んだ。
イリスの眸から、涙が零れた。
屋根のある涼しい水場でカディウスの微笑みを見たと思ったのが、遠いことのようだった。
「……カディウス様の許に、帰して下さい……お赦し下さい」
 男たちは顔を見合わせて笑った。
そして彼らはイリスの胸をもみ、尻に指をくい込ませた。
「イリス。お前は、カディウスに売られたのだ。お前は、もう、カディウスの奴隷ではないのだ」
「性奴隷なのだ。お前の首輪に、ちゃんとそう刻んである」
「お前はもう二度と、カディウスの許に戻ることはないのだ。公衆用の性奴隷として、調教を受けるのだ」
 それは、最下級の性奴隷となることを意味していた。
乞食よりも、もっとひどい、鎖で繋がれた路上の性具なのだった。
 イリスの鎖が、絶望にふるえた音を立てた。怯えたその顔も、はかなげに清く、美しかった。
男たちは笑って、そんなイリスの首輪を引っ張った。
「往来に繋いでおけば、通りすがりの男たちが自由にお前を使用するのだ」
「穴という穴から白いものを垂らして、めす犬のように道端で犯されているお前の姿を、サビナは
毎夕の散歩のたびに往来から見物したいそうだ」
「その前に、やることがあるぞ、イリス」
  彼らはイリスの鎖を引っ張り、歩廊を歩かせた。
「カディウスは皇帝の寵臣だ。数年前、皇帝の勅命を受けたカディウスは
幾つかの根の深い不正を暴き、賄賂や売春や密輸入で儲けていた一部の貴族たちを
裁判にかけ、糾弾した。財源を大幅に失った彼らは今でも、カディウスに深い怨みを遺している」
「しかし彼らとて、皇帝の寵臣であるカディウスに復讐することは得策ではないことを知っている。
気が利くサビナは、カディウスに怨みを抱くそんな彼らを此処に呼び寄せたのだ。
カディウスを助けたくはないか、イリス?」
「カディウスの愛玩物であったお前が彼らによく奉仕すれば、彼らのカディウスへの怨みも
少しは晴れて、癒されるかもしれんぞ」

 扉が開かれた。
室内にいた数人の男たちは酒盃を手に歓談していたが、ぴたりと口を閉ざした。
彼らはみな一様に精力的で、脂ぎっており、下卑びた顔つきをしていた。
引き出されてきたイリスの姿を見て、醜男の一人が思わず感嘆を洩らした。
 首枷をつけられたイリスは怯えて、脚をふるわせ、下を向いていた。
鎖を引いていた二人の男は、心得て、荒い衣に包まれたイリスの乳首を両側からきつく抓った。
ほそい声を上げて、イリスは顔をゆがめ、喉をそらし、男たちの輪の中に倒れこんだ。
二人の男はイリスを床から抱え上げ、イリスの膝裏をすくい上げると衣の裾をたくし上げ、
その薄く淡い恥毛と溝が男たちに見えるようにした。
責め処を隠したイリスの溝は、未成熟な少女のように、色が薄く浅かった。
その片方の膝には、カディウスに洗ってもらった傷口が、血を固めたままになっていた。
「お願いです……」
 陰部を撫で上げられ、くつろげられながら、イリスは泣いた。
「何でもいたします……だから、もうカディウス様を怨みに思わないで下さい」
 男たちはその手をいっせいに伸ばして、イリスから衣を剥ぎ取った。

 

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